『住宅ローンを繰り上げ返済しようと思ったら…毎年なぜか家の何かが壊れる!?お父さん物語【前編】』

~家を買うのはゴールじゃなかった。

10年後、大阪のお父さんを待っていた本当の現実~

 

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10年前の春。

大阪市住之江区。

 

「よし、ここに決めよう。」

 

新築の売物件や建売現場を何件も見て回った末、

山田恒一さん(仮)(35歳)は

一軒の新築一戸建を購入しました。

 

頭金300万円。

住宅ローン3,500万円。

 

35年返済。変動金利。

 

営業マンは笑顔でこう言いました。

 

「変動金利なら毎月の返済も抑えられます。

余裕ができたら繰り上げ返済してください。

利息もかなり減りますよ。」

 

当時はまだ子どもも小さく、

奥さんと二人で顔を見合わせながら、

 

「35年なんて長いようで、きっとあっという間や。」

 

そんな話をしていました。

 

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新品のフローリング。

真っ白な壁紙。

まだ誰も使っていないキッチン。

 

娘は自分の部屋へ走って行き、

「ここ私の部屋や!」

息子も負けじと二階へ駆け上がります。

 

その姿を見ながら山田さんは心の中で誓いました。

「住宅ローンだけは、一日でも早く返そう。」

 

それが10年間続く節約生活の始まりでした。

 

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会社帰り。

 

同僚から、「山田、今日一杯どうや?」

そう誘われても、

 

「今日は帰るわ。」笑って断ります。

 

居酒屋代も積もれば大きなお金。

 

その代わり、仕事帰りには

決まって近所のスーパーへ向かいます。

 

店へ入る前に必ず決めるルールがあります。

『今日は1,000円以内。』

 

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野菜売場で特売のキャベツを手に取り、

98円のもやしをカゴへ入れる。

 

肉売場では豚こま肉。

夕方になると貼られる半額シール。

 

「あっ、ラッキー。」

思わず口元が緩みます。

 

今日の献立は回鍋肉。

味噌汁は豆腐とわかめ。

 

休日だけではありません。

 

平日でも時間が合えば自分で夕飯を作ります。

 

住宅ローンを少しでも早く返したい。

その気持ちは10年間、一度も変わりませんでした。

 

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山田さんには、毎年ちょっとした楽しみがあります。

 

大阪市プレミアム付商品券です。

 

募集が始まると、スマホを見ながら思わず声が出ます。

「今年もやるんか!」

40,000円で52,000円分使える。

 

しかも近所のスーパーでも利用できる。

「12,000円も得やん!」

 

見事に当選した日は、

子どもより山田さんの方が嬉しそうでした。

 

「これで浮いた食費も貯金や。」

誰かにとって12,000円は小さなお金かもしれません。

 

でも山田さんにとっては、

住宅ローンを少しでも早く返すための大切な資金です。

 

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そんな小さな積み重ねを10年間続けた結果、

ある夜、風呂上がりに通帳を開くと

数字はついに200万円を超えていました。

 

思わず一人でガッツポーズ。

「よっしゃ!」

「今年こそ繰り上げ返済や!」

 

頭の中では電卓を叩いています。

「200万円返したら利息も減る。」

「金利が上がる前に返したい。」

 

缶ビールを一本だけ開け、奥さんに通帳を見せると、

「よう頑張ったな。」

その一言だけで疲れが吹き飛びました。

 

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しかし…。

人生というのは本当に不思議です。

 

お金が貯まった頃を見計らったように、

何かが起こります。

 

夕食を食べ終えた夜。

 

奥さんがリモコンを持ってきました。

「ちょっと見て。」

リビングのエアコンです。

 

設定温度は18℃。

風量は最大。

それでも何となくぬるい風しか出ません。

 

「フィルター掃除した?」

「した。」

 

「電気屋さんにも見てもろた。」

「寿命やって。」

 

今年も大阪は猛暑。

 

家族に我慢させるわけにはいきません。

「しゃあないな。」

約30万円。

 

繰り上げ返済用の口座から静かに旅立っていきました。

 

「まあ、まだ170万円ある。」

 

そう自分に言い聞かせた瞬間、

奥さんが続けます。

 

「せっかく工事来てもらうんやったら、

娘の部屋にも付けへん?」

 

「最近暑すぎるし。」

さらに息子の部屋も…。

 

結局、工事費込みで約60万円。

 

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通帳の数字は一気に減りました。

 

それでも山田さんは笑います。

「家族が快適なんやったら、それでええ。」

 

住宅ローンは逃げません。

でも子どもたちの夏は、今年しかありません。

 

その数日後。

高校2年生の娘が少し緊張した顔で話しかけてきました。

 

「パパ、お願いがあるねん。」

「夏休みにシンガポールへ短期留学したい。」

 

パンフレットを見ると費用は約50万円。

 

娘は小さな声で言いました。

「無理やったら諦める。」

 

その言葉を聞いた山田さんは、

すぐには返事ができませんでした。

 

住宅ローンも大切。

でも、娘の夢は今しか応援できません。

 

夜遅くまで夫婦で話し合い、

最後に山田さんは笑って言いました。

 

「行ってこい。」

 

「若いうちしかできへん経験や。」

 

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数週間後、関西空港。

「ありがとう、パパ!」

 

手を振る娘を見送りながら山田さんは思いました。

 

「50万円、高かったけど…。これも家族のためや。」

住宅ローンの繰り上げ返済は、また一年延期。

 

「来年こそ。」

 

そう決意した山田さん。

 

しかし、その頃からニュースでは

毎日のように「利上げ」の文字が流れ始めます。

 

缶コーヒーを片手にテレビを見つめながら、

山田さんは苦笑いしました。

 

「頼むわ……。」

「今年こそ返そう思ってたんやけどなぁ。」

 

しかし、本当の試練は、この翌年から始まるのでした。

 

(後編へ続く)

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筆者松本 親幸
  • 不動産キャリア29年
  • 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
個人的には今までの不動産業経歴において1,500件超のお取引に関わっております。
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若い時にはリフォームの仕事も経験済。
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