『読んでおいた方がいいですよ!名義人が住まなくなった家は早く売った方がいい話【不動産譲渡所得の税金】』
「空き家は傷むから、早く売った方がいいですよ」
今回は、そんな話ではありません。
もちろん誰も住まなくなった家は傷みます。
防犯面も心配ですし、固定資産税も毎年かかります。
でも今回お伝えしたいのは、
もっと直接的な**「お金の話」**です。
それも場合によっては、数十万円では済みません。
数百万円単位で変わってくる可能性がある話です。
だから、現在誰も住んでいない家を所有している方、
特に**「以前は名義人本人が住んでいたけれど、
今は施設や別の住居へ移っている」**という方には、
ぜひ知っておいていただきたいと思います。
■ お母さんが施設へ。家はそのまま残しました
以前、こんな査定相談がありました。
家の名義人はお母さん。
長年その家で暮らしていましたが、
高齢になり、施設へ入居することになりました。
娘さんは比較的近くに住んでいます。
そのため当初は、
「私がちょこちょこ見に行けるし、
急いで売らんでもええかな」という判断でした。
これは別に珍しい話ではありません。
むしろ弊社にご相談いただく空き家では、
非常によくあるケースです。
家の中には、お母さんの荷物もまだたくさん残っています。
季節物の布団、古い食器、アルバム、衣類……。
娘さん自身の荷物も少し置くようになり、
「まあ倉庫代わりにもなるし」
という感じで、そのまま所有していました。
■ 1年、2年……気がつけば3年以上
娘さんが近くに住んでいますから、
完全放置ではありません。
たまに家へ行く。郵便物を見る。
窓を開ける。掃除もする。
だから娘さん自身も、
「空き家を放ったらかしにしている」
という感覚ではなかったと思います。
ところが、そうこうしているうちに1年。
2年。そして3年……。
ある日、娘さんがテレビを見ていると、
空き家に関する番組が流れていたそうです。
空き家の防犯問題、不法侵入、火災、建物の老朽化……。
それを見て、
「やっぱり誰も住んでへん家を、
いつまでも置いとくのも怖いな」と思った。
お母さんが家へ戻って
生活する可能性も低くなっていました。
そこで、「そろそろ売ろう!」となったわけです。
ここまでは、ごく普通の話です。
ところが――。
不動産には**「そろそろ売ろう」では
遅くなることがある期限**があります。
■ 「お母さん、いつからここに住んでませんか?」
査定価格は、約2,000万円。
娘さんとしては、
思っていた以上の金額だったようです。
ところが不動産会社から聞かれました。
「ところで、お母さんが
この家に住まなくなったのはいつですか?」
娘さんが思い返します。
「施設に入ったんが……3年以上前ですね」
ここで初めて、
居住用財産の3,000万円特別控除
という制度の話を聞くことになります。
■ 「3,000万円控除」には期限があります
自分が住んでいたマイホームを売却した場合、
一定の要件を満たせば、譲渡所得から
最高3,000万円を控除できる特例があります。
重要なのは、以前住んでいた家の場合です。
国税庁では原則として、
「住まなくなった日から
3年を経過する日の属する年の12月31日まで」
に売却することを要件の一つとしています。(国税庁)
ここは、「空き家になってからピッタリ3年以内」
という意味ではありません。
たとえば2023年中に住まなくなった家なら、
原則として2026年12月31日までという考え方になります。
だから私は、空き家の査定では、
「いつから空き家になっていますか?」
ということも非常に重要だと思っています。
売却価格だけの問題ではないんです。
■ ところが、もう一つ問題が出てきました

そして不動産会社から、もう一つ質問されます。
「この家を買ったときの
売買契約書、残っていますか?」
「えっ?昔のやつですか?」
お母さんに聞くと、
「たしか2,800万円くらいで買ったと思うで」とのこと。
2,800万円で買った家。
現在の査定価格が2,000万円。
娘さんからすれば当然こう考えます。
「800万円も安く売るんやから、
利益なんか出てへんやん」
その感覚は分かります。
そこで実家に戻り、昔の書類を探します。
押入れ。タンス。机の引き出し。
書類ケース。固定資産税の納付書はある。
昔の保険関係の書類もある。
家電製品の古い保証書まで出てくる。
ところが――。
購入時の売買契約書がない。
何回探しても見つかりません。
「2,800万円で買った」というお母さんの記憶はある。
しかし、その取得価額を
確認するための資料が見当たらない。
ここが二つ目の問題でした。
■ 取得費が分からない場合「売却価格の5%」で計算することも
土地・建物の譲渡所得は、大まかにいえば、
売った金額 − 取得費 − 譲渡費用で計算します。
ただし建物部分については、実際の取得費を使う場合、
購入価格そのものではなく所有期間中の
減価償却費相当額を差し引く必要があります。
では、取得費が分からなかったらどうなるのか。
国税庁では、取得費が分からない場合、
売却金額の5%相当額を概算取得費として
計算できるとしています。
今回の家なら、
2,000万円 × 5% = 100万円。
お母さんは、
「2,800万円くらいで買った」
と記憶しています。
しかし取得費を証明できず、
仮に5%の概算取得費を使うことになれば、
取得費は100万円。
ここで数字だけ見ると、
話がガラッと変わってしまいます。
■ 2,800万円で買って2,000万円で売るのに税金!?
話を分かりやすくするため、長期譲渡所得に該当し、
その他の特例を使わず、
まず譲渡費用なども考慮しない単純計算をしてみます。
売却価格 2,000万円
そこから、
概算取得費 100万円を引く。
すると、
1,900万円
という大きな譲渡所得が計算上出てきます。
長期譲渡所得に対する税率は、
所得税15%、住民税5%を基本に、
所得税には復興特別所得税が加わります。
単純計算なら税額は、
約386万円。
もちろんこれは説明のための概算です。
実際の申告では、
仲介手数料など認められる譲渡費用を差し引きますし、
建物の取得費には減価償却の計算も関係します。
個別の税額は税務署や税理士への確認が必要です。
でも娘さんからしたら、
「ちょっと待って!2,800万円で買った家を
2,000万円で売るんですよ!?」ですよね。
ここが、不動産の譲渡所得税の
怖いところでもあります。
■ 売買契約書がない=即「5%」とは限りません!

ここは大事なので書いておきます。
購入時の売買契約書を紛失したから、
その瞬間に取得費が売却価格の5%になる
――という意味ではありません。
住宅ローン関係の資料、購入代金の支払いを
確認できる資料、当時の登記関係資料など、取得価額を
裏付けられるものが残っていないか、
まず確認するべきでしょう。
税務上どこまで認められるかは個別判断になりますから、
契約書が見つからない場合こそ、
税務署や税理士へ相談してください。
「お母さんが2,800万円って言うてます!」
だけで済ませてしまうのは危険です。
■ もし期限内に売っていたら?
ここで、今回の話を振り返ってみます。
お母さんが施設へ入った。
娘さんは近所だから管理できた。
荷物も置ける。
別に急いでお金が必要だったわけでもない。
だから、「とりあえず置いとこか」となった。
私は、この判断自体が間違いだったとは思いません。
家には思い出があります。
施設へ入ったからといって、
その翌日に家を売るような話でもありません。
でも――。
「売らない」と決める前に、
税金の期限だけは知っておいてほしかった。
そこなんです。
もし3,000万円特別控除の期限内に売却し、
その他の適用要件も満たしていたなら、
今回のようなケースでは結果が
大きく違った可能性があります。
3,000万円控除は、その名のとおり一定の要件を満たせば
譲渡所得から最高3,000万円を控除する制度だからです。
(国税庁)
■ 空き家には「建物の老朽化」とは別の時間があります
空き家というと、「雨漏りする」「庭の草が伸びる」
「家が傷む」「防犯上心配」といった話になりがちです。
もちろん、それも重要です。
でも不動産を売却する立場からすると、
もう一つ覚えておいてほしい。
税金にも時間があります。
建物は3年間で急激にボロボロにならないかもしれません。
不動産価格だって上がるかもしれません。
でも、税制上の期限は価格とは関係なくやってきます。
■ 名義人が家を出たら、この2つだけ確認してください

私は、「施設へ入ったらすぐ自宅を売りなさい」
と言いたいわけではありません。
売らずに残すという選択も当然あります。
ただし、名義人本人が住まなくなったら、
① いつ住まなくなったのか。
そして、
② 購入時の売買契約書など
取得価額を確認できる資料が残っているか。
この2つだけは早めに確認しておいてください。
そして将来的に売却する可能性があるなら、
3,000万円特別控除を検討できる期限が
いつまでなのかも確認しておいた方がいい。
「売るかどうか」は、
そのあと家族でゆっくり考えればいいんです。
知らずに期限を過ぎてしまうのと、
知ったうえで「今は売らない」と判断するのでは、
まったく意味が違います。
■ よくある質問

Q.施設へ入居したら、3年以内に絶対売らないとダメですか?
いいえ。売却する義務があるわけではありません。
今回お伝えしているのは、以前住んでいたマイホームについて
3,000万円特別控除を検討する場合の期限の話です。
適用には期限以外にも要件があります。
Q.3年を1日でも過ぎたらアウトですか?
単純な「転居日から3年後の日」が期限ではありません。
原則は住まなくなった日から3年を
経過する日の属する年の12月31日までです。(国税庁)
Q.売買契約書をなくしたら、必ず取得費は5%ですか?
そうとは限りません。
まず購入時の資料などから実際の取得価額を
確認できないか調べるべきです。
それでも取得費が分からない場合には、
売却金額の5%相当額を概算取得費とする方法があります。
Q.「2,800万円で買った」と本人が覚えていれば大丈夫?
記憶だけで税務上どう扱われるかを
自己判断するのは避けた方がいいでしょう。
取得価額を裏付ける資料を探し、分からない場合は
税務署や税理士へ相談するのが安全です。
筆者の独り言

空き家の査定をしていると、
「もう3年以上誰も住んでません」
という話、本当に珍しくありません。
家を売るタイミングというと、皆さんどうしても、
「今、不動産価格が高いか安いか」を考えます。
それももちろん大切です。
でも、「いつから名義人が住んでいないのか」
これも同じくらい大切な場合があります。
売るかどうか迷っている間にも、
時間は普通に過ぎていきます。
だから、売却するかどうか決めていなくても構いません。
一度、税金の期限だけ確認しておきましょう。
数年後、
「あの時知っとったらなぁ……」
とならないために。
※本記事は一般的な制度をもとにした解説です。
3,000万円特別控除の適用可否や取得費の認定、
実際の税額については個々の状況によって異なります。
最終的には税務署・税理士等へご確認ください。
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
- 宅地建物取引士
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