傾いた家の用途
ある家の売却依頼から始まりました。
もう5年ほど前の話です。
大阪市内、大阪メトロ千日前線の某駅から歩いて3分ほどの場所。
1軒の家の売却の依頼がありました。
その家は元々長屋でしたが既に隣家が切り離しており、現在は一戸建でした。
建物の築年数は古く軽く築後50年は経過していました。
また家の2階は雨漏りしており、査定に行った時にはバケツが置いてありました。
査定後、売主様と打ち合わせをし、仲介売却のご依頼をいただきました。
少し相場より高いですがそんなに時間はかからず売れるだろうと思っていました。
現場にのぼりを上げて販売がスタートしました。
読書のご主人
売却の原則としてまずは近隣をあたる・・。
片方は切り離してアパートになっているのでその逆の方に訪問しました。
以前は1階で商売をされていたような作りでいつもご主人さんはそのスペースにいます。
そして午前中はいつも読書をされていました。
『おはようございます!』
お伺いして隣が売りに出ている事を話しました。
ところが・・『私一人で住んでいるのでここだけで充分。これ以上広くなったら困る』と。
さすがに必要性がないかな・・と思い、ネット広告に掲載しました。
広告掲載後、複数のお客様を現地案内しましたが2階の雨漏りで全て断念されました。
案内している最中、お隣さんが出てきて『まだ売れんのか?』と毎回言われました。
親近感を覚え、ちょくちょく伺うようになりました。
興味はある?
よく聞くと息子さんが東京にいるとのことでした。
私は『隣を買って敷地が増えればいい建て替え用地にもなりますよ』
『また、いい財産を息子さんに残せるのではないですか?』といった話もしました。
ある時、『あの向いの傾いている家はワシのもんや。ナンボで売れる?』と聞かれました。
大体、これ位でしょうかと価格的な話をした時に『隣を買うならあと〇〇〇万円いるんか』と。
隣に興味はあったみたいなので『隣の売主さんに価格も相談しましょうか?』と伝えました。
そうして購入シュミレーションを提示し、向いと隣の価格次第で購入という所まできました。
最初にお伺いして1か月後の話です。
同時に契約
隣の売主さんに相談してまず希望価格まで下げる了承を得ました。
後は向いの傾いた家が売れれば・・。
その時、懇意にしていた不動産会社の社長が頭に浮かびました。
転売用の不動産を探していたな・・と。
社長に連絡して向いの家を見てもらいました。
確認翌日に電話があり、『昨日見た家、買うわ!』
・・という事で2軒同時に契約する事になり、それを伝えるとご主人さんも最後は笑顔でした。
向いの家は売れないだろうと思っていたそうです。
売れた上に多くの自己資金を出さずに隣が買えたのでいいお取引だったと思います。
その後・・
向いを買ってくれた社長に聞きました。
『あの傾いた家はどうするんですか?』
【うちの事務所にすんねん】
『えーーっ!』
リフォーム工事を施して今では確かに事務所になっています。
見るからにまだ少し傾いていますが・・。