【長編】『「ふ~ん。」だらけの話。ある家の案内希望夫婦…。不動産的“仮面夫婦”とはいかに!?』 ~家の購入希望者を案内している営業を大阪のおばちゃんが解説!~

~家の購入希望者を案内している営業を大阪のおばちゃんが解説!~

 

 

 

不動産営業をしていると、いろんなお客さんに出会います。

 

玄関を開けた瞬間に、

 

「わあ、きれい!」

「このキッチン、めっちゃええやん!」

「ここにソファー置けるな!」

 

と、こちらが何も説明してへんのに

勝手に話が進んでいくご夫婦もおられます。

 

こういうお客さんは分かりやすい。

 

営業マンも調子に乗って、

 

「この窓からの風通しもいいんですよ!」

「収納も多いですよ!」

と、聞かれてもいないことまで元気に説明できます。

 

反対に、玄関へ入って三十秒ほどで、

「ちょっと違いますね」と言う人もいます。

 

いや、まだ玄関やで。

リビングどころか、靴も脱ぎ切ってへんがな。

 

まあ、そういう分かりやすいお客さんは、

営業マンにとってはありがたいんです。

 

問題は、何を考えているのか

サッパリ分からんお客さんです。

 

 

今回登場するのは、

家を初めて見に行くという購入希望のご夫婦。

 

そして、そんなご夫婦をご案内するのは、

不動産営業歴一年半の若手営業マンです。

 

一年半。

本人からすれば、もう新人ではない。

 

案内もできる。

物件説明もできる。

住宅ローンの大まかな話もできる。

 

お客さんが気に入っているか、

そうでないかも、顔を見れば少しは分かる。

 

……と、本人は思っています。

 

本人は、そこそこお客さんを見る目が

ついてきたと思っています。

 

今日は初めて家を見に行くご夫婦。

分からないことも多いはず。

 

それなら自分が丁寧に教えてあげよう。

 

若手営業マンは、なかなかのやる気で

待ち合わせ場所へ向かいました。

 

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最初の家から始まった「ふ~ん。」

 

ご夫婦と合流し、一軒目の中古住宅へ向かいました。

 

初めての内覧と聞いていたので、

営業マンは玄関先から丁寧に説明します。

 

「こちらは最寄り駅から徒歩約10分です」

 

ご夫婦は外観を見上げながら、

「ふ~ん。」

 

「前面道路はこのくらいの幅があります」

「ふ~ん。」

 

「車も一台駐車できます」

「ふ~ん。」

 

家の中へ入ります。

「こちらがリビングです。約十六帖あります」

「ふ~ん。」

 

「キッチンは数年前に交換されています」

「ふ~ん。」

 

「南向きなので、日当たりも悪くないですよ」

「ふ~ん。」

 

 

まだ一軒目です。

 

営業マンも最初は気にしていません。

初めて家を見るんやから緊張してるんやろ。

 

何を聞いたらいいのかも分からんのかもしれへん。

 

ところが、どの部屋へ行っても同じです。

 

玄関を見ても「ふ~ん」。

リビングを見ても「ふ~ん」。

 

お風呂を見ても「ふ~ん」。

収納を開けても「ふ~ん」。

 

床下収納まで開けて見せても「ふ~ん」。

 

営業マンは、だんだん分からなくなってきました。

 

ええ「ふ~ん」なのか。

悪い「ふ~ん」なのか。

 

興味のある「ふ~ん」なのか。

もう帰りたい「ふ~ん」なのか。

 

「ふ~ん」にも、もうちょっと種類をつけてくれ。

 

 

せめて声の高さだけでも変えてくれ。

 

けれどご夫婦の「ふ~ん」は、

毎回ほぼ同じ音程です。

 

感情の波が瀬戸内海より穏やかです。


二軒目でも、やっぱり「ふ~ん。」

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一軒目を出て、次の家へ向かいます。

 

車の中でも会話はあまり弾みません。

 

営業マンが聞きました。

「一軒目はいかがでしたか?」

 

ご主人が答えます。

「ふ~んという感じですね」

 

いや、それは知ってる。

ずっと聞いてたから。

 

営業マンは少し質問を変えました。

 

「もう少し広い家の方がいいですか?」

「まだ分かりません」

 

「駅からの距離は、このくらいでも大丈夫ですか?」

「そうですね」

 

「駐車場は必要ですか?」

「できれば」

 

返事はある。

けれど、そこから話が広がりません。

 

会話が弾まない。

弾まないどころか、落としたボールが地面へ張り付いています。

 

 

二軒目に到着しました。

 

「こちらは一軒目より土地が広いです」

「ふ~ん。」

 

「その代わり、駅からは少し離れます」

「ふ~ん。」

 

「二階にもトイレがあります」

「ふ~ん。」

 

「バルコニーも広いですよ」

「ふ~ん。」

 

営業マンは心の中で思いました。

 

二階のトイレも、広いバルコニーも、

全部同じ“ふ~ん”で処理するんか。

 

それでも、ご夫婦は

家を雑に見ているわけではありません。

 

奥さんはキッチンの収納を一つずつ開けています。

ご主人は窓から隣家との距離を確認しています。

 

二人で小声で何か話しています。

 

ところが営業マンが近付くと、会話が止まります。

 

そして、また営業マンの説明に対して、

「ふ~ん。」

 

 

若手営業マンの頭の中で、

勝手な判定が始まりました。

 

この夫婦は、まだ家を買う段階ではない。

今日は勉強のために見に来ただけ。

 

初めてやから、とりあえず何軒か見てみたいだけ。

購入するとしても、まだ先やろう。

 

不動産営業という仕事は怖いもので、一度こう思い込むと、

お客さんの行動が全部そのように見えてきます。

 

丁寧に収納を確認している姿を見ても、

「初めてやから珍しいんやろな」

 

小声で話している姿を見ても、

「夫婦で何を聞いたらいいか相談してるんかな」

 

と、自分に都合よく解釈します。

 

お客さんの頭の中は一切見えてへんのに、

本人だけは見抜いたつもりです。

 

一年半、恐るべしです。

 


次のお客さんが今日の本命やのに……

 

その日は、ご夫婦の後にも

別のお客さんの案内が入っていました。

 

次のお客さんは、

事前に住宅ローンの相談もしています。

 

希望条件も明確です。

 

予算も聞いています。

 

電話での反応も前向きでした。

 

若手営業マンの中では、

次のお客さんが今日の本命です。

 

ところが、「ふ~ん」夫婦の案内が思ったより長引いています。

 

質問は少ない。

反応も薄い。

 

けれど、一軒一軒を見る時間は長い。

 

窓を開ける。

収納を見る。

水回りを見る。

 

外へ出て、隣との境界を見る。

 

営業マンは時計をチラッと確認しました。

 

 

あかん。

完全に時間が押してきました。

 

次のお客さんとの約束に間に合いません。

 

心の中では、「次の人が今日の本命やのに~」

と焦っています。

 

大阪のおばちゃんが横におったら、

ここで耳元に向かって言います。

 

「目の前におるお客さんを、勝手にハズレくじ扱いすな」

 

しかし、この日の車に

大阪のおばちゃんは乗っていません。

 

営業マンの頭は、半分が目の前の夫婦。

もう半分が次のお客さんです。

 

場合によっては、

もう六割ぐらい次のお客さんへ行っています。

 

目の前の人を四割で案内するな。

 


最後の家でも反応は変わらない

 

ようやく最後の家へ到着しました。

 

営業マンは、

次の予定が気になって少し早口です。

 

「こちらは先ほどの家より駅に近いです」

「ふ~ん。」

 

「室内はリフォームされています」

「ふ~ん。」

 

「水回りも新しくなっています」

「ふ~ん。」

 

「価格は少し上がりますが、すぐ住める状態です」

「ふ~ん。」

 

やっぱり変わりません。

 

けれど、最後の家では

ご夫婦の見る時間が、さらに長くなりました。

 

奥さんはキッチンに立ち、

冷蔵庫を置く場所を確認しています。

 

ご主人はコンセントの位置を見ています。

 

二階へ上がると、夫婦で各部屋へ入り、

窓を開けて外を見ています。

 

営業マンからすれば、

「初めての人は、何を見たらいいか

分からんから時間かかるんやろな」程度です。

 

 

 

全部見終わり、玄関へ戻りました。

 

営業マンは靴を履きながら、

「本日はありがとうございました」

と、ほぼ終了の空気を出しました。

 

頭の中では、「急いで次へ行かな」です。

 

すると、別れ際に奥さんが聞きました。

 

「すみません。

最後に見た家を買うには、どうしたらいいんですか?」

 

営業マンの手が止まりました。

 

えっ。

何を見ても「ふ~ん」。

 

会話もほとんど弾まない。

反応も分からない。

 

その夫婦が、突然

「買うにはどうしたらいいのか」と聞いてきたのです。

 

 

営業マンは慌てて答えました。

 

「まず購入申込書を書いていただきます」

「その後、住宅ローンの事前審査をして……」

 

ご夫婦は静かに聞いています。

 

営業マンは思いました。

なんや、ちょっとは真剣やったんか。

 

ちょっとではありません。

この時点でも、まだ全然分かっていません。

 


帰り道、コンビニへ寄った夫婦

 

 

最後の家を出た後、ご主人が言いました。

 

「すみません。

途中でコンビニに寄ってもらえますか?」

 

近くのコンビニへ寄りました。

 

ご主人が先にトイレへ。

続いて奥さんもトイレへ。

 

その後、二人で飲み物の棚を見て

ジュースを買い、車へ戻ってきました。

 

営業マンは車内で待ちながら、

「夫婦そろってトイレか」「結構長いな」

くらいにしか思っていません。

 

家を見た直後に夫婦でコンビニへ入り、

少し時間を使ってから戻ってきた。

 

今から思えば、いくらでも考えられます。

 

 

けれど、その時の営業マンの頭は

次のお客さんでいっぱいです。

 

結局、次のお客さんの案内は

別の営業担当に行ってもらうことになりました。

 

今日の本命を別の営業へ渡す。

若手営業マンとしては少し残念です。

 

しかし、目の前のご夫婦が最後の家について

詳しい説明を聞きたいと言うので、

事務所へ戻ることになりました。

 

その時もまだ、

「初めて家を見た人やから、一から説明せなあかんな」

と思っています。

 

コンビニでジュースを買って戻ってきた

夫婦を見ても、特に何も感じていません。

 

まさか、あのコンビニの短い時間に、

夫婦の頭の中で何かが決まっていたなんて。

 

営業歴一年半には、まだ分かりません。

 


事務所で契約前の説明を始める

 

事務所へ戻り、

購入手続きの説明が始まりました。

 

営業マンは資料を用意します。

 

購入申込み。

 

契約。

手付金。

 

住宅ローン。

 

諸費用。

引渡し。

 

初めて家を買うお客さんにも分かるように、

順番に説明していきます。

 

営業マンは少し先生のような気分です。

 

「人気の物件は、先に購入申込みを入れた方が

優先されることが多いです」

 

「ですので、気に入った場合は

早めに判断していただく必要があります」

 

 

ご主人が静かに言いました。

「それは知っています」

 

営業マンは少し引っ掛かりました。

 

初めてのわりには、よう知ってるな。

すると奥さんが、何でもない話のように言いました。

 

「実は数日前に、

別の家を買おうとしていたんです」

 

営業マンの説明が止まりました。

「えっ?」

 

「気に入った家があって、申込みを入れようとしたんですけど、

先に別の人が申し込んでいて、私たちは二番手になったんです」

 

「えっ?」

 

さっきまで「ふ~ん」しか言わなかった夫婦に対して、

今度は営業マンが「えっ」しか言えません。

 

ご夫婦は、数日前に別の家を購入しようとしていました。

 

初めて家を見たと言っていたので、

営業マンは完全な購入初心者やと思っていました。

 

しかし実際には、気に入った家を見つけ、

購入を決断し、申込み直前まで進んでいたのです。

 

ところが時すでに遅し。

 

先に申込みを入れた人がいたため、

二番手になってしまった。

 

買える可能性は低い。

そこで、今回の内覧へ来たというわけです。

 

 

営業マンはようやく気付きました。

 

今日、このご夫婦は三軒の家を

ボーッと見ていたわけではありません。

 

数日前に買おうとしていた家と、

今日見た家を頭の中でずっと比較していたのです。

 

駅からの距離。

価格。

 

土地の広さ。

間取り。

 

日当たり。

リフォーム状態。

 

収納。

周辺環境。

 

あの「ふ~ん」は、

興味のない「ふ~ん」ではありませんでした。

 

頭の中で比較表を作っている「ふ~ん」だったのです。

 

 

ご夫婦の口からは「ふ~ん」しか出ていません。

 

しかし頭の中では、営業マンの説明以上に

忙しく計算していたのでしょう。

 

営業マンが、「この夫婦、反応ないな」

と思っていた時、

 

ご夫婦は、「あの家より駅は近い」

「でも土地は少し狭い」「リフォーム代は要らない」

「この間取りなら使いやすい」と考えていたのです。

 

会話が弾んでいなかったのではありません。

 

営業マンに聞こえないところで、

夫婦の会話は進んでいました。

 

そして、最後の家を見終わった後のコンビニ。

 

夫婦そろってトイレへ行き、

ジュースを買っていた、あの時間。

 

営業マンはただの休憩やと思っていました。

実際にトイレにも行ったのでしょう。

 

しかし、それだけやったのか。

 

どう考えても、あそこで

二人の作戦会議が行われていた可能性が高い。

 

トイレのついでに家族会議したんか、

家族会議のついでにトイレへ行ったんか。

 

 

そこまでは知りません。

 

ただ、ジュースを持って車へ戻ってきた時には、

ご夫婦の中で一定の結論が出ていたのでしょう。

 

だから、別れ際に、

「最後の家を買うにはどうしたらいいんですか?」

と聞いたのです。

 

「なんや、真剣やったんか」

どころの話ではありません。

 

営業マンが今日の本命やと思っていた次のお客さんより、

目の前のご夫婦の方が、はるかに先まで進んでいました。


まだ終わらへん。住宅ローンの説明で、もう一発

 

 

営業マンは気を取り直し、説明を続けました。

 

「では、住宅ローンの事前審査についてですが……」

 

するとご主人が言いました。

「住宅ローンは使いません」

 

営業マンは一瞬止まりました。

「使わない?」

 

「はい。現金で買います」

 

また出ました。

「えっ?」

 

営業マン、本日三回目の「えっ?」です。

 

ご予算を確認すると、

現金で約4,000万円。

 

 

営業マンの頭の中で、先ほどまで一生懸命説明しようと

していた住宅ローンが、音を立てて崩れていきました。

 

このご夫婦は、ローン審査に不安を抱える

購入初心者ではありません。

 

現金4,000万円の予算を持ち、数日前には

別の家を本気で買おうとし、その家と今日の物件を

比較したうえで、次の候補を決めようとしていたのです。

 

営業マンが勝手に、

 

「初めてやから、まだ何も分からへん」

「今日は勉強程度」

「次のお客さんが本命」

 

と考えていただけでした。

 

財布の中身も、購入意欲も、判断の速さも、

営業マンの想像をはるかに超えていました。

 

大阪のおばちゃんに言わせたら、

「ローンの説明を始める前に、資金計画ぐらいちゃんと聞かんかい。

相手、現金4,000万円やがな」です。

 

営業マンが初心者扱いしていたご夫婦は、

頭の中で物件を比較し、申込み順位の怖さも知り、

購入資金も準備していた。

 

知らんかったのは営業マンだけです。

 


「不動産的・仮面夫婦」の正体

 

ここで、ようやく

今回のタイトルにある「仮面」の正体です。

 

このご夫婦は、

夫婦仲を取り繕っていたわけではありません。

 

営業マンをだますために

演技をしていたわけでもありません。

 

表向きは、

 

「初めて家を見に来ました」

「ふ~ん」

「まだ何も分かりません」

という雰囲気でした。

 

ところが、その仮面の下では、

数日前に別の家を買おうとした経験があり、

 

今日の物件を細かく比較し、

コンビニで夫婦会議を行い、

 

現金4,000万円を用意して、

本気で次の家を選んでいたのです。

 

ただし、ご夫婦自身は

仮面をかぶっているつもりなどなかったのかもしれません。

 

営業マンが勝手に、

「何も知らない初心者夫婦」という仮面を作り、

ご夫婦へかぶせていただけ。

 

そして最後まで、その仮面を信じ込んでいた。

 

この日、一番の初心者は誰だったのか。

 

初めて案内を受けたご夫婦ではありません。

 

たった一年半の経験で、

お客さんを見抜けると思っていた営業マンです。

家を建てるなら参加したい住宅見学会。見学のマナーや見るべきポイントを解説 - Live-Rary

 

ここで大阪のおばちゃんが登場します。

 

腕を組んで、若手営業マンへ一言。

 

「あんたなぁ!たった一年半の営業で、

お客さん見抜けると思うなよ!」

 

「お客さんの方が1,000倍真剣なんや!」

「一生に一回あるかないかの買い物やぞ!!!」

 

「営業マンは毎週、何軒も家を見るやろ」

 

「今日決まらんかっても、また次のお客さんを案内する」

 

「けどお客さんは、その一軒で

これから何十年の生活が変わるかもしれへんねん」

 

「『ふ~ん』しか言わへんから興味がない?」

「会話が弾まへんから買わへん?」

「次のお客さんが本命?」

 

「誰を本命にするか、勝手に決めるな!」

 

 

 

 

「お客さんが黙っとる間にな、ローン、現金、通勤、間取り、

子どもの学校、親との距離、将来売れるかまで、

頭の中で全部考えとるかもしれへんのや」

 

「営業マンが家の説明をしとる間、

お客さんは自分らの人生を考えとるんやぞ」

 

「しかも今回は現金4,000万円や」

 

「住宅ローンの説明、

張り切って始める前に聞くことあったやろ!」

 

「営業歴一年半?」

「まだ不動産営業の幼稚園、年中組ぐらいや!」

 

「お客さんを読む前に、まず話を聞け!」

 

「ほんで、コンビニで夫婦そろって

ジュース買うて戻ってきたら、ちょっとは考えろ!」

 

「まあ、後ろからついて行って聞き耳立てたら、

それはそれで怖い営業マンやけどな」

 


家を買うお客さんの「ふ~ん」を甘く見たらあかん

 

不動産営業は、話す仕事やと思われがちです。

 

もちろん、物件を分かりやすく

説明することは大切です。

 

しかし、それ以上に大切なのは、

お客さんの話を聞くことです。

 

反応が薄いから興味がないとは限りません。

質問が少ないから真剣ではないとも限りません。

 

初めて家を見ると言われても、

頭の中に比較対象がないとは限りません。

 

住宅ローンを使うとも限りません。

 

もしかしたら、

営業マンが「このお客さんはまだ先やな」と

判断した瞬間に、

お客さんは購入を決めかけているかもしれません。

 

 

今回の営業マンは、ご夫婦の口から出る

「ふ~ん」だけを見ていました。

 

しかし、ご夫婦が見ていたのは、

家だけではありません。

 

その家で暮らす自分たちの将来です。

 

同じ室内に立っていても、営業マンとお客さんでは、

見えている景色がまったく違います。

 

それを忘れた時、営業マンは簡単に判断を間違えます。

 

今回のご夫婦が特別に無口だったのか。

 

営業マンが少し思い込みの強いタイプだったのか。

 

その両方かもしれません。

ただ、一つ確かなことがあります。

 

「ふ~ん。」しか言わへんお客さんほど、

頭の中では忙しいことがある。

 

そして、お客さんを初心者やと思って安心している営業マンほど、

最後に一番驚かされることがあるのです。

 


Q&A 大阪のおばちゃんに聞いてみよう!

 

 

Q.反応の薄いお客さんは、購入する可能性も低いのでしょうか?

 

A.そんなもん、顔だけで分かったら不動産営業は苦労せえへん。

 

喜怒哀楽を表に出す人もおれば、

夫婦だけで静かに考える人もいます。

反応の大きさと購入意欲は、必ずしも比例しません。

 

Q.初めて家を見る人には、何を確認したらいいですか?

 

A.希望条件より先に、なんで家を探し始めたんか聞き。

 

家族構成、購入時期、予算、資金計画、過去に見た物件などを

丁寧に聞けば、その人がどの段階にいるのかが

少しずつ見えてきます。勝手に初心者認定したらあきません。

 

Q.現金購入でも購入申込みは必要ですか?

 

A.そら要るがな。現金を紙袋に入れて「これで家ください」では済まへんで。

購入申込書、売買契約、本人確認、資金の確認、決済、

所有権移転登記など、必要な手続きがあります。

 

ただし住宅ローン特約が不要になるため、

ローン利用者とは契約条件が異なることがあります。

 

Q.物件案内で時間が押したらどうすればいいですか?

 

A.まず次の予定を詰め込み過ぎんことや。

内覧時間は、お客さんによって大きく変わります。

時間が押した時は、目の前のお客さんを雑に扱わず、

次のお客さんや社内へ早めに連絡して調整することが大切です。

 

Q.大阪のおばちゃんから若手営業マンへ最後に一言お願いします。

 

A.「一年半で人を見る目ができた」と思った時が、一番危ない時や。

お客さんは、営業マンより家を見慣れていないかもしれません。

しかし、自分たちの人生については営業マンより

1,000倍真剣に考えています。

 

そこを忘れんと、次も頑張りや。

 


最後に

 

この日、営業マンが今日の本命やと思っていたのは、

次に案内する予定のお客さんでした。

 

しかし本当に目の前で真剣に家を選んでいたのは、

「ふ~ん」しか言わへんご夫婦でした。

 

不動産の仕事では、売れそうな家を見誤ることもあります。

 

買いそうなお客さんを見誤ることもあります。

 

けれど、その失敗から学ぶことができれば、

営業マンは少しずつ成長します。

 

たった一年半でお客さんを見抜けるほど、

不動産営業は簡単ではありません。

 

家を説明するだけなら、資料を読めばできます。

 

しかし、お客さんが何を心配し、何と比較し、

どんな未来を考えているのかを想像するには、

経験だけでなく謙虚さも必要です。

 

大阪のおばちゃん曰く、

 

「たった一年半の営業で、お客さん見抜けると思うなよ!」

「お客さんの方が1,000倍真剣なんや!」

「一生に一回あるかないかの買い物やぞ!!!」

 

 

……ほんで最後に、こう付け加えました。

 

「次から“ふ~ん”言われても、勝手に帰る準備すなよ」

 

ほな、さいなら~。

次も頑張ってな~。

筆者松本 親幸
  • 不動産キャリア29年
  • 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
個人的には今までの不動産業経歴において1,500件超のお取引に関わっております。
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