「仲介手数料と仕事量って、全然比例してへんやん!」って思っている家の売主さん多いかも?
世間では、ときどき偉い人が、
「いただく報酬以上の仕事をしなさい」
みたいなことを言います。
なるほど。
確かにその通りやと思います。
でも長いこと不動産の仲介をやっていると、
ときどき思うんです。
「ほんなら不動産の仲介手数料はどうなんやろ?」
めちゃくちゃ手間がかかったのに
「この手数料では安いなあ」と思う仕事もあります。
反対に、
「えっ、これでこんなにもらってええの?」
と思うくらい、あっさり売れることもあります。
同じ仲介手数料でも、仕事量はまったく違う。
これ、売主さんからしたら、
「仲介手数料と仕事量って、全然比例してへんやん!」
と思うこともあるんちゃうでしょうか。
たぶん、そう思っている売主さんは結構いるはずです。
でも不動産会社を目の前にして、
「あんた、今回ほとんど何もしてへんのに、
この仲介手数料取るん?」とは、
なかなか言いにくいでしょう(笑)。
今回は、いろんな売主さんが心の中では
思っているけれど、なかなか口には出さない
**「仲介手数料と仕事量」の話**を書いてみます。
2,000万円の家を売ったら仲介手数料はいくら?

まず簡単に仲介手数料の話をしておきます。
たとえば2,000万円の家を売却した場合。
一般的な計算方法では、売主さんから
不動産会社が受け取ることのできる仲介手数料の上限は、
72万6,000円(税込)です。
ここ、けっこう大事です。
72万6,000円と決められている
わけではありません。あくまで上限額です。
ですから、不動産会社と売主さんとの合意があれば、
50万円でも構いません。30万円でも構いません。
もちろん不動産会社側が
その金額で引き受けることが前提ですが、
「2,000万円の家を売ったら72万6,000円を
必ず払わなければならない」というものではありません。
国土交通省も、宅建業者が受け取れる報酬について
「上限額」を定める制度としています。
不動産好きおばちゃん一言。
「えっ!72万6,000円って決まってるんちゃうの?」
ちゃいます。上限です(笑)。
では、その仲介手数料は何に対する報酬なんでしょう?

ここでちょっと考えてみましょう。
仲介手数料って、
いったい何に対して支払うお金なんでしょう?
物件を案内した回数でしょうか?
広告を出した回数でしょうか?
不動産会社が現地へ行った回数でしょうか?
それとも売れるまでにかかった時間でしょうか?
そういう仕事量に応じて
仲介手数料が決まるわけではありません。
だから、1週間で売れても半年かかっても、
同じ価格で同じ報酬額を約束していれば
仲介手数料は同じ。
ここが今回、「なんか不思議やなあ」
と思うところなんです。
売りに出そうと思ったら隣の奥さんが「私、欲しいわ~!」

たとえば2,000万円くらいで
売れそうな中古住宅があったとします。
売主さんから、「この家、売ってください」
と依頼を受けました。
媒介契約も結びました。
さあ、これから写真を撮って、
広告を作って、買主さんを探しましょう。
……と思っていたら。
隣の奥さんがやって来ます。
「この家、売るん?」
「そうやねん」
「なんぼなん?」
「2,000万円くらいかな」
すると隣の奥さん、
「あら、それやったら私、欲しいわ~!」
早い!!
もう見つかったん?
まだ広告も出してへんで(笑)。
物件を調査して、権利関係を確認して、
重要事項説明書や売買契約書を作る。
売主さんと買主さんの条件を調整して、
契約を行い、決済・引渡しまで進める。
仲介会社として責任も負います。
ですから、「あんた何もしてへんやん!」
と言われたら、それは違います。
ちゃんと仕事はしています。
売主さんから見たらどうでしょう。
広告してへん。
何組も案内してへん。
半年間販売活動したわけでもない。
買主さんを探してきたわけでもない。
隣の奥さんが自分から歩いてきた。
そして仲介手数料の上限、
72万6,000円(税込)。
不動産好きおばちゃん一言。
「ちょっと待ち!買主、自分で来たんやろ?」
……まあ、そうです(笑)。
今度は半年間、売れない家です

では、まったく同じ2,000万円の家が
簡単に売れなかったらどうでしょう。
まず写真を撮る。広告を作る。
問い合わせが入る。案内する。
「ちょっと高いですね」はい、終了。
また問い合わせ。また案内。
今度は、「駐車場がもう少し広かったらなあ」
はい、終了。
ようやく購入申込みが入った!
と思ったら、住宅ローンが通らない。
また最初からです。
その間にも売主さんから、
「最近どうですか?」
「問い合わせ来てます?」
「値段下げた方がいいですか?」
当然、不動産会社も考えます。
広告の見せ方を変える。価格を相談する。
購入希望者と条件交渉する。
建物に不具合が見つかれば、
その説明もしなければなりません。
そんなことを半年続けて、
ようやく2,000万円で売れました。
仲介手数料の上限は?
やっぱり72万6,000円(税込)。
片方は、「私、欲しいわ~!」
で始まった。
もう片方は半年間、
「まだ売れへんなあ……」
と走り回った。
それでも同じ72万6,000円。
これを見ると、仲介手数料って、
仕事量に比例する仕組みではないんやな
ということがよく分かります。
ところが安い長屋になると話が逆転します

ここからは、
弊社がよく扱うような古い長屋の話です。
現地へ行ったら草がボーボー。
「これでは見栄えが悪いな」
ということで、草を刈る。
別に不動産会社が草を刈かなければならない
決まりなんてありません。
でも売るために必要やと思ったら、私はやります。
草を刈っていたら、
「あれ?こんなところに会所あったんや」
なんてこともあります。
今度は売主さんに話を聞いていると、
「実はこれ、父親から相続した家なんです」
登記を確認すると、まだお父さん名義。
相続登記からやん。
必要な手続きについて説明する。
ようやく売れる状態になった。
写真を撮る。広告する。問い合わせに答える。
現地を案内する。でも古い長屋です。
すぐには決まりません。
また案内。また現地。価格の相談。
条件の調整。そうこうしているうちに半年経過。
ようやく買主さんが見つかりました。
現在、物件価格800万円以下の宅地・建物については
「低廉な空家等」の媒介特例があり、媒介に要する
費用を勘案して、依頼者一方から受け取れる報酬は
30万円の1.1倍=33万円(税込)が
上限となる場合があります。国土交通省
こちらも当然、「33万円もらいなさい」
という制度ではありません。
あくまで上限です。
でも仮に上限いっぱいの
33万円をいただいたとしても、
草を刈って、相続登記の相談に乗って、
何度も現場へ行って、何組も案内して、
半年かけて、ようやく成約。
33万円。
一方、さっきの2,000万円の家。
隣の奥さんが、
「私、欲しいわ~!」で、
72万6,000円。
……。
なんか不思議でしょ(笑)。
不動産好きおばちゃん一言。
「今度は働きすぎちゃう?」
私もちょっとそう思います(笑)。
さらに借地の長屋だったら……

これが借地の長屋になると、
もう一段階仕事が増えることがあります。
建物の売主さんと買主さんだけでは終わりません。
地主さんが登場します。
古い土地賃貸借契約書を確認する。
地代を確認する。借地条件を確認する。
売却について地主さんと話をする。
買主さんが決まったら、
新しい借地人との関係についても調整する。
案件によっては、
「次の買主さんと地主さんとの
土地賃貸借契約書も作ってもらわれへん?」
なんてことまであります。
売主さん。買主さん。
地主さん。司法書士さん。
登場人物がどんどん増えてきます(笑)。
ところが物件価格は数百万円。
こういう仕事をしていると、つくづく思います。
物件価格が高い=不動産会社の仕事が大変
ではないんです。
むしろ価格の安い古い長屋や借地、
再建築が難しい物件、相続が絡む物件などの方が、
調査や調整に時間がかかることも珍しくありません。
72万6,000円が高く感じて、33万円が安く感じる

私はこの記事で、「仲介手数料は高すぎる!」
と言いたいわけではありません。
反対に、「不動産会社はもっと
仲介手数料をもらうべきや!」
と言いたいわけでもありません。
仕事の内容によるんです。
半年かけて、いろんな問題を
一つずつ解決して、ようやく成約した。
そんな取引なら、
「これだけやって33万円か……」
と思うことがあります。
反対に買主さんがあっという間に見つかり、
ほとんど販売活動をしないまま成約した取引なら、
「これで72万6,000円いただくんか……」
と思うこともあります。
長いこと不動産仲介をやっていると、両方あります。
でも不動産会社にも言い分はあります

ここは公平に書いておきます。
半年間一生懸命販売しても、
結局売れない物件もあります。
何度案内しても決まらない。
広告を続けても決まらない。
売主さんが途中で、
「やっぱり売るのやめます」
となることもあります。
そう考えると、
簡単に決まった一件だけを見て、
「不動産屋、儲けすぎやろ!」
という話でもありません。
すぐ決まる物件。半年かかる物件。
一生懸命やっても成約しない物件。
それを全部ひっくるめて、
不動産仲介という商売が成り立っています。
売主さん、一度だけ仲介手数料の欄も見てみてください

家を売るとき、どうしても査定価格に目が行きます。
「この家、なんぼで売れる?」
これは当然です。
でも媒介契約を結ぶとき、
一度だけ仲介手数料の欄も見てみてください。
上限額=絶対に支払わなければならない
金額ではありません。
2,000万円の売買なら上限は72万6,000円でも、
不動産会社との合意があれば
50万円でも30万円でも構いません。
その代わり、不動産会社が
どんな仕事をしてくれるのかも大事です。
安ければいいとも思いません。
高ければ仕事をしてくれるとも限りません。
そして媒介契約を結んだ時点では、
その家が半年かかるのか、
1週間で売れるのかなんて誰にも分かりません。
ひょっとすると翌日、隣の奥さんが
やって来て、「私、欲しいわ~!」
と言うかもしれません(笑)。
そんな仕事を長いことやっている私でも、
やっぱり時々思います。
「仲介手数料と仕事量って、全然比例してへんやん!」
72万6,000円でも、「高いなあ」
と思うことがある。
33万円でも、「安いなあ」
と思うことがある。
不動産の仲介手数料って、
よう考えたらなかなか不思議な仕組みです。
そして、いろんな売主さんも口には出さないだけで、
同じことを思っているのかもしれませんね。

- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
- 宅地建物取引士
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