『【主人が息子のために残すって言うんです】平野区の空き家査定で奥さんの話を聞いていたら、フラフラになった話』
「大阪市平野区にある家なんですけど、
一度査定してもらえませんか?」
お問い合わせをいただいたのは、70代の奥様でした。
ご夫婦はすでに中古マンションへ引っ越していて、
以前住んでいた一戸建ては空き家になっているとのこと。
築年数を聞くと、すでに50年を超えています。
「売却をお考えなんですか?」
そう尋ねると、
奥様から少し困ったような返事が返ってきました。
「私は売ったらええと思ってるんですけどね。主人が……」
どうやら、ご主人が売却に反対しているらしい。
後日、現地を見せていただくことになりました。
このときの私は、普通に家を査定するつもりでした。
まさか途中から、奥様と漫才みたいに
なるとは思っていませんでした。
築50年超。それでも大切に使われてきた家だった
現地を訪れると、確かに古い家です。
ただ、築50年を超えているからといって、
荒れ果てているわけではありません。
ご夫婦が長年、大切に住んできたことが分かります。
ここで息子さんを育て、
家族で長い時間を過ごしてきたのでしょう。
現在、ご主人は75歳。
腰痛もあり、一戸建てでの生活や管理が
だんだん大変になってきたこともあって、
ご夫婦は中古マンションへ引っ越されました。
当然、この家は空き家になります。
そこで奥様は、
「もう誰も住んでへんし、
売ったらええんちゃう?」と考えた。
ところがご主人は違います。
「息子がいつか大阪に帰ってくるかもしれへん。
息子のために置いとくんや」
なるほど。
親心ですね。
そこで私も聞いてみました。
「息子さん、
大阪に戻ってくる予定があるんですか?」
奥様は即答しました。
「ないです」
「……ないんですか?」
「八王子に住んでます」
「お仕事が東京なんですね。賃貸ですか?」
「マンション買ってます」
「もう家持ってはるんですか?」
「持ってます」
……ちょっと待ってください。
話が早くも怪しくなってきました。
「息子さんは、この家に住みたいって?」
ご主人は「息子のために残したい」と言っています。
ならば、肝心の息子さんは
どう思っているのでしょう。
「息子さんは、
この家を残してほしいと言ってるんですか?」
「いや」
「違うんですか?」
「早よ処分してくれって言うてます」
「……誰のために置いてるんですか?」
「息子」
「話、最初に戻りましたやん」
奥様も笑っています。
私も笑いました。
査定開始からまだそれほど時間は経っていません。
すでに不動産査定というより、
漫才の雰囲気になってきました。
息子さんが大阪へ来るのは「3年に1回くらい」
まだ聞いてみます。
もしかすると、息子さんは頻繁に大阪へ
帰ってきていて、将来的には地元へ戻りたい
という気持ちがあるのかもしれません。
「息子さん、大阪にはよく帰ってくるんですか?」
「うーん……3年に1回くらいかな」
3年に一度。
思っていたより少ない。
「奥さんも一緒に来られるんですか?」
「嫁は来ません」
「来ないんですか?」
「大阪に住む気もないと思いますよ。埼玉の子やし」
しかも息子夫婦は、
現在の八王子のマンション暮らしに満足しているそうです。
さらに話を聞くと、お嫁さんはもともと
関西弁もあまり好きではないらしい。
「……息子さん、関西人ですよね?」
「そうやねん」
なぜ結婚したのか。
非常に興味深いところですが、
そこから先は不動産会社の業務範囲ではありません。
息子は3年に一度。でも雑草は毎年帰ってくる
そんな話をしながら家の周囲を確認していると、
もう一つ問題があります。
雑草です。
特にお盆前後。
大阪の夏の日差しを浴びて、犬走り
(※建物の周囲にある細い通路部分)から
草が元気いっぱいに伸びてきます。
放っておくと、高いものでは1メートル近くになるそうです。
「これ、ご主人が刈ってるんですか?」
「無理無理。腰悪いから」
75歳で腰痛持ち。
真夏の大阪で草刈りは、さすがに大変です。
「じゃあ、どうしてるんです?」
「シルバーさんにお願いしてます」
シルバー人材センターに
草刈りを依頼しているそうです。
「毎年?」
「毎年」
「何年くらいです?」
「もう5年以上かな」
息子さんは3年に一度。
雑草は毎年。
この家に一番律儀に帰ってきているのは、
どうやら草です。
そう言うと、奥様も笑っていました。
でも、笑っていられたのはここまででした。
「それでね、雨漏りしてるんです」
奥様が急に声のトーンを変えました。
「それで今回、査定お願いしようと思ったんです」
「何かあったんですか?」
「雨漏りしてるんです」
ついに来ました。
築50年を超える家です。
どれだけ大切に使っていても、
屋根や外壁などは少しずつ老朽化していきます。
しかも今は空き家。
毎日誰かが生活しているわけではないため、
異変にも気づきにくくなります。
「ご主人は何て言ってはるんです?」
「直したらええんちゃうかって」
「誰が住むために?」
「息子」
「八王子の?」
「八王子の」
「マンション持ってる?」
「持ってる」
「大阪に来るの3年に1回?」
「そう」
「息子さんは売ってほしいと言ってる?」
「言うてる」
「奥さんは大阪に来ない?」
「来ない」
「…………誰が住むんですか?」
奥様が笑いながら言いました。
「知らん(笑)」
もう完全に漫才です。
笑い話のようで、実はよくある「親と子の実家問題」
ここまで読むと、
「お父さん、もう売ったらええやん」
と思うかもしれません。
でも、私は話を聞きながら、
少し違うことも感じました。
ご主人が本当に残したいのは、
築50年を超えた建物そのものではないのかもしれません。
「息子がいつか大阪へ帰ってくる場所」
それをなくしたくないのではないでしょうか。
息子が50歳になっても、親から見れば息子です。
「いつか帰ってくるかもしれない」
「そのとき住むところがあったほうがいい」
そんな親心なのでしょう。
一方、息子さんには息子さんの人生があります。
八王子にマンションを購入し、
夫婦で今の暮らしに満足している。
本人は実家について「早く処分してほしい」
と考えている。
どちらが悪いという話ではありません。
ただ、親が考える「子どものため」と、
子どもが考える「自分のため」が一致していないのです。
空き家は家族の答えが出るまで待ってくれない

問題は、建物には時間が流れ続けることです。
誰も住まなくても草は伸びます。
固定資産税などの負担もあります。
建物も年々古くなります。
そして今回のように、
雨漏りなどの不具合が出てくることもあります。
さらに管理する側も年齢を重ねます。
75歳で腰痛を抱えるお父さんが、
これから5年、10年と空き家を管理できるのか。
そこまで含めて考える必要があります。
だから、子どものために実家を残そうと考えているなら、
一度本人に聞いてみてもいいでしょう。
「この家、ほんまに将来住む?」
そこで、「住む」なら残す理由があります。
でも、「いや、早よ売って」
なら……。
一度、家族会議をしたほうがいいかもしれません。
今回のご家族も、まずは査定によって
現在の家の価値を知るところから始まりました。
売るか、残すか。
査定をしたからといって、
必ず売却する必要はありません。
ただ、判断材料を持っておくことはできます。
そして、お父さん。
息子さんが次に
大阪へ帰ってくるのは3年後かもしれません。
でもたぶん――
雑草は来年も帰ってきます。
不動産売買等でのよくある質問
子どものために実家を空き家のまま残しても大丈夫ですか?
残すことはできますが、誰も住んでいなくても
草木の管理や建物の点検、税金などの負担は続きます。
「いつか住む」ではなく、子ども本人に
将来住む意思があるのか確認しておくことも大切です。
築50年以上の古い家でも査定してもらえますか?
査定は可能です。
古い建物の場合、建物だけでなく土地の立地、面積、
接道状況なども含めて評価されます。
老朽化しているからと自己判断せず、
まず現状を確認してみましょう。
雨漏りしている家でも売却できますか?
雨漏りがあっても売却できる可能性はあります。
ただし、把握している不具合については
適切に伝える必要があります。
修理してから売るか、現状のまま売るかも含め、
不動産会社へ相談するとよいでしょう。
査定をお願いしたら売却しないといけませんか?
査定を受けたからといって、
必ず売却する必要はありません。
現在の不動産価値を知ったうえで、
「残す」「売る」「もう少し管理する」といった
選択肢を家族で検討できます。
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
- 宅地建物取引士
どんな物件買取もお任せ下さい!
若い時にはリフォームの仕事も経験済。
売主様には査定時に買取価格を算出します!
家の買取や売却のご依頼・ご相談は
ワンちゃんと古い家が大好きな白髪交じりの私・松本が全てご対応いたします!
