『80歳の親が子供の近くに引っ越す予定だが・・【後編】』梅田は住めるけど高すぎる!?80代夫婦が出した意外な結論
前編のおさらい
京都府北部、天橋立近くで暮らす80代夫婦。
子供たちから「大阪へ来ないか」と誘われ、
まずは長男の住む中央区島之内を視察した。
外国人観光客の多さ。
眠らない街。
巨大マンション。
人、人、人。
おじいちゃんは終始圧倒されっぱなしだった。
そして長女が待つ北区鶴野町へ向かうことになった。
しかし、この時のおじいちゃんはまだ知らない。
本当のカルチャーショックはこれから始まることを。
梅田到着5分で心が折れそうになる
翌朝。
地下鉄を降りる。
改札を出る。
その瞬間だった。
おじいちゃん。
「・・・」
おばあちゃん。
「どうしたん?」
「出口どこや」
まだ改札を出て30秒である。
周囲には無数の案内板。
地下街。
連絡通路。
商業施設。
人の流れ。
おじいちゃんの脳は処理を拒否した。
「これ地上出られるんか?」
長女が笑う。
「慣れたら簡単やって」
「慣れる前に遭難するわ」
ようやく地上へ出る。
目の前に広がった景色。
高層ビル。
巨大スクリーン。
ガラス張りの建物。
行き交う人々。
おじいちゃん。
「未来やん」
長女。
「大げさやな」
「いや未来や」
「ワシの知ってる大阪ちゃう」
グラングリーン大阪で完全に混乱
長女がまず案内したのはグラングリーン大阪。
おじいちゃん。
「ここ公園なん?」
「そうやで」
「嘘つけ」
また始まった。
芝生。
ベンチ。
カフェ。
オフィス。
ホテル。
商業施設。
全てが一体化している。
「公園いうたらブランコやろ」
「砂場やろ」
「ラジオ体操やろ」
長女。
「昭和で止まっとるやん」
ベンチへ座る。
周囲を見る。
犬を散歩する人。
仕事をしている人。
読書をしている人。
外国人観光客。
家族連れ。
おばあちゃんが言った。
「ここはちょっとええな」
「なんばより落ち着く」
おじいちゃんも頷いた。
「確かに」
「息苦しさは少ないな」
おじいちゃん、サッカー解説者になる
歩きながら周囲を見渡す。
すると突然、おじいちゃんが言い出した。
「分かった」
「何が?」
「なんばと梅田の違いや」
長女もおばあちゃんも興味津々。
「聞こか」
おじいちゃん。
「なんばはアジア予選や」
「は?」
「梅田は欧州チャンピオンズリーグや」
意味が分からない。
しかし本人は真剣だ。
「なんばは勢いがある」
「エネルギーもある」
「色んな国が混ざっとる」
「でも梅田は何か洗練されとる」
長女。
「なるほどな」
おばあちゃん。
「全然分からん」
おじいちゃんは続けた。
「ワシな」
「昨日ホテルでワールドカップ見てたんや」
「それで分かった」
「何がや」
「なんばはアジア代表選抜」
「梅田は欧州代表選抜」
おばあちゃん。
「誰もそんな話してへん」
阪急百貨店でおばあちゃん発狂寸前
長女は百貨店へ案内した。
地下食品売場。
おばあちゃんの目が輝く。
「美味しそうやなぁ」
しかし数秒後。
固まった。「高っ!!」
声が響く。
長女。
「お母さん静かに」
「卵サンドこんなするん?」
「弁当なんぼやこれ」
「ケーキ一個で晩ご飯いけるやん」
おじいちゃんも参戦。
「このメロン誰が買うんや」
「王様か?」
長女。
「普通の人も買う」
「嘘つけ」
賃貸物件を見てさらに驚く
午後。
長女が候補の賃貸を見せる。
駅徒歩5分。
築浅。
設備充実。
確かに良い。
しかし。
家賃を聞いた瞬間。
おばあちゃん。「え?」
もう一回聞く。「え?」
三回目。
「年間ちゃうん?」
月額だった。
おじいちゃん。
「待て待て待て」
「この金額払うんやったら」
「天橋立で家建つぞ」
長女。
「今はそんな時代ちゃうねん」
便利さは圧倒的だった
とはいえ。
二人も認めざるを得なかった。
病院が近い。
スーパーが近い。
駅が近い。
銀行も近い。
役所も近い。
何より。娘が近い。
夜中に何かあっても。
30分以内に来られる。
それは大きかった。
地方ではそうはいかない。
おじいちゃんも真面目な顔になる。
「安心感はあるな」
長女。
「やろ?」
最終家族会議
その夜。
長男夫婦も合流した。
全員集合である。
おじいちゃん。
おばあちゃん。
長男。
長女。
そして孫たち。
長男。
「正直どうやった?」
おじいちゃん。
「疲れた」
全員爆笑。
おばあちゃん。
「でも便利やな」
長女。
「ほらな」
おじいちゃん。
「ただな」
「全部大阪にせんでもええ気がする」
長男。
「どういうこと?」
おじいちゃん。
「天橋立捨てる気はない」
静かになった。
二人が出した意外な結論
おじいちゃんは続けた。
「ワシらな」
「海が好きなんや」
「山も好きなんや」
「近所の人も好きなんや」
「でもお前らが心配してくれるんも分かる」
「病院が近い安心感も分かった」
「だからな」
「いきなり完全移住はやめる」
「まずは大阪で短期賃貸借りる」
「行ったり来たりしてみる」
長女。
「二拠点生活か」
長男。
「それええかもな」
おばあちゃんも頷いた。
「実際住んでみんと分からんし」
「合わんかったら戻ればええ」
家は不動産ではなく人生そのもの
帰りの特急。
窓の外には田んぼが広がる。
少しずつ海が見えてくる。
おじいちゃんがぽつりと言った。
「やっぱり落ち着くな」
おばあちゃんも笑った。
「空が広い」
「静かや」
今回の大阪視察で分かったこと。
それは梅田が良いとか。
なんばが悪いとか。
そういう話ではなかった。
高齢者の住み替えとは、
家を変える話ではない。
人生の最終章をどこで過ごすかを考える話なのだ。
便利さを取るのか。
慣れ親しんだ土地を取るのか。
家族との距離を取るのか。
思い出を取るのか。
正解は人それぞれ。
だからこそ焦って決める必要はない。
まずは見てみる。
住んでみる。
感じてみる。
それが一番大切なのかもしれない。
おじいちゃん最後の名言
帰宅後。
近所のおじさんに聞かれた。
「大阪どうやった?」
おじいちゃんは少し考えて答えた。
「なんばはアジア選抜」
「梅田は欧州選抜」
「ほな天橋立は?」
おじいちゃん。
胸を張って言った。
「天橋立はワシのホームスタジアムや」
おばあちゃん。
「まだサッカーの話しとるんか」
こうして80代夫婦の大阪移住計画は、
一旦“保留”となった。
しかし子供たちの近くで暮らす未来も、
少しだけ現実味を帯び始めていた。
そして来年もまた、おじいちゃんは大阪へ行く。
今度は迷子にならないように。
たぶん。 😄
― 完 ―
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
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