【売主さん必見!】告知義務違反ってご存じですか?一般の人に仲介で売る場合はご用心を!【後編】
前編では、弊社が実際に買い取った
一戸建てのお話をご紹介しました。
売主さんからいただいた告知は、
「雨漏り:なし」
査定した日にも雨漏りは確認できませんでした。
ところが買取後。
雨が降ったら――
雨漏り全開中!
「どこが“なし”やね~ん!」
というお話でした。
弊社は不動産業者です。
そら困ります。修理代もかかります。
「先に言うといてや~」とは思います。
でも、まあ何とかします。
問題はここから。
これが不動産会社の買取ではなく、
仲介で一般の方が購入した家だったらどうでしょう?
念願のマイホーム!……からの雨漏り
たとえば若いご夫婦が
中古住宅を購入したとしましょう。
内覧した日は晴天。
家族みんな気に入った。
ご主人、
「ここにテレビ置こうか!」
奥さん、
「この部屋、子ども部屋にできるな」
多少古いけど、価格も予算内。
住宅ローンも無事承認。
売買契約を締結して、残代金を支払って、ついに引渡し。
念願のマイホームです!
ところが引っ越して1か月後。
大阪、大雨。
ポタッ。ご主人、「ん?」
ポタポタポタ……。奥さん、「ちょっと待って……」
ザーッ!「雨漏りしてるやないか~い!」
そら怒ります。
「こんなん聞いてへんで!」
買主さん「聞いてません!」仲介会社「うちも聞いてません!」

当然、買主さんは仲介会社へ電話します。
「雨漏りしてます!」
仲介会社もビックリ。
売主さんから提出された告知を見る。
そこには、「雨漏り:なし」と書いてある。
仲介会社から売主さんへ確認します。
「以前、雨漏りしたことはありませんでしたか?」
売主さん。「いやぁ……」
「まあ……」「大雨の時にちょっとだけ……」
仲介会社、「それ、聞いてませんけど!」
買主さん、「私も聞いてません!」
…………。
誰が知っていたのでしょう。
売主さん、「…………ワシ?」
そうです。
あなただけ知ってましたから!
ここからです。
「修理費どうするんですか?」
「いつから雨漏りしてたんですか?」
「売る前から知ってましたよね?」
「告知書には“なし”って書いてますよね?」
売主さん、「いや、でも古い家やで……」
買主さん、「そんな話してません!」
こうなると、揉めに揉めまっせ!
「でも契約不適合責任なしで売ったやん!」

そして中古住宅の売買では、
売主が個人の場合などに、契約不適合責任について
免責する特約を設けることがあります。
そこで売主さん。
「ちょっと待って!」
契約書を持ってくる。
ペラペラペラ……。
「あった!」
『売主は契約不適合責任を負わない』
売主さん、「ほら!ワシ、責任ないやん!」
……。
残念ながら、
それで全部終わるとは限りません。
現在の民法572条には、
担保責任を負わない旨の特約をした場合でも、
売主が知りながら告げなかった事実については、
その責任を免れることができないという規定があります。
ここ、売主さんにはぜひ知っておいてほしいところです。
「契約不適合責任なし」と、
「知っている不具合も言わなくていい」
は同じ意味ではありません。
実際に裁判になっています!しかも雨漏り!

「そんな大げさな。雨漏りくらいで裁判になるん?」
と思った方。
なっています。
今回のコラムにピッタリすぎる裁判例があります。
札幌地方裁判所の平成8年5月27日判決です。
築6年の中古住宅を、土地建物合わせて
6,450万円で購入した事例でした。
引渡し後、2階和室で雨漏りが発生。
調べてみると、壁などに濃いシミがあり、
屋根にも補修した形跡がありました。
そして売主さん。
実は――雨漏りがあることを知っていた。
ところが媒介業者にも買主にも知らせず、
売却していたのです。
しかもこの契約には、当時の瑕疵担保責任について、
引渡し後2か月という期間の特約がありました。
雨漏りが判明したのは、その期間を過ぎた後。
売主さん側からすれば、
「もう期間過ぎてるやん」
と言いたくなるところです。
ところが裁判所は、売主が雨漏りを知りながら
秘して売却したことなどから、その特約によって
責任を免れることはできないと判断しました。
※平成8年の裁判なので、
現在の「契約不適合責任」ではなく、
当時の「瑕疵担保責任」の事例です。
そして仲介会社はどうなった?

ここが今回の記事では、かなり重要です。
買主さんからすれば、
「不動産会社も間に入ってたんやから、
不動産会社にも責任あるんちゃうの?」
と思うかもしれません。
ところがこの裁判例では、
媒介業者については、雨漏りの有無について
特段の調査をしていなかったとしても、
注意義務違反があったとはいえないと判断されています。
もちろん、これですべての仲介会社が
責任を負わないという意味ではありません。
仲介会社が不具合を知っていた。
雨漏りを疑わせる事情を把握していた。
それなのに必要な説明をしなかった。
そんな事情があれば話は別です。
ただ、この裁判例を見ると分かります。
売主さんが、
「不動産屋も入ってるんやから、
何かあったら不動産屋が何とかしてくれるやろ」
と思っていたら危ない。
仲介会社、
「いや……弊社も聞いてませんでした」
買主さん、
「じゃあ誰が知ってたんですか?」
…………。
売主さん。「またワシ!?」
そういうこともあり得るんです。
だったら最初から「雨漏りしてます」でええんです・・

ここまで読むと、
「古い家なんか怖くて売られへんやん!」
と思うかもしれません。
違います。
不具合がある家を売ったらダメという話ではありません。
雨漏りしている。
シロアリ被害があった。
床が沈む。
給排水に不具合がある。
古い家なら、いろいろあります。
それなら、
「大雨の時、この辺から雨漏りします」
と言ってください。
われわれ不動産会社は、
「なるほど」
「一度屋根を見てもらいましょうか」
「修理して売ります?」
「現状のまま説明して売りましょうか?」
「それなら業者買取も検討しましょうか?」
と考えられます。
買主さんだって、最初から説明を受けて、
「雨漏りはあるけど、この価格なら買います」
という判断ができます。
中古住宅では、専門家による既存住宅状況調査を
活用する仕組みもあり、宅建業者には媒介契約時に
その制度について説明することが求められています。
知って買うのと、知らずに買うのでは全然違う。
ここなんです。
雨漏り以外も「これくらい」は危ないで!

これは雨漏りだけの話ではありません。
たとえば、
「昔シロアリ出たけど駆除したからええやろ」
「床ちょっと沈むけど昔からやし」
「隣と境界でもめたけど、今は何も言ってこんし」
「家の中で親父が亡くなったけど、病死やし」など。
全部を一律に買主へ告知しなければならない、
という意味ではありません。
特に「人の死」については、国土交通省がガイドラインを
定めており、自然死や日常生活上の不慮の死については、
特殊清掃が行われた場合等を除いて原則として
告げなくてもよいと整理されています。
一方、買主から尋ねられた場合などには別の扱いになります。
(国土交通省)
だからこそ、
売主さん自身で決めんでええんです。
「これ、言わなあかん?」
「こんなんまで関係ある?」
「昔のことやけど……」
全部、不動産会社に言ってください。
そこから、
「これは買主さんにも説明しましょう」
「これはこう書きましょう」
「これは調査してみましょう」と考えたらいい。
「遠くの不動産屋なら分からんやろ」は、やっぱり危ない

前編でも書きましたが、
弊社は大阪市内の不動産会社です。
少し離れた地域から査定依頼をいただくと、
「なんで地元の会社じゃなく弊社なんやろ?」
と思うことがあります。
そして現地へ行ったら、
「なるほど……」となることがある。
でも、
「遠くの不動産屋なら分からんやろ」
と思っても、意外とそうはいきません。
査定が終わって外へ出る。
すると近所のおばちゃん。
「兄ちゃん、不動産屋さん?」
「はい」
「そこ売るん?」
「いや、まだ……」
「そこの家なぁ……」
まだ何も聞いてへん!(笑)
ご近所情報網は侮れません。
不動産会社は遠方から来ても、
家は地元から動きませんからね。
Q&A 売主さん、こんな場合はどうする?
Q.10年前に雨漏りしました。修理してから一度も漏っていません。
まず不動産会社には伝えてください。
「修理済みだから黙っておこう」と自己判断せず、
いつ・どこで発生し、どんな修理をしたのか
分かる資料があれば、それも見せてもらった方が安心です。
Q.契約不適合責任なしで売却する予定です。それでも伝えるの?
伝えてください。
免責特約があれば何を隠しても責任を免れる、
という制度ではありません。
民法572条には、売主が知りながら告げなかった
事実については責任を免れない旨が定められています。
Q.何を告知すればいいのか自分では分かりません。
それでいいんです。
分からないから不動産会社に全部話してください。
「これは関係ないかもしれんけど……」
という話ほど、われわれは聞いておきたい。
筆者の独り言
前編から長々と書いてきましたが、
結局言いたいことは一つだけです。
売主さん。
家の悪いところを言ったからといって、
売れなくなるわけではありません。
雨漏りしているなら、
それを分かったうえで売却方法を考えればいい。
修理する。
そのまま説明して売る。
価格に反映する。
不動産会社に買い取ってもらう。
方法はいろいろあります。
一番怖いのは、
「知ってたけど、言わんでもええと思ってました」
これです。
売却前なら、「雨漏りしてます」
の一言で済んだ話が、引渡し後なら、
買主さん、「聞いてへん!」
仲介会社、「うちも聞いてへん!」
売主さん、「契約不適合責任なしちゃうの?」
……。
揉めに揉めまっせ!

今回、弊社が買い取った家は、
告知:「雨漏りなし」
↓
雨が降る。
↓
雨漏り全開中!
弊社買取だったから、まだ何とかします。
でも一般の方への仲介売却なら、同じようにはいきません。
だから売主さん。
「これくらい言わんでもええやろ?」
と思った時ほど――
言うといてください!
言わなくてもいいことなら、
その後に不動産会社と一緒に判断したらええんです。
「雨漏りなし!」からの
「雨漏り全開中!」だけは、ほんま勘弁してや~!
――おしまい。
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
- 宅地建物取引士
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