【大阪ならでは】長屋・連棟の空き家が 「1軒だけ地獄」になる理由 ――現場経験と地名で読み解く、大阪不動産のリアル――

こんにちは。
こちらは不動産の現場から見た大阪特集です。
大阪の住宅地、とくに下町エリアを歩いていると、**なぜか「1軒だけ明らかに様子のおかしい家」**に出会うことがあります。
両隣は人が住んでいる。
洗濯物も干され、夜には明かりもつく。
――しかし、真ん中の1軒だけが空き家。
屋根は傾き、壁にはツタ、ポストは封筒でパンパン。
実はこれ、大阪特有の「長屋・連棟住宅」に
起きやすい構造的な問題なのです。
■ そもそも「長屋・連棟住宅」とは?
まずは前提から整理しましょう。
● 長屋・連棟住宅の基本構造
- 壁を共有して複数戸が横に連なる
- 戦前〜高度経済成長期に大量建築
- 特に大阪市内に集中

● 大阪で特に多いエリア
- 生野区
- 西成区
- 平野区
- 東住吉区
これらの地域では、**長屋が住宅街の
「標準」**として今も残っています。
■ なぜ「1軒だけ地獄」になるのか?
ここからが本題です。
なぜ、1軒だけが取り残され、
地獄のような状態になるのでしょうか。
【理由①】壊したくても「壊せない」
長屋・連棟の最大の特徴は
**「単独で解体できない」**という点です。
● よくある誤解
「空き家なら、壊したらええやん」
――残念ながら、それができないケースが非常に多い。
壊せない理由
- 壁を共有している
- 隣家の構造に影響が出る
- 単独解体=隣家の同意が必要
実際、城東区であった事例では、
右隣は賃貸、左隣は高齢の持ち家。
誰一人として「同意書」に判を押してくれず、
10年以上そのまま放置されていました。

【理由②】売ろうにも「買い手が極端に少ない」
次に問題になるのが、売却です。
● 長屋空き家の買い手事情
| 項目 | 一般戸建 | 長屋・連棟 |
|---|---|---|
| 住宅ローン | 組みやすい | 組みにくい |
| 建て替え | 可能 | 原則不可 |
| 資産価値 | 比較的安定 | 伸びにくい |
| 買い手層 | 広い | 極端に限定 |
特に東大阪市や八尾市では、
「内覧は来るが、話が進まない」
というケースが非常に多く見られます。
【理由③】空き家になると「劣化スピードが異常」
アナウンサー的に、ここは強調します。
長屋の空き家は、劣化が早い。
理由は明確です。
- 片側・両側から湿気を受ける
- 風が抜けない
- 雨漏りが横に広がる

旭区の現場では、1軒の雨漏りが、
隣家の壁まで侵食していました。
結果どうなるか。
「空き家1軒のせいで、両隣から苦情」
これが、**「1軒だけ地獄」**の始まりです。
【理由④】近所トラブルの“矢面”に立たされる
空き家が長屋の中にあると、
問題は所有者に集中します。
● よくある近隣トラブル
- ゴミの不法投棄
- 雑草・害虫
- 猫の住処化
- 防犯不安
住之江区では、町内会から「早く何とかしてくれ」と
名指しで連絡が来たケースもありました。
【理由⑤】相続で「誰も決断しない」
最後に、最も深刻な理由です。
長屋の空き家は、相続と非常に相性が悪い。
● よくある相続パターン
- 名義は親のまま
- 兄弟姉妹で共有
- 全員「要らない」
しかし、
- 売る → 手続きが面倒
- 壊す → 同意が取れない
- 放置 → 問題が増える
結果、誰も動かず、1軒だけ地獄化します。

■ 経験談:平野区の「真ん中だけ空き家」
ここで、実際の現場経験をご紹介します。
場所は平野区。
5軒連なる長屋の、真ん中1軒だけが空き家でした。
- 放置期間:約18年
- 相続人:兄弟4人
- 解体不可
- 売却希望価格:相場の1.5倍
結果――8年間、買い手ゼロ。
最終的に価格を下げ、現状のまま引き取られましたが、
「もっと早く動いていれば…」
という言葉が、今も忘れられません。

■ なぜ「大阪ならでは」なのか?
東京や他県にも長屋はあります。
しかし大阪は、
- 数が多い
- 密集度が高い
- 下町文化が根強い
この3点が重なり、問題が表に出やすいのです。
■ まとめ
ここまでお伝えしてきた通り、長屋・連棟の空き家は
「空いているだけ」では済まない不動産です。
特に大阪では、1軒だけ放置された瞬間から、
その家は“地獄の当事者”になります。

■ 不動産売買等でのよくある質問
長屋の空き家、売却は可能ですか?
可能ですが、
条件整理と現実的な判断が不可欠です。
解体すれば解決しますか?
単独解体は難しく、隣家との調整が必要です。
放置するとどうなりますか?
劣化・近隣トラブル・資産価値低下が同時進行します。
■ 最後に
長屋・連棟の空き家は、
時間が経つほど、選択肢が減る不動産です。
大阪でこのタイプの物件をお持ちなら、
「そのうち」ではなく、**「今どうするか」**を
考えることが、唯一のリスク回避だと言えるでしょう。

