『住宅ローンを繰り上げ返済しようと思ったら…毎年なぜか家の何かが壊れる!?お父さん物語【後編】』
~家を買うのはゴールじゃなかった。
10年後、大阪のお父さんを待っていた本当の現実~
娘がシンガポールへ旅立ち、
住宅ローンの繰り上げ返済は一年延期。
「まぁ、来年200万円貯めたらええ。」
山田さんはそう自分に言い聞かせました。
幸い仕事も順調。
今年こそ。
今年こそ住宅ローンを減らそう。
そう思っていた矢先、テレビから流れてきたニュース。
「日本銀行は追加利上げを決定しました。」
山田さんは朝食を食べながら
思わずテレビへ向かって言いました。
「頼むわ……。」
「やっと200万円貯まりそうやったのに。」
奥さんは横で笑っています。
「しゃあないやん。」
「いや、しゃあないけどな。」
変動金利で借りている以上、
いつか金利が上がることは分かっていました。
だからこそ急いで繰り上げ返済したかったのです。
「今年こそ絶対返す。」
そう決めて、また一年。
外食は控えめ。
仕事帰りはスーパー。
大阪市プレミアム付商品券ももちろん応募。
「今年も当たった!」
40,000円で52,000円。
山田さんは商品券をスマホ登録し微笑みます。
「これで食費浮かせて、また貯金や。」
その姿を見て奥さんは、
「ほんま節約好きやなぁ。」
と笑います。
「好きちゃうねん。」
「住宅ローン返済が好きやねん。」
家族全員、大笑いでした。
そんなある日の朝。
奥さんが台所から叫びます。
「ちょっと来て!」
冷蔵庫でした。
「なんか閉まらへんねん。」
右の扉は閉まります。
でも左側が、少し浮いています。
ギュッと押したら閉まる。
五分後。
また開いている。
「ピーピーピー。」
警告音。
牛乳を触ると、少しぬるい。
「これ、あかんやつや。」
修理も考えました。
でも電気屋さんは一言。
「部品もありません。」
「買い替えですね。」
約25万円。
また通帳の数字が減ります。
「……。」
山田さんは何も言いません。
「冷蔵庫やし、しゃあない。」そう自分に言い聞かせました。
しかし、試練は終わりません。
一週間後。
今度は給湯器。
お風呂へ入ろうとするとリモコンにエラー表示。
何度リセットしても消えません。
「今日は水で入る?」
「いや、それは無理や。」
業者さんが来て一言。
「10年以上使われてますね。」
「交換ですね。」
約30万円。
山田さんは天井を見上げます。
「家って、示し合わせて壊れるんか……。」
さらに追い打ち。
洗面化粧台の下からポタポタ……。
「えっ?」
タオルを敷いても止まりません。
点検すると、水栓だけでは済みそうにありません。
結局、交換。
さらに数十万円。
そして極めつけ。
月曜日の朝。
会社へ行こうと車に乗り込み、リモコンを押します。
ガガガガガッ!
シャッターが途中で止まりました。
「うそやろ……。」
もう笑うしかありません。
修理費。
交換費。
今年だけで約150万円。
住宅ローン繰り上げ返済用に貯めた
200万円は、また静かに姿を消しました。
その夜。
通帳を見ながら山田さんはため息をつきます。
「今年もあかんかったか。」
すると奥さんが隣へ座りました。
「でもさ。」
「娘、留学行けたやん。」
「新しいエアコンで快適やし。」
「冷蔵庫も安心。」
「お風呂も毎日入れる。」
「家って住み続けるだけでも、お金いるんやね。」
山田さんは少し笑いました。
「ほんまやな。」
不動産の仕事をしていると、築10年から15年で
設備交換の相談が増えることをよく耳にします。
エアコン。
給湯器。
冷蔵庫。
ガスコンロ。
洗面化粧台。
電動シャッター。
住宅ローンだけを考えていても、
家は待ってくれません。
だからこそ、繰り上げ返済だけが正解ではないのです。
手元に生活費や修繕費を残しておくことも、
大切な家計管理です。
無理に返済して、いざという時に困るより、
家族が安心して暮らせることの方が大切な場合もあります。
山田さんは通帳を閉じました。
そして翌日。
仕事帰り。
いつものスーパーへ寄ります。
「今日は何作ろかな。」
特売の豚こま肉。
98円のもやし。
半額シールの豆腐。
プレミアム商品券を財布から取り出し、
少し嬉しそうにレジへ向かいます。
レシートを財布へしまい、
夕焼けの住之江区の空を見上げながら、
山田さんは静かにつぶやきました。
「よし。」
「また頑張ろ。」
住宅ローンはまだ残っています。
でも、家族も元気です。
それだけで十分なのかもしれません。
Q&A
Q. 繰り上げ返済は早い方がいいですか?
A. 利息軽減の効果は期待できますが、
教育費や住宅設備の更新費用なども考え、
手元資金とのバランスを取ることが大切です。
Q. 一戸建ては築10年くらいから修繕費が増えますか?
A. ご家庭によって違いますが、
エアコン・給湯器・水回り・外構設備など、
交換や修理が重なるケースは珍しくありません。
Q. 住宅ローン返済中でも旅行や子どもの教育にお金を使っていいのでしょうか?
A. ご家庭の状況次第ですが、
家族の生活や経験も大切な資産です。
返済だけに偏らず、無理のない資金計画を考えることが重要です。
弊社より
住宅ローンを組むこと、家の購入は、
人生で一番大きな買い物かもしれません。
しかし、家を買った瞬間がゴールではなく、
本当の暮らしはそこから始まります。
設備はいつか壊れます。
子どもは成長します。
思いがけない出費もあります。
だからこそ、焦って繰り上げ返済を
することだけが正解ではありません。
家族が笑顔で暮らせること。
それも立派な「マイホームの価値」ではないでしょうか。
そして山田さんは、
今日も仕事帰りにスーパーへ寄ります。
住宅ローン繰り上げ返済という夢は、まだ叶っていません。
けれど、お父さんは2年後、
住宅ローン繰り上げ返済をめげずに目指すのであった……。
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
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