『1階は令和、2階は昭和!?3年前にリノベーションした長屋を査定したら、階段の先に別世界が待っていたぞ~』
先日、ある長屋の買取査定へ行ってきました。
外から見ると、
築年数はそれなりに経っていそうです。
長屋らしい細い間口。年季の入った外壁。
屋根も「私は昨日今日ここに建った家ではありません」と、
堂々たる貫禄を見せています。
正直に言えば、玄関を開ける前の私の頭には、
昔ながらの畳の部屋と古い台所が浮かんでいました。
ところが、売主さんが玄関の鍵を開けた瞬間――。
「えっ、メッチャきれいやん」
思わず私は言いました。
「外観と中の印象が全く違いますね~」
玄関を入ったら、そこだけ令和やった

1階は3年前にリノベーションされていました。
床は明るいフローリング。壁紙も白く、水回りもきれい。
古い長屋によくある薄暗さがなく、
玄関から室内を見渡した印象は上々です。
「これは、よう手を入れはったなあ」
外観との落差もあって、
実際以上にきれいに感じたのかもしれません。
古い家の査定では、玄関へ入った瞬間に
少し気持ちが沈むことがあります。
雨漏りの匂い。床のフワつき。大量の家財。
そして、どこからともなく現れる、
いつの物か分からない漬物の瓶。
ところが、この家の1階にはそれがありません。
外は昭和、中は令和。
「ええ意味で裏切られましたわ」
そんな気分で1階を確認していました。
売主さんの「2階は全くさわってませんので~」

1階の確認を終え、いよいよ2階です。
階段の前で、売主さんが何気なく言いました。
「2階は全くさわってませんので~」
その言葉を聞いても、私は特に驚きませんでした。
古い畳が残っているとか、昔の砂壁のままとか、
せいぜいその程度やろうと思ったのです。
1階がこれだけきれいなら、2階は未改装でも、
まあ現状で使えるくらいではないか。
このときの私は、まだ甘かった。
「全くさわっていない」という言葉の“全く”を、
完全に見くびっていました。
階段を一段、また一段と上がります。
下から見上げた先は、少し暗い。
そして2階へ顔を出した瞬間――。
別世界が待っていました。
1階から、50年ほどタイムスリップしました!

まず目へ飛び込んできたのは畳です。
売主さんが「2階は全くさわってません」と
言っていたとおり、見事なくらいさわられていません。
色あせ、傷み、黒ずみ。
その姿は、見るからに築50年・・以上。
畳だけではありません。
部屋全体が、
「昭和から一歩も動いてません」
と言っています。
しかし、古いだけなら驚きません。
問題は上でした。
天井を見ると、板がベローンとめくれています。
少しめくれているのではありません。
「もう私は天井板として働くのを辞めました」
と言わんばかりに、だらしなく垂れ下がっています。
そして雨漏りの跡が、
あちらにもこちらにも広がっていました。
これは、昔に一度だけ漏れた跡ではない。
現役です。
雨が降れば、今も元気に漏れてくるタイプです。
天井の向こうから、お日さんが見えとるがな

さらによく見ると、屋根の一部から光が差しています。
照明ではありません。
自然光です。
天井を見上げながら、私は心の中で突っ込みました。
「お日さん見えとるがな……。そら雨漏るわ」
普通、室内で太陽が見えるとすれば、
窓か天窓からです。
ところがこの家は、天窓を付けた覚えもないのに、
屋根の隙間から天然の採光が入っています。
晴れの日は明るい。
雨の日は濡れる。
採光と雨漏りがセットになった、
何とも困った自然派住宅です。
売主さんは「2階は全くさわってませんので~」と
おっしゃいました。
確かに、その説明に間違いはありません。
間違いはありませんが、
できれば階段を上がる前に、もう一言ほしかった。
「屋根の向こうに空も見えますので~」と。
「2階はちょっと、もったいないですね~」

こういうとき、不動産屋も言葉を選びます。
売主さんが大切にしてきた家です。
いきなり「これはアカン」とは言いません。
そこで私の口から出た言葉は、
「2階はちょっと、もったいないですね~」でした。
しかし心の中では、
「もったいないでは収まらへん。
屋根からお日さん入っとるがな」
と叫んでいました。
1階を3年前にリノベーションしたとき、
2階の内装まで全部きれいにする必要は
なかったかもしれません。
けれど、屋根と雨漏りは別です。
水回りや床をきれいにしても、
上から雨水が入り続ければ、建物全体を傷めます。
天井や畳だけでなく、
柱、梁、壁の内部まで腐食している可能性があります。
雨漏りは、見た目だけの問題ではありません。
長屋の場合は屋根が隣家と連続していることも多く、
補修範囲や工事方法も慎重に考える必要があります。
リフォーム費用を掛けた分だけ査定価格は上がる?

売主さんの中には、300万円掛けてリフォームしたら、
査定価格も300万円上がると思っている方がいます。
残念ながら、必ずしもそうではありません。
買主がそのまま使える工事なら、
査定で評価できることもあります。
しかし、1階がピカピカでも、2階と屋根に
大きな補修が必要なら、買取後に掛かる費用を
見込まなければなりません。
特に雨漏りは、天井をふさいで終わりではありません。
どこから水が入り、どこまで傷んでいるのか。
屋根へ上がり、場合によっては天井や壁を開けて
初めて分かることもあります。
見える場所をきれいにした金額より、
見えない場所を直す金額のほうが高い――。
古家では珍しくない話です。
外観と印象が違ったのは、1階だけでした

玄関へ入ったとき、私は売主さんに言いました。
「外観と中の印象が全く違いますね~」
あの言葉は、決して間違いではありませんでした。
ただし、それは1階に限った話です。
階段を上がり、古い畳、めくれた天井、雨漏り、
そして屋根から差し込むお日さんを見た瞬間、
外観と室内の印象は見事に一致しました。
1階は令和。
2階は昭和。
そして屋根だけは、ほぼ青空教室でした。
家の査定は、玄関を入った
第一印象だけでは決められません。
この家は、階段を上がって初めて、
本当の築年数を名乗ってきたのです。
結局、弊社では買い取れませんでした
私は会社へ戻ってから、1階のきれいなリノベーションと、
2階・屋根に必要な補修費用の両方を考えて
買取価格を算出しました。
しかし、どうしても2階のイメージが強過ぎる。
古い畳、雨染み、ベローンと垂れた天井板。
そして、屋根の向こうから顔を出していたお日さん。
買取後にどこまで補修が必要になるか分かりません。
雨漏りの原因だけでなく、柱や梁まで傷んでいれば、
費用はさらに膨らみます。
そのリスクを考えると、弊社が提示できる価格は、
売主さんの希望とは合いませんでした。
残念ながら、今回はご縁なしです。
ところが後日、売主さんから連絡がありました。
別の不動産会社が、弊社より高い価格で
買い取ってくれることになったそうです。
それなら、それが一番です。
不動産会社によって、改装後の売り方、工事費、
得意とする物件、どこまでリスクを取れるかは違います。
弊社に合わなかった物件が、
他社にはピッタリ合うこともあります。
私は2階のイメージが強過ぎて、
弊社の買取価格とは合わず……。
よくあるご質問

Q1.1階だけリフォームしていても査定で評価されますか?
工事内容や状態によっては評価できます。
ただし、屋根、基礎、柱、雨漏りなどに大きな問題があれば、
必要な補修費用も査定へ反映されます。
掛けた工事費が、そのまま査定価格へ
加算されるわけではありません。
Q2.雨漏りしている長屋でも売却できますか?
売却は可能です。
ただし、雨漏りの事実を隠さず、
不動産会社や買主へ伝える必要があります。
現状のまま買い取る会社もありますので、
先に高額な修理をする前の査定をおすすめします。
Q3.雨漏り跡へ新しい壁紙を張れば分からなくなりますか?
一時的に見えなくなっても、原因を直さなければ
再び染みが出る可能性があります。
売却時に雨漏りを把握していたのに伝えなければ、
後のトラブルにもつながります。
表面を隠すより、まず原因の確認が大切です。
筆者のひとり言

古い家をきれいに使おうとすることは、
もちろん良いことです。
ただ、リフォームの順番を間違えてはいけません。
壁紙や床より先に、雨が入らないこと。
家が傾いていないこと。
土台や柱が傷んでいないこと。
人間も家も、化粧をする前に健康診断が必要です。
今回の家は、
1階だけ見れば見事な若返りでした。
ところが階段を上がった瞬間、
実年齢が一気に戻ってきた。
弊社では価格が合いませんでしたが、
最後は他社で無事に買取成立。
売主さんにとって良い結果になったのなら、
査定へ行った私も少しは役に立った――
ということでしょうか?
※実際の査定事例をもとに、個人や物件が
特定されないよう一部を変更しています。
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
- 宅地建物取引士
どんな物件買取もお任せ下さい!
若い時にはリフォームの仕事も経験済。
売主様には査定時に買取価格を算出します!
家の買取や売却のご依頼・ご相談は
ワンちゃんと古い家が大好きな白髪交じりの私・松本が全てご対応いたします!

