『それ、本当に事故物件ですか?』 ~30年前、近くの畑で起きた出来事。告知事項と言われた売主さんの悩み~
不動産の仕事をしていると、時々
「これはなかなか考えさせられるな」
という相談に会います。
雨漏りやシロアリの話なら分かりやすい。
境界問題も測量すればある程度答えは見えてくる。
しかし、人に関する話になるとそう簡単ではありません。
先日もそんな相談がありました。
私は現在、買取再販を中心に仕事をしていますが、
他社で売却活動中の売主さんから相談を受けることがあります。
今回もそんなケースでした。
すでに仲介会社へ売却を依頼している。
ただ担当営業マンが若く、少し経験不足に見える。
そこで、「買取だったらいくらになりますか?」
という相談でした。
査定資料を見せていただきました。
すると気になる文字がありました。
『告知事項有』
不動産業界の人間なら少し身構える言葉です。
事故物件なのか。
火災なのか。
事件なのか。
何か大きな問題があるのか。
色々考えます。
そこで売主さんに聞きました。
「どんな内容なんですか?」
すると返ってきた答えは意外なものでした。
約30年前。
ご親族の方が近くの畑で
自ら命を絶たれたことがあるというのです。
もちろん大変つらい出来事です。
ご家族にとって忘れられない出来事だったと思います。
しかし話を聞きながら私は思いました。
「それ、本当に事故物件なんやろか?」
今回はそんな実際の相談をもとに、
不動産業界で意外と多い「告知事項の勘違い」
について考えてみたいと思います。
告知事項という言葉が一人歩きしている
一般の方が「告知事項有」と聞くと、
かなり重たいイメージを持たれると思います。
実際にお客様からも、「事故物件なんですか?」
という質問を受けることがあります。
最近ではテレビやインターネットの影響もあり、
「事故物件」という言葉だけが有名になりました。
だから、告知事項=事故物件
と思われがちです。
しかし実際にはそう単純ではありません。
不動産業界でいう
告知事項には様々な種類があります。
雨漏りも告知事項です。
シロアリも告知事項です。
越境も告知事項です。
境界トラブルも告知事項です。
つまり、告知事項=危険な家ではありません。
単に買主さんへ伝えておくべき事項という意味なのです。
ところが、この言葉だけが一人歩きすると、
まるで問題だらけの物件のように見えてしまうことがあります。
新人営業マンほど慎重になる
実は今回の話を聞いていて思ったことがあります。
若い営業マンほど慎重なのです。
これは悪いことではありません。
むしろ真面目な証拠です。
経験が浅いと、「もし説明不足だったらどうしよう」
「後でクレームになったらどうしよう」
という気持ちが強くなります。
だから何でも告知しようとする。
全部説明しようとする。
その気持ちはよく分かります。
私自身も若い頃はそうでした。
とりあえず説明しておけば安心。
そんな考え方だった時期もあります。
しかし長くこの仕事をしていると、
別の考えも出てきます。
本当に買主さんの判断に影響する情報なのか。
単なる過去の出来事なのか。
その線引きが大切だと思うようになります。
もし全部事故物件扱いしたら大阪中が大変なことになる
少し極端な話をしてみます。
例えば大阪市生野区。
東成区。
西成区。
旭区。
城東区。
そして東大阪市。
尼崎市。
こうした歴史の長い住宅地には
築50年以上の家もたくさんあります。
では50年の間に何も起きていないでしょうか。
そんなことはありません。
誰かが病院で亡くなったこともあるでしょう。
施設で亡くなった方もいるでしょう。
近所で事故が起きたこともあるでしょう。
昔は畑だった場所もあります。
工場だった場所もあります。
戦争の時代を経験した地域もあります。
もしそうした出来事を全て事故物件扱いするなら、
大阪市内のほとんどの住宅が
何らかの告知事項を抱えることになります。
それは現実的ではありません。
だからこそ、
どこまでが取引に影響する事実なのか。
そこを冷静に考える必要があるのです。
実は似たような相談は結構多い
長年仕事をしていると、
「それも告知事項なんですか?」
という相談を受けることがあります。
もちろん個別事情によります。
ただ、何十年も前の出来事。
しかも物件の外で起きたこと。
それを現在の売却価格へ大きく影響させるべきなのか。
悩ましいケースは少なくありません。
特に相続物件になると、親から聞いた話。
祖父母から聞いた話。
近所の人から聞いた話。
様々な情報が出てきます。
ところが調べてみると、時期も曖昧。
場所も曖昧。事実関係も不明。
そんなケースも珍しくありません。
不動産業界は書類だけではないのです。
人の記憶も相手にしなければなりません。
買主さんは意外と現実的
仲介時代から感じていることがあります。
買主さんは意外と現実的です。
もちろん心理的な問題を気にされる方もいます。
しかしそれ以上に、日当たり。
前面道路。学校区。買い物施設。近隣環境。
災害リスク。
こうした現実的な要素を重視される方が多い印象です。
実際、家の中を10分見て、
その後30分近所を歩く方もいます。
家を見に来たのか。
町を見に来たのか。
分からないくらいです。
それほど住環境は重要なのです。
だからこそ、何十年も前に近くで起きた出来事だけで、
その家の価値を大きく下げるという考え方には
私は少し違和感を感じます。
不動産は人の歴史を背負っている
今回の相談を受けて改めて思いました。
不動産というのは建物や土地だけではありません。
そこには人の歴史があります。
楽しかった思い出もある。
悲しかった出来事もある。
家族の人生そのものが詰まっています。
だから簡単に白黒つけられない話もあります。
売主さんにとっては30年前の出来事でも、
昨日のことのように思い出されるかもしれません。
しかし不動産取引として考えれば、
感情と事実は分けて考える必要があります。
そのバランスが大切なのだと思います。
Q&Aコーナー
Q1. 告知事項有と書かれていたら事故物件ですか?
A. 必ずしもそうではありません。
雨漏りや境界問題なども告知事項に含まれます。
Q2. 近所で起きた出来事も事故物件になりますか?
A. ケースによります。
物件との関連性や影響度によって判断が変わります。
Q3. 病院や施設で亡くなった場合も事故物件になりますか?
A. 一般的にはそれだけで
事故物件扱いになるわけではありません。
Q4. 告知事項がある物件は買わない方がいいですか?
A. 内容によります。
まずは何が告知事項なのかを確認することが大切です。
Q5. ベテランと新人で判断が違うことはありますか?
A. 実務上はあります。
経験によってリスクの捉え方が違うこともあります。
Q6. 売主として大切なことは何ですか?
A. 自分が知っている事実を正確に伝えることです。
その上で専門家と相談しながら判断しましょう。
Q7. 今回のようなケースは珍しいですか?
A. 珍しいようで意外とあります。
不動産業界には線引きが難しい相談がたくさんあります。
弊社からひとこと
不動産は土地や建物を売買する仕事です。
しかし実際には、それだけではありません。
そこには家族の歴史があり、人の思い出があり、
時には悲しい出来事もあります。
だからこそ感情だけで判断してはいけない。
しかし事実だけで切り捨ててもいけない。
その両方を見ながら考えることが大切です。
「これって本当に事故物件なんやろか?」
そんな疑問が出てきた時は、
一人で悩まず相談してみてください。
案外、答えはシンプルかもしれません。
不動産の世界は奥が深い。
だからこそ面白いのです。🏠✨
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
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