「買った瞬間から家賃チャリンチャリン!」利回り10%超の長屋オーナーチェンジ物件は本当に買いか? ~リフォーム不要、入居者募集も不要。でも来月退去されたらどうすんねん!~

~リフォーム不要、入居者募集も不要。

でも来月退去されたらどうすんねん!~

 

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ここ何年か、不動産の売却相談や物件情報を見ていると、

「オーナーチェンジ物件」が増えてきたように感じる。

 

オーナーチェンジとは、すでに賃借人が住んでいる状態で

売買され、購入した人が新しい大家になる物件のことだ。

 

建物の所有者は替わるが、

入居している賃借人はそのまま。

 

賃貸借契約も原則として新しい所有者へ引き継がれる。

 

買ったその日から、すでに入居者がいる。

リフォームせんでええ。

 

入居者を募集せんでええ。

空室のまま何か月も待たんでええ。

 

そして所有権が移った直後から、

毎月の家賃が入ってくる。

 

チャリン、チャリン、チャリ~ン!

 

この音が本当に聞こえるわけではないが、

買う人の頭の中では景気よく鳴っているのかもしれない。

 

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500万円で家賃5万円なら、表面利回りは12%!

 

たとえば、賃借人が月額5万円で

住んでいる長屋を500万円で購入したとする。

 

年間家賃収入は60万円。

 

単純に計算すると、表面利回りは12%になる。

 

一棟マンションなら、立地や築年数にもよるが、

利回り6~7%程度で売りに出されている物件も珍しくない。

 

それと比べれば、長屋や古い中古戸建の

利回り10%超という数字は、かなり魅力的に見える。

 

しかも一棟マンションのように、

何千万円、何億円という資金は必要ない。

 

数百万円程度なら、

融資を使わず現金で買える人もいるだろう。

 

不動産投資を初めてする会社員や、

退職金の一部を運用したい人にも手が届きやすい。

 

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何より楽なのが、購入後にリフォームをしなくてもよいことだ。

 

空き家を買えば、まず室内を片付け、傷んだ箇所を直し、

クロスを張り替え、畳や襖を交換する。

 

キッチン、浴室、トイレまで替えたら、

古い長屋でも相当な費用になる。

 

工事が終わったら、次は入居者募集だ。

 

仲介会社へ募集を頼み、問い合わせを待ち、内覧してもらう。

 

それでも入居者がすぐ決まるとは限らない。

その間、家賃収入はゼロである。

 

ところがオーナーチェンジなら、

その一連の作業が必要ない。

 

「便器も替えんでええ。畳も替えんでええ。

それで来月から家賃5万円か。こんな楽なもん、買いやろ!」

 

そう考える気持ちは、私にもよく分かる。

 

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ただし、あなたは室内を一度も見ていない

 

ここで、浮かれた頭を少し冷やして考えてみたい。

 

オーナーチェンジ物件には、

原則として賃借人が住んでいる。

 

売買するからといって、

大家が勝手に室内を見せるわけにはいかない。

 

つまり買主は、室内を確認できないまま

購入を判断することになる。

 

一般的な中古住宅なら、購入前に室内を見られる。

 

床が傾いていないか。

天井に雨漏りの跡がないか。

 

浴室やキッチンがどの程度傷んでいるか。

室内に大量の家財が残っていないか。

 

それらを確認したうえで、

購入価格やリフォーム費用を考えられる。

 

しかし、オーナーチェンジ物件では、それができない。

 

外観は見られる。間取り図もある。

賃貸借契約書も確認できる。

 

それでも、肝心の室内は見えない。

 

言ってみれば、

箱を開けずに数百万円の福袋を買うようなものである。

 

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購入した翌月、「退去します」

 

私がオーナーチェンジ物件を

なかなか買えない理由は、これである。

 

500万円で長屋を購入した。

 

月額5万円の家賃が入る。

 

「これで年間60万円。表面利回り12%や!」

 

ところが、決済が終わった翌月、

賃借人から一本の電話が入る。

 

「来月末で退去させてもらいます」

 

えっ……。

もうちょっと住んでくれへんの?

 

せめてリフォーム代を回収するまで待ってくれへん?

 

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そんなことを思っても、もちろん口には出せない。

 

そして退去後、初めて室内の扉を開ける。

玄関に入った瞬間、床がブヨン。

 

壁はタバコのヤニで黄色い。

天井には見覚えのない大きなシミ。

 

浴室は昔ながらのタイル張りで、

ところどころ割れている。

 

トイレもキッチンも、

そのまま次の入居者に使ってもらうには厳しい。

 

給湯器には製造年の古そうなシールが貼ってある。

 

奥の部屋へ進んでいくと、

床が微妙に傾いているような気までしてきた。

 

業者に見積もりをお願いしたら、後日届いた金額は300万円。

 

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「家賃収入を買ったはずが、大規模リフォームを買うてしもたやないか~!」

 

500万円で購入した物件に、さらに300万円。

 

購入時の諸費用を加えれば、総投資額はもっと増える。

 

工事中は家賃が入らない。リフォームが完成しても、

新しい入居者がすぐに決まる保証はない。

 

募集条件によっては、

以前と同じ月額5万円で貸せるとも限らない。

 

購入時に12%あったはずの利回りは、一体どこへ行ったんや?

 

チャリンチャリンどころか、

修繕費がドサッ、工事代金がドサッ、募集費用がドサッ。

 

音の種類が完全に変わっとるがな。

 

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「長期入居中」は安心材料であり、怖さでもある

 

販売資料に「入居期間15年」と書かれていたら、

多くの人は安心するだろう。

 

15年間も住んでいるなら、

これからも長く住んでくれるかもしれない。

 

滞納もなく、毎月きちんと家賃が入っているなら、

確かに優良な賃借人である可能性は高い。

 

一方で、別の見方もある。

 

15年間、大規模な室内リフォームをしていないかもしれない。

 

入居期間が長いほど、

設備も建具も畳も古くなっている可能性がある。

 

賃借人が退去したときには、15年分の傷みがまとめて出てくる。

 

長期入居だから安心。

 

長期入居だから室内が怖い。

 

この両方が成り立つのが、

オーナーチェンジ物件の難しいところである。

 

特に古い長屋の場合、建物そのものにも注意が必要だ。

 

屋根、外壁、雨樋、給排水管、シロアリ、建物の傾き。

 

さらに連棟式の長屋なら、

切り離しや建て替えが簡単ではない場合もある。

 

借地なのか所有権なのか。

再建築はできるのか。

前面道路はどうなっているのか。

 

退去後に自分で使わず売却するとしたら、

次の買主が見つかるのか。

 

毎月の家賃だけを見ていると、

こうした出口の問題がすっぽり抜け落ちてしまう。

 

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一棟マンションと長屋一戸では「退去」の重さが違う

 

一棟マンションなら、10室のうち1室が退去しても、

残り9室から家賃が入る。

 

もちろん空室は痛いが、

家賃収入がいきなりゼロになるわけではない。

 

ところが長屋一戸や中古戸建一軒だけを所有している場合、

その一世帯が退去した瞬間、入居率は100%から0%になる。

 

家賃収入も、月5万円から0円。

 

そこへリフォーム費用が重なる。

 

表面利回りだけなら長屋のほうが高くても、

戸数によるリスク分散は一棟マンションのほうが効いている。

 

長屋を10戸、20戸と所有している大家なら、

1戸が空いてもほかの家賃で補える。

 

安く工事してくれる業者との付き合いがあり、

自分でも簡単な修繕ができる人なら、

高利回り長屋との相性もよいだろう。

 

しかし、初めての収益物件として1戸だけ購入するなら、

その一人の賃借人に収入のすべてを預けることになる。

 

利回り10%超という数字だけで、

一棟マンションより安全とはいえないのである。

 

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「リフォーム不要」ではなく「リフォームの順番待ち」かもしれない

 

オーナーチェンジ物件の広告で感じる魅力は、

「リフォーム不要ですぐに家賃が入る」という点だ。

 

確かに購入時点では、そのとおりである。

 

しかし、その建物が永久に

リフォーム不要という意味ではない。

 

今の賃借人が住んでいるから、

まだ工事をするタイミングが来ていないだけかもしれない。

 

言い換えれば、

 

リフォーム不要の物件ではなく、

リフォーム費用の支払いが先送りされている物件

とも考えられる。

 

その順番が5年後に回ってくれば、

5年間の家賃から準備できる。

 

10年後なら、さらにありがたい。

 

けれど、来月回ってくる可能性もある。

 

ここだけは、誰にも分からない。

 

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結局、利回り10%超の長屋は買いなのか?

 

私は、オーナーチェンジ物件を否定するつもりはない。

 

購入後すぐに家賃が入り、リフォームも入居者募集も不要。

 

少ない資金で始めやすく、賃借人が長期間住み続けてくれれば、

非常に良い投資になる可能性がある。

 

実際に、こうした長屋を何戸も購入し、

安定した家賃収入を得ている大家もいるだろう。

 

それでも私は、室内を一度も確認せずに購入するのが怖い。

 

外から見て建物の状態を想像することはできても、

床下や天井裏まで透視できるわけではない。

 

大事なのは、表面利回り10%という数字を見て

「買い」と判断することではない。

 

退去後に200万円、300万円の工事が必要になっても、

その購入価格で納得できるか。

 

半年や1年間、家賃が入らなくても資金的に耐えられるか。

 

再募集しても入居者が決まらなかった場合、

売却できる物件なのか。

 

そこまで考え、それでも収支が合うなら買いである。

 

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反対に、今の家賃がこの先もずっと入る前提でしか

利益が出ないなら、

利回り10%を超えていても慎重に考えたほうがよい。

 

売主は「現在入っている家賃」を売る。

 

買主は「これからも続く家賃」を買ったつもりになる。

 

その間にあるのが、

賃借人がいつ退去するか分からないという現実である。

 

チャリンチャリンという音に心を奪われても構わない。

 

ただし、その音が来月突然止まっても、

慌てず扉を開けられる準備だけはしておきたい。

 

開けてビックリ。

 

床ブヨブヨ。

 

それから見積書を握りしめて、

「こんなん聞いてへんで~!」

 

と叫んでも、もう前の所有者はおりません。

 

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オーナーチェンジ長屋のQ&A

 

Q1.表面利回りが10%を超えていれば、お得な物件ですか?

 

利回りだけでは判断できません。

 

購入諸費用、固定資産税、火災保険料、修繕費、空室期間、

入居者募集費用まで含めて考える必要があります。

 

退去後のリフォーム費用を仮に計上しても収支が合うかを確認しましょう。

 

Q2.入居期間が長い賃借人なら安心ですか?

 

家賃の支払いが安定している点では安心材料です。

 

ただし、長期間リフォームされていない可能性もあります。

修繕履歴や設備交換の記録があれば、必ず確認したいところです。

 

Q3.購入前に室内を見せてもらうことはできますか?

 

賃借人が生活しているため、

売買を理由に当然に内覧できるものではありません。

 

賃借人の承諾を得られる場合もありますが、

室内確認ができない前提で判断しなければならない

物件が多いでしょう。

 

Q4.最低限、何を確認すればよいですか?

 

賃貸借契約書、家賃の入金状況、滞納の有無、敷金の引継ぎ、

入居期間、修繕履歴は重要です。

 

長屋の場合は、所有権か借地か、再建築の可否、接道状況、

連棟の状態、退去後の売却方法も確認しておきたいところです。

 

Q5.結局、どんな人に向いていますか?

 

複数戸を所有してリスクを分散できる人、修繕費を抑えられる人、

退去後のリフォーム資金を確保している人、

そして建物だけでなく出口まで判断できる人には向いています。

 

反対に、購入後すぐの家賃を生活費や返済にすべて充てる予定で、

退去や修繕に耐える余裕がない場合は慎重な判断が必要です。

 

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最後に

 

高利回りの長屋オーナーチェンジ物件には、

確かに魅力がある。

 

リフォームせず、募集もせず、

買った瞬間から家賃チャリンチャリン。

 

これほど分かりやすく、心をくすぐる話もない。

 

しかし、不動産投資はチャリンチャリンだけでは終わらない。

 

オーナーチェンジ物件は、

リフォームせんでええ物件ではない。

 

今はまだ、自分にリフォームの順番が

回ってきていないだけかもしれない。

 

来月、その順番が回ってきても

笑っていられる価格なら買い。

 

 

笑われへんのやったら――

 

私は、やっぱり怖くて買えませんわ。

 

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筆者松本 親幸
  • 不動産キャリア29年
  • 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
個人的には今までの不動産業経歴において1,500件超のお取引に関わっております。
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若い時にはリフォームの仕事も経験済。
売主様には査定時に買取価格を算出します!

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