『売主さんの息子が「ようやく暑さもマシになった」と空き家を5年ぶりに見に来たら、脱出ゲーム付き実家査定になったの巻~』

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9月に入っても、まだまだ暑い。

 

それでも真夏の盛りに比べれば、

朝晩は少しだけマシになってきました。

 

そんな頃、空き家になっている実家を売却したい

というご相談をいただきました。

 

売主さんは88歳のお母さん。

現在は施設で暮らしておられます。

 

ご相談の窓口になったのは、65歳になる息子さんでした。

 

実家は息子さんの住まいから、

それほど遠い場所ではありません。

 

ところが、この家の中を見るのは

約5年ぶりだといいます。

 

「ようやく暑さもマシになったし、

そろそろ見に行かなあかんなと思って……。

 

けど正直、見るのが怖いわ」

 

その気持ち、分からんでもありません。

 

遠方の空き家なら、わざわざ出掛けた分、

「せっかく来たんやから確認しよう」となります。

 

ところが近いほど、「いつでも行ける」

「今日は暑いから来週でええか」と先送りしがちです。

 

しかし空き家は、「息子さんが来るまで、

今の状態で待っときますわ」とは言ってくれません。

 

人が見に行かない5年間も、

家だけは確実に年を取っていきます。

 

 

鍵は開いた。けれど玄関が開かない

 

査定当日、息子さんと一緒に現地へ向かいました。

 

外から見るだけでも、それなりに年季の入った家です。

しかし、古い家の査定は珍しくありません。

 

鍵さえあれば、まず中を確認できます。

 

息子さんが玄関の鍵を差し込みました。

カチャッ。

 

鍵は問題なく開きました。

 

ところが、ドアを引いても開きません。

 

もう一度押したり引いたりしてみますが、

びくともしない。

 

鍵を間違えているわけでも、

内側からチェーンが掛かっているわけでもありません。

 

原因は、建物の老朽化でした。

 

家が少し傾き、

玄関の枠にドアが引っ掛かっていたのです。

 

鍵は開いているのに、家には入れない。

この時点で、普通の実家査定ではなくなりました。

 

近所から脚立を借り、2階の窓から入ることに

 

 

玄関が駄目なら、

ほかの入口を探すしかありません。

 

そこで近所の方に事情を話し、

脚立を借りることになりました。

 

脚立を2階のバルコニーへ掛け、慎重に上ります。

 

今回、査定で最初に確認したのは、雨漏りでも傾きでもなく

「この脚立で2階まで届くか」でした。

 

何とかバルコニーへ到着し、窓に手を掛けてみると――。

 

開きました。

なんと窓の鍵が掛かっていません。

 

防犯上は困りますが、この日だけは助かりました。

「鍵、開いとって良かったわ……」

 

普段なら絶対に言わないような言葉が、

思わず口から出ます。

 

入れたのはええけど、今度は出られへん

 

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無事に2階の窓から家の中へ入りました。

 

これで内側から玄関を開ければ、

息子さんも普通に入ってこられます。

 

そう思ったのですが、

内側から押しても玄関ドアは開きません。

外から駄目なものは、中からでも駄目でした。

 

そこで次に目を付けたのが勝手口です。

 

勝手口を開けて、そこから出入りすればいい。

理屈としては簡単です。

 

しかし、その勝手口までたどり着けません。

 

室内には大量の家財が残り、通路をふさいでいました。

避けて、またいで、少しずつ動かしながら進みます。

 

まるで脱出ゲームです。

 

ようやく勝手口へたどり着きました。

「これで外へ出られる」

 

そう思ってドアに手を掛けました。

開きません。

 

長年動かしていなかったため、

勝手口のドアまで完全に固まっていたのです。

 

玄関も開かない。勝手口も開かない。

入ってきたのは2階の窓。

 

査定に来たはずが、

本当に脱出方法を考えなければならなくなりました。

 

最後の手段は、玄関ドアへのドロップキック

 

 

もう一度、玄関へ戻りました。

 

建物の傾きによって、ドアが枠へ強く食い込んでいます。

手で押したくらいではどうにもなりません。

 

こうなったら、最後は力技です。

 

玄関ドアに向かって――ドロップキック!

 

もちろん、プロレスラーのように両足をそろえて

宙を舞ったわけではありませんが、

気持ちとしては完全にドロップキックです。

 

ドン!

 

ようやく玄関ドアが動き、

外から息子さんが入れるようになりました。

 

近所から脚立を借り、2階の窓から入り、家財の迷路を突破し、

最後は玄関ドアへドロップキック。

 

5年ぶりの実家訪問が、

こうなるとは誰も想像していませんでした。

 

しかし、本当に開かなかったものは

玄関ドアではありませんでした。

 

弊社の買取価格で話はまとまった

 

何とか室内を確認し、建物の傾きや家財の量、

老朽化の状態などを踏まえて査定しました。

 

その後、弊社から買取価格を提示しました。

 

息子さんにも納得していただき、

価格や条件は折り合いました。

 

ここまで来れば、あとは売買手続きを進めるだけです。

 

ただし、この家の所有者は息子さんではありません。

施設で暮らす88歳のお母さんです。

 

息子さんが売却に賛成していても、

所有者本人に代わって勝手に家を売ることはできません。

 

そこで最後に、司法書士と一緒に

お母さんが暮らす施設を訪問しました。

 

売却の内容を理解されているか、

本当に売る意思があるのかをご本人に確認するためです。

 

 

ところが、お母さんは認知症と診断されており、

司法書士が売却の意思を確認することができませんでした。

 

そこで司法書士から、

手続きにストップがかかりました。

 

価格はまとまり、息子さんも売却を希望し、

買い手も弊社に決まっています。

 

それでも、お母さんの意思確認が

できなければ売買は進められません。

 

なお、「認知症と診断されたら必ず不動産を売れない」

という意味ではありません。

 

病名だけで一律に決まるのではなく、

ご本人が売却の内容や結果を理解し、

自分の意思で判断できる状態かどうかが重要になります。

 

今回は、その確認ができなかったのです。

 

成年後見人を立ててまで売る価格ではなかった

 

 

本人による売却が難しい場合、成年後見制度を利用して

手続きを進める方法が考えられます。

 

しかし、成年後見人は「この家を売るためだけに、

息子さんが自由に就任して、売れたらすぐ終了」という

簡単な制度ではありません。

 

家庭裁判所への申立てが必要で、選任後は

本人の財産管理や裁判所への報告なども伴います。

 

また、施設へ入る前に暮らしていた実家など、

本人の居住用不動産を成年後見人が売却する場合には、

原則として家庭裁判所の許可も必要です。裁判所の制度案内

 

息子さんは、今回の買取価格や必要になる手間などを考え、

成年後見人を立ててまで

今すぐ売却する物件ではないと判断されました。

 

そのため、この家については当分の間、

静観することになりました。

 

しかし、こちらが静観しても空き家は待ってくれません。

傾きや雨漏り、家財の劣化が進む一方で、

固定資産税や管理責任は残ります。

 

玄関は、最後に力ずくで開きました。

 

弊社の買取価格も折り合いました。

 

ところが、一番開けなければならなかった

「売却への扉」は、最後まで開かなかったのです。

 

空き家が近くにある人ほど、一度見に行ってください

 

 

「近いから、いつでも行ける」

 

この言葉ほど、空き家を長く放置させるものは

ないのかもしれません。

 

売るか、貸すか、残すかを今日決める必要はありません。

 

ただ、現在の状態を確認し、親御さんが

ご自身の意思を伝えられるうちに将来を話しておく。

 

この二つは、早過ぎて困ることがありません。

 

「涼しくなったら見に行こう」と思っているうちに、

また冬が来て、次の夏が来ます。

 

玄関から普通に入れるうちに、一度見に行ってください。

 

脚立とドロップキックが必要になってからでは、

少々遅いかもしれません。

 

よくあるご質問

 

Q1.親が認知症と診断されたら、親名義の家は絶対に売れませんか?

 

いいえ。

認知症という診断名だけで一律に決まるわけではありません。

 

売却の内容や結果を理解し、

ご本人の意思で判断できるかどうかが重要です。

実際の売却では、司法書士などが本人確認と意思確認を行います。

 

Q2.息子や娘が代わりに売買契約書へ署名できませんか?

 

家族であっても、所有者本人の意思を確認できない状態で、

当然に代わって売却できるわけではありません。

 

委任状さえ作ればよいという話でもありません。

成年後見制度などの検討が必要になる場合がありますので、

司法書士や弁護士などの専門家へご相談ください。

 

Q3.成年後見人を立てれば、すぐに実家を売れますか?

 

必ずすぐ売れるとは限りません。

家庭裁判所への申立てや審理があり、本人の居住用不動産に

当たる場合は、売却について家庭裁判所の許可も必要です。

 

売却の必要性や価格の相当性なども確認されます。

法務省の成年後見制度Q&A、大阪家庭裁判所の案内

 

筆者のひとり言

 

これまで数多くの古家や空き家を査定してきましたが、

玄関から入れず、2階から入り、最後は玄関ドアへ

ドロップキックした査定は、そう何度もありません。

 

けれど今回、一番印象に残ったのは開かなかった玄関ではなく、

価格までまとまりながら売却できなかったことでした。

 

空き家対策は、建物が傷む前だけではありません。

 

所有者ご本人が、自分の言葉で

「売ります」「残します」と言えるうちに考えることも、

大切な空き家対策なのだと思います。

 

※実際の相談事例をもとに、個人が特定されないよう

年齢や期間など一部を変更しています。

 

制度の扱いは個別事情によって異なります。

筆者松本 親幸
  • 不動産キャリア29年
  • 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
  • 宅地建物取引士
個人的には今までの不動産業経歴において1,500件超のお取引に関わっております。
どんな物件買取もお任せ下さい!

若い時にはリフォームの仕事も経験済。
売主様には査定時に買取価格を算出します!

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ワンちゃんと古い家が大好きな白髪交じりの私・松本が全てご対応いたします!

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