あなたは差押・競売から何を想像しますか?えらいこっちゃ!?

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「差押」

 

「競売」

 

 

あなたは、この二つの言葉から何を想像しますか?

 

住宅ローンを払ってへんのか?

税金を滞納したんか?

 

借金取りが家まで来るんか?

明日にでも追い出されるんか?

 

どれを想像しても、最後に出てくる言葉は同じです。

 

「えらいこっちゃ!?」

 

不動産業界に長くいる私でも、建物の謄本に

「差押」と書かれていると、一瞬背筋が伸びます。

 

けれど、驚いているだけでは何も分かりません。

 

差押と一口にいっても、

原因は住宅ローンだけではないからです。

 

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「差押」と書いてある!誰が差し押さえたんや?

 

不動産の謄本に記載される「差押」には、

いろいろな原因があります。

 

たとえば、固定資産税の滞納です。

 

固定資産税は毎年かかる税金ですから、何年も放置していると

滞納額だけでなく延滞金も増えていきます。

 

督促を受けても支払わなければ、市町村から

不動産などを差し押さえられる可能性があります。

 

不動産を購入したときに一度かかる不動産取得税を

滞納した場合は、都道府県による差押が考えられます。

 

そして住宅ローンの返済を滞納すれば、

金融機関や保証会社などが関係してきます。

 

謄本に書かれる文字は、どれも同じ「差押」。

 

しかし、その原因は同じではありません。

 

だから謄本を見て、

「差押や!この人、住宅ローンを払ってへんのや!」

と決めつけるのは早いのです。

 

まず確認しなければならないのは、誰が差し押さえているのか、

何を滞納したのか、現在の支払総額はいくらなのか、

そして不動産を売却した代金で解決できるのかということです。

 

差押が入っていても、必要な金額を支払い、

差押を解除してもらったうえで

不動産を売却できる場合があります。

 

ただし、放っておいて自然に消えることはありません。

 

見なかったことにして謄本を閉じても、

差押の文字は消えてくれへんのです。

 

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査定先で見せられた「競売開始決定」

 

以前、ある住宅の査定に伺ったときのことです。

 

玄関を開けたお客さまは、家の値段を尋ねるより先に、

一通の書類を私に見せました。

 

そこに書かれていたのは――

「競売開始決定」

 

お客さまは、その書類を手に持ちながら、

「どうしよ……どうしよ……」

と、すっかり動揺されていました。

 

そらそうです。

 

競売開始決定の書類が届いて、

「競売ですね。まあ、お茶でも飲みましょか」

 

と落ち着いていられる人は、まずおりません。

 

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事情を聞いてみると、

その家は別居中の旦那さん名義でした。

 

奥さんはその家に住んでいましたが、

住宅ローンを借りていたのも、

返済することになっていたのも旦那さんです。

 

ところが、旦那さんは住宅ローンを

約1年間払っていなかったようなのです。

 

奥さんからすれば、

「えっ、1年間も払ってへんかったん?」

ですわ。

 

自分はその家で普通に生活している。

 

電気が止まったわけでもない。

水道が止まったわけでもない。

 

家の外観が急に競売物件へ変身するわけでもありません。

 

しかし、見えないところでは住宅ローンの滞納が続き、

金融機関側の手続きは進んでいたのです。

 

別居中ですから、

夫婦間の連絡も十分ではなかったのでしょう。

 

旦那さんのところには、それまでにも返済を求める連絡や

書類が届いていたのかもしれません。

 

しかし、奥さんがどこまで知っていたのかは分かりません。

 

そして突然、

自分が暮らしている家に「競売開始決定」が届いた。

 

そらもう、

「どうしよ……どうしよ……」

しか言葉が出てきません。

 

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差押と競売は同じではありません

 

差押と競売は似たような怖い言葉ですが、

まったく同じものではありません。

 

簡単にいうと、差押は、その不動産を勝手に

処分できないようにして債権回収へ備える手続きです。

 

競売は、裁判所の手続きによって不動産を売却し、

その代金から債権を回収するところまで進んでいくものです。

 

裁判所が競売開始決定をすると、法務局へ差押登記をするよう

依頼し、債務者や所有者へ開始決定正本を送ります。

 

その後、執行官や評価人による調査、

売却基準価額の決定などを経て、入札へ進んでいきます。

 

「競売開始決定が届いたら、その日のうちに追い出される」

というわけではありません。

 

しかし、

「まだ住めているから大丈夫やろ」

と放置してよい段階でもありません。

 

時計の針は、すでに動き始めています。

 

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競売ではなく任意売却へ

 

その後、別居中の旦那さんは、弊社ではなく

別の不動産会社へ売却を依頼されました。

 

その不動産会社が金融機関と話をして、

競売ではなく任意売却を進めることになったそうです。

 

任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなった場合に、

金融機関などの債権者と話し合い、同意を得たうえで

一般の不動産市場で売却する方法です。

 

競売開始決定が出たあとでも、進行状況や債権者との

調整によっては任意売却へ進められる場合があります。

 

とはいえ、競売が任意売却に変われば、

何もかも元どおりになるわけではありません。

 

家を売却することに変わりはなく、そこに住んでいた奥さんは、

どちらにしても退去しなければなりません。

 

住宅ローンを滞納したのは奥さんではありません。

 

家の名義は旦那さん。

住宅ローンの債務者も旦那さん。

返済しなかったのも旦那さん。

 

それでも、実際に住む場所を失うのは奥さんです。

 

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そして、別居していたご夫婦は、

その後、正式に離婚されたそうです。

 

住宅ローンの滞納が離婚の直接の原因だったのか、

すでに夫婦関係が壊れていたから返済状況が

共有されなかったのか、そこまでは私には分かりません。

 

ただ、一つの家をめぐって、住宅ローンの滞納、競売開始決定、

任意売却、奥さんの退去、そして離婚へと話が進んでしまいました。

 

「競売開始決定」という一枚の書類の向こうには、

お金だけではなく、そこで暮らす人の生活と人生があるのです。

 

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実は、この家にはもう一つの話がありました

 

ここまででも十分つらい話なのですが、

最後にもう一つあります。

 

実は奥さんは、離婚する際、

この家を慰謝料として旦那さんからもらう予定だったそう。

 

「この家は、いずれ私のものになる」

 

そう思って、別居後も住み続けていたのでしょう。

 

ところが、その家には住宅ローンが残っていました。

 

しかも旦那さんは約1年間返済しておらず、

すでに競売開始決定まで出ていたのです。

 

奥さんからすれば、

 

「ちょっと待って!

慰謝料でもらう予定の家やったんちゃうの!?」です。

 

もらう予定だった家が、先に任意売却される。

 

住み続ける予定だったのに、退去しなければならない。

 

慰謝料どころか、引っ越し先を探さなければならない。

残念……としか言いようがありません。

 

夫婦の間で「この家を妻に渡す」と話していても、

住宅ローンを貸している金融機関が、

その約束に付き合ってくれるわけではありません。

 

住宅ローンが残り、抵当権が設定されている家は、

旦那さんが「慰謝料としてあげるわ」と言うだけで

簡単に奥さんのものになるわけでもないのです。

 

家を慰謝料や財産分与として受け取る予定なら、

名義だけでなく、住宅ローン残高、返済状況、抵当権、

名義変更の可否まで確認しておく必要があります。

 

家をもらえると思っていたら、その家が先に売られてしもうた――。

 

まさに「えらいこっちゃ!?」です。

 

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差押・競売に関するQ&A

 

Q.謄本に差押があれば、もう売却できませんか?

 

必ずしも売却できないわけではありません。

 

売却代金などから滞納金や債務を支払い、

差押を解除できる見込みがあれば、売却できる場合があります。

 

まず債権者と金額を確認することが必要です。

 

Q.競売開始決定が届いたら、すぐ退去しなければなりませんか?

 

届いたその日に退去するわけではありません。

 

ただし、すでに裁判所の手続きは始まっています。

放置せず、金融機関や不動産会社などへ早急に相談する必要があります。

 

Q.住宅ローンが残る家を慰謝料として受け取れますか?

 

夫婦間の合意だけで完了する話ではありません。

 

金融機関との契約、住宅ローン残高、抵当権、

所有権移転などの問題があります。

 

離婚条件を決める前に、弁護士などの専門家や

金融機関へ確認することが大切です。

 

差押や競売は、

恥ずかしいからと隠していても解決しません。

 

「どうしよ……どうしよ……」と悩んでいる間にも、

手続きは進みます。

 

えらいこっちゃ!と叫ぶのは仕方ありません。

 

けれど、叫んだあとは一日でも早く動きましょう。

 

不動産の問題は、早く相談するほど、

残されている選択肢も多いのです。

 

筆者松本 親幸
  • 不動産キャリア29年
  • 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
個人的には今までの不動産業経歴において1,500件超のお取引に関わっております。
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