『ちょっと待って!あんた、1年で出ていくんかい!』大阪のおばちゃん大家、ボヤきが止まらないの巻

「ちょっと聞いてぇな。」

 

大阪のおばちゃん大家の朝は、

誰かに話を聞いてもらうところから始まる。

 

「350万円やで?」

「350万円もかけたんやで?」

 

コーヒーカップを机に置く音が、

今日はいつもより大きい。

 

「この長屋な、買った時なんか汲み取りトイレやってん。」

 

「家の中には家財道具がぎょうさん残っとるし、

雨漏りもボチボチしてるし。」

 

「文字どおりのボロボロ長屋や。」

 

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それでも価格は魅力やった。

100万円。

「そら安い理由あるわな。」

 

そう笑いながら購入したものの、

本当の戦いはそこから始まった。

 

まず大量の残置物を処分。

雨漏りを直し、水道を整備。

 

キッチンを交換し、お風呂も新しくした。

トイレももちろん水洗。

 

クロスを全部張り替え、床もきれいにして、照明も交換。

 

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気が付けばリフォーム費用は約350万円。

 

「途中から『どこまでやるねん!』

って自分でツッコミ入れてたわ。」

 

でも完成した部屋を見た瞬間、疲れなんか全部吹き飛んだ。

 

新品のキッチン。

ピカピカの床。

白いクロス。

 

「もう新築ちゃうか思うくらいや。」

 

誰も住んでいない部屋を見ながら、

おばちゃんは一人でニヤニヤしていた。

 

「これなら絶対決まる。」

そして、その予感どおり借主さんが決まった。

 

鍵を渡しながら心の中でつぶやく。

 

「頼むで。」

「長う住んでな。」

大家にとって、これ以上うれしい瞬間はない。

 

ところが…。

それから、たった一年。

 

一本の電話が鳴る。

「退去させていただきます。」

……。

 

「は?」

「えっ?」

 

「一年?」

「ちょっと待って!」

 

「あんた、一年で出ていくんかい!」

 

 

もちろん、その場でそんなことは言わへん。

「承知しました。」

「今までありがとうございました。」

 

笑顔で電話を切る。

 

でも受話器を置いた瞬間、

「もうちょい住んでくれてもええやん!」

 

心の中では盛大に叫んでいた。

もちろん借主さんが悪いわけではない。

 

転勤かもしれない。

結婚かもしれない。

親の介護かもしれない。

 

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人生にはいろんな事情がある。

それは分かってる。

 

ほんまに分かってる。

 

でもな…。

大家にも事情があるんや。


「違約金ありますから。」……いや、そういう問題ちゃうねん。

 

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管理会社さんが言う。

「短期解約違約金があります。」

 

家賃2か月分。

月5万1,000円。

 

約10万円。

「ありがとうございます。」

 

……とは言うたものの、大阪のおばちゃんの

頭の中では電卓が猛スピードで動き始める。

 

ハウスクリーニング。

クロスの補修。

 

鍵交換。

募集写真の撮り直し。

 

不動産ポータルへの掲載。

内覧対応。

 

そして、その間は家賃ゼロ。

 

「10万円なんか一瞬で飛んでいくやん!」

 

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しかも、もっと現実的な話がある。

「一年住んでもろて、家賃で回収できたん約60万円やで。」

「まだリフォーム代、全然回収できてへんがな!」

 

100万円で買った長屋。

リフォーム350万円。

 

ようやく貸せたと思ったら一年で退去。

 

「またリフォームせなあかん……。」

 

誰も住んでいない部屋でも、

固定資産税は待ってくれない。

 

火災保険もある。

設備点検もある。

 

募集を止めるわけにもいかない。

 

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賃貸経営というと、

「毎月家賃が入るからええなぁ。」

そんなイメージを持たれがちや。

 

もちろん家賃が入るのはうれしい。

 

でも、その裏には退去があり、

空室があり、修繕がある。

 

利回りの数字だけでは見えてこない現実が、

大家業にはぎょうさん詰まってる。

 

「大家さんって楽そう。」

そう言われたら、おばちゃんは笑いながらこう返す。

 

「一回やってみ。」

「意外と胃薬いる仕事やで。」


あのピカピカは、もう戻ってこない。

 

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退去後の部屋へ入る。

きれいに使ってくれていた。

 

壁に大きな穴もない。

設備も丁寧に使ってくれている。

 

借主さんには感謝しかない。

でも…。

 

玄関を開けた瞬間、おばちゃんは小さくつぶやく。

「やっぱり違うなぁ。」

 

リフォームが終わったあの日。

 

新品の匂い。

ピカピカに光る床。

真っ白なクロス。

誰も住んでいない静かな部屋。

 

あの景色は、もう戻ってこない。

 

もちろん、家は人が住んでこそ価値がある。

使ってもらってなんぼ。

 

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それは分かっている。

 

でも、自分でお金をかけて、自分で悩んで、

自分で直した部屋には、不思議と愛着が湧く。

 

だから退去すると、家賃以上に少し寂しい。

 

「あぁ、また一からか。」

そんな気持ちになる。

 

それでもクロスのサンプル帳を開く。

「今度はどの色にしよかな。」

 

また掃除をする。

また募集写真を撮る。

また内覧の準備をする。

 

大家業というのは、「家を貸す仕事」ではない。

 

**「家を育て続ける仕事」**なのかもしれない。

 

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明日になったら、また部屋へ行く。

「次の人は長う住んでくれますように。」

そう願いながら。

 

大阪のおばちゃん大家のボヤきは、

今日も止まらない。

 

でも、それでも前を向いて、また鍵を磨く。

 

それが大家という仕事やから。


🏡 大阪のおばちゃん大家のひと言

 

「家賃は毎月入るかもしれん。」

「でも、安心は毎月入ってけぇへん。」

 

「大家業ってな、家を貸す仕事やのうて、

人とのご縁を預かる仕事なんかもしれんな。」

 

でも今日は、さすがにアカン。

 

おばちゃんは冷蔵庫から缶ビールを取り出し、

ひと口飲んで天井を見上げる。

 

「100万円で買うた長屋に350万円かけて、

やっと貸せた思たら一年で退去やもんなぁ……。」

 

「まだリフォーム代も全然回収できてへんがな。」

 

しばらく黙ったあと、小さくつぶやいた。

「今晩の酒がまずそうやわ……。」

 

少し間を置いて、もうひと言。

「……吐くかも。」

 


よくある質問

 

Q. 短期解約違約金があれば大家さんの負担は少ないですか?

 

違約金は一定の補填にはなりますが、

退去後のハウスクリーニングや修繕、鍵交換、募集費用、

空室期間の家賃減少などを考えると、必ずしも十分とは限りません。

 

Q. 築古物件をリノベーションして賃貸に出すメリットはありますか?

 

魅力的な物件に生まれ変われば入居につながる可能性があります。

 

ただし、リフォーム費用の回収には時間がかかるため、

長期的な視点で計画することが大切です。

 

Q. 退去が早いと大家さんは困るものですか?

 

事情はさまざまですが、短期間で退去が続くと

原状回復や募集費用が重なり、

収益計画に影響することがあります。

 

Q. 大家業で一番大切なことは何ですか?

 

家賃収入だけでなく、建物を適切に維持し、

入居者に長く快適に住んでもらえる環境を整えることが、

安定した賃貸経営につながります。

 

筆者松本 親幸
  • 不動産キャリア29年
  • 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
個人的には今までの不動産業経歴において1,500件超のお取引に関わっております。
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若い時にはリフォームの仕事も経験済。
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