■ 解体できない立地の長屋の将来を考える (狭小路地・接道なし・連棟構造が残り続ける街の未来)
大阪市内には、「構造的・法的・物理的に解体が
困難な長屋」 が多数存在します。
特に以下のような立地の長屋は、
“解体したくてもできない”“建て替えもできない”と
いう状態になりがちです。

● 解体が難しい長屋の典型パターン
- 路地奥で重機が入らない
- 連棟で隣と構造を共有している(壁を壊せない)
- 建物同士が密着していて解体スペースがない
- 前面道路が建築基準法上の道路でない(再建築不可)
- 工事用車両が侵入できない狭小通路
- 隣家が解体に協力しない(共有部分の同意が必要)
- 私道の所有者不明による工事制限
結果として“老朽化が進んでも解体できず、建替えも
できない長屋だけが残る”という状態が各地域で生まれています。
このような長屋の将来には、いくつかの
現実的なシナリオがあります。

■1|【現実①】建替え困難 → 賃貸再生・簡易リフォームで延命する
解体できない長屋は、「建物を残すしか選択肢がない」 ため、そのまま小規模リフォームをして“延命利用”されるケースが増えています。
・表面のみを整える簡易リフォーム
- クロス補修
- 床の貼り替え
- 主要部分の補強
- 水回り交換
大規模工事は無理でも
“最低限住める状態”にする修繕は可能。
・低コスト賃貸として再活用
長屋の賃料は安いため、
・単身高齢者
・生活保護受給者
・外国籍の方
など居住ニーズは残っている。
“建て替え不能”が逆に需要に合う場合すらある。

■2|【現実②】土地としての価値は下がり続ける
長屋の立地条件が改善されることは基本的にありません。
- 接道は広がらない
- 道が突然“道路扱い”になることもない
- 路地奥が急激に再整備されることもほぼない
そのため、土地としての資産価値は
長期的に下がる のが現実です。
ただし「土地価値ゼロ」という意味ではありません。
“活用できる人が使う”限られた市場が成立しているため、
買取や再生事業が存在しています。

■3|【現実③】『相続時の負担』が次世代で重くのしかかる
今は住めている家でも、将来的には…
- 相続登記義務化への対応
- 老朽化による倒壊危険
- 放置による近隣トラブル
- 固定資産税(空き家特例の除外)
これらの負担が次の相続人に移ります。
特に解体できない長屋は、
将来的に“負動産化”しやすい代表例。
相続時に「結局処分できない」という
ケースが全国的に増えています。

■4|【現実④】『近隣との協力』がないと本当に何もできない
長屋の最大の特徴は “隣と構造を共有している” こと。
そのため、将来は次の問題が顕在化しやすい。
・隣が解体したい → 自宅も影響
・自分が解体したい → 隣の承諾が必要
・境界が曖昧 → 測量・工事ができない
・共有壁の修繕費の負担問題
一軒だけで意思決定ができないため、長屋は
“隣との運命共同体”という側面が強い。

■5|【現実⑤】都市計画的には“縮小再編の対象”になりやすい
大阪市では老朽長屋地区に対して、
次のような施策が行われています。
- 密集市街地整備事業
- 道路拡幅
- 不燃化特区
- 建替支援
- 共同立替
ただし、これらは「地域単位」で進むものなので、
個別の長屋1軒だけが再整備されることはほぼない。
つまり、将来の整備計画が“すぐに”
自分の家に影響することは少ない。

■6|【現実⑥】市場としては“長屋再生需要”が今後も残る
不思議に聞こえるかもしれませんが、大阪の古い長屋は、
以下の用途で再生される例が増えています。
- リノベ賃貸
- アトリエ
- 小規模オフィス
- カフェ
- 多国籍コミュニティハウス
- 賃貸分割利用
- 民泊(法規調査必須)
解体不能でも、建物が残っている限り、「安く仕入れて
手を加えて活用したい」という需要 は続きます。
つまり、建替え不能だからといって
「価値ゼロ」ではない。

■7|【現実⑦】長屋の将来は「誰が最後まで世話するのか」で決まる
最も重要なのはここ。
長屋の未来は、制度でも都市計画でもなく“最後まで
管理する人がいるかどうか” によって決まる。
管理できなくなった瞬間に、長屋は急速に劣化し、倒壊リスクが高まり、近隣とのトラブルが発生し、
最終的に 相続した子どもが負担を背負う 流れになる。
だからこそ、解体できない長屋の持ち主は、
将来に備えて
- 売却
- 買取
- 再生
- 管理委託
- 賃貸化
- 共有者との調整
- 相続計画
など“どのタイミングでどう手放すのか”を
早めに考えておく必要があります。

■8|まとめ:
**解体できない長屋の将来は「持ち続けるほど難易度が上がる」
ただし“今なら”選択肢はまだある。**
長屋は
- 解体できない
- 建替えできない
- 老朽化が進む
- 相続問題になりやすい
というハードルを抱えています。
しかし今はまだ、
✔ 賃貸再生
✔ 古家のまま買取
✔ 軽修繕で延命
✔ 小規模リノベ
✔ 解体せず売却
といった選択肢があります。
ところが、10年・20年後には残せる
選択肢は確実に減る のが現実です。
だからこそ“今の段階でどう扱うか”が
長屋の未来を決める最重要ポイントになります。

