タダほど怖いものはなし・・不動産買取業者がタダ同然で買い取った物件は儲かるどころか大損した話
「不動産買取業者は、不動産のプロやろ?」
おそらく多くの人が、そう思っているでしょう。
物件を見れば、リフォームにいくらかかるか、
いくらで売れるか、最終的にどれくらい利益が残るかを
瞬時に計算する。
そして一般の人には売れそうにないボロボロの家を
安く買い取り、きれいにリフォームして、
最後はしっかり利益を出す。
不動産買取業者とは、
そんな失敗知らずの商売に見えるかもしれません。
けどな――。
不動産買取業者かて、失敗するんです。
それも、ちょっと利益が減った程度ではありません。
今回は、タダ同然の10万円で買い取った
再建築不可の一戸建てが、儲かるどころか大損になった話です。
なお、物件の所在地は伏せさせていただきます。
売主さまや買主さまへの配慮もありますが、それ以上に、
私自身があの約2年間を思い出したくないからです。
「タダでもええから引き取ってほしい!」
不動産の買取相談では、ときどき売主さまから、
「もうタダでもええから引き取ってほしい」
と言われることがあります。
長年放置されている空き家、家財が大量に残っている家、
雨漏りやシロアリ被害のある家、そして再建築不可の家。
持っているだけで固定資産税がかかり、草木は伸び、
ご近所から苦情が来るかもしれません。
遠方に住んでいれば、管理のために現地へ行くだけでも大変です。
売主さまにとっては、売って利益を得たい不動産ではなく、
一日でも早く手放したい不動産になっているのです。
とはいえ、さすがに価格0円では通常の不動産売買として
扱いにくいため、今回の買取価格は10万円になりました。
再建築不可の古い一戸建て。
場所は、駅から絶望的に遠いわけではありません。
「これは何とかなるやろ」
私はそう思いました。
10万円で買い取り、リフォームして680万円くらいで売却する。
当初のリフォーム予算は300万円ほどです。
10万円で買って、300万円でリフォーム。
ほかの経費を入れても、680万円で売れたら十分利益が出る。
不動産のプロ、完璧な計算です。
まず家財撤去で30万円!
家の中には、大量の家財が残されていました。
家具、布団、衣類、食器、生活用品……。
古い空き家の家財撤去は、
テレビ番組みたいに全員で力を合わせて、
「思い出のタンスですね」などと言いながら、
しんみり運び出すわけではありません。
分別して、運んで、処分して、費用を払う。
その金額、約30万円。
買取価格の3倍です。
10万円で買った家から、30万円分の家財が出てきました。
この時点で少し嫌な予感はしました。
けれど、まだ大丈夫。
680万円で売れる予定ですから。
トイレは汲み取り、柱はシロアリでボロボロ
家財を撤去したら、次はリフォームです。
ところが、この家のトイレは汲み取り式でした。
そのまま売るのは難しいため、
排水管を前面道路まで接続する工事が必要になります。
さらに建物を調べると、シロアリの被害で柱がボロボロ。
見た目だけをきれいにするリフォームでは済まず、
柱などの補強工事まで必要になりました。
床を直したら次は柱。
柱を直したら次は配管。
配管を直したら、また別のところ。
古い家のリフォームには、なぜか工事を始めてから
新しい登場人物が次々に現れます。
「私も傷んでます」
「こっちも交換してください」
「実は私もシロアリに食べられています」
いや、順番に自己紹介せんでええねん!
最初に全部出てきてくれ!
結局、当初300万円で見込んでいたリフォーム代は、
450万円まで膨らみました。
家財撤去費30万円は別です。
ここまでの原価を単純に計算すると、
買取価格10万円。
家財撤去費30万円。
リフォーム代450万円。
合計490万円です。
さらに登記費用、不動産取得税、固定資産税、
火災保険、販売にかかる経費などもあります。
それでも私は思っていました。
「680万円で売れたら、まだ何とかなる」
そうです。
このころの私は、まだ前向きでした。

680万円で売る予定が、全然売れへん!
リフォームが完成し、
ピカピカになった家を680万円で販売しました。
再建築不可とはいえ、駅からそれほど遠くない。
これだけきれいにしたのだから、そのうち買主さまが現れるだろう。
ところが、なかなか売れません。
問い合わせがまったくないわけではない。
しかし、購入まで話が進まない。
再建築不可の物件は、将来建て替えができないうえ、
住宅ローンの利用が難しいこともあります。
どうしても購入できる人、購入したい人が限られるのです。
「まあ、時間をかけたら売れるやろ」
そう思っていたある日、近隣で
同じようなリノベーション物件が新しく売りに出されました。
販売価格は――
480万円。
私は、その数字を二度見しました。
「うちの原価以下やんけ……」

こちらは買取価格、家財撤去費、
リフォーム代だけで490万円です。
向こうの売値は480万円。
その物件が近くにある間、
680万円のこちらを買ってもらうのは簡単ではありません。
私は思いました。
「まず480万円の物件が売れてくれんことには、
うちの物件は厳しいな」
ライバル物件ではありますが、私は心の中で応援しました。
早よ売れてくれ!頼む!
480万円でも売れへんのかい!
ところが、その480万円の物件も売れません・・。
そうこうしているうちに1年が経過しました。
そして、その物件は480万円から380万円へ値下げ。
「おいおい、どないなっとるんや?」
480万円でも売れず、380万円まで下げる。
もしかして、うちの物件が悪いだけではないのか?
もしかして、ここは不人気地区なんか?
駅からそれほど遠くない。それなりに住宅も建っている。
買い取る前は「この価格なら売れる」と思っていた。
けれど、不動産は駅からの
距離だけで売れるものではありません。
地域の需要、周辺の取引件数、
再建築不可物件を購入する層がいるかどうか。
そして何より、その価格を出してまで
「ここに住みたい」と思う人がいるのか。
安く買えたことに気を取られ、
私は肝心の出口を読み違えていたのです。
その後、ライバル物件は350万円で売れたようでした。
ようやく売れた。
しかし、喜んでいる場合ではありません。
近くのきれいな物件が350万円で売れたということは、
こちらの680万円がますます遠い世界へ行っているということです。
680万円から480万円、そして390万円へ
仕方がありません。
少し損は出ますが、こちらも480万円まで値下げして
様子を見ることにしました。
680万円から、いきなり200万円の値下げです。
「これなら売れるやろ」
ところが、そこから半年。
売れません。
もう、このころになると
利益を出したいという気持ちは薄れていました。
最初は、「いくら利益が出るかな?」
と計算していたのに、いつの間にか、
「いつになったらこの物件から解放されるんや?」
へ変わっていました。

固定資産税はかかる。火災保険も必要。
売れない間も管理しなければならない。
そして、販売中の物件を見るたびに、
自分の査定の甘さを思い出す。
もうどうでもよくなってきた私は、
販売価格を390万円へ変更しました。
それでも、すぐには売れません。
そして、さらに半年ほどたったころ、
ようやく一人のお客さまが現れました。
「350万円なら購入したいです」
普通なら、
「もう少し何とかなりませんか?」
「せめて370万円ではどうでしょう?」
と交渉するところです。
しかし、私の返事は違いました。
「いえいえ、もう何ぼでもええから買うてやってください」
「私が悪うございました……」
10万円で買って350万円で売ったら、340万円の儲け?
最終的な売却価格は350万円です。
この話を数字だけで聞けば、
「10万円で買った家を350万円で売ったんやろ?」
「340万円も儲けとるやないか!」
「やっぱり不動産屋はボロ儲けや!」
と思う人がいるかもしれません。
違います。

買取価格10万円、家財撤去費30万円、リフォーム代450万円。
この三つだけで490万円です。
350万円で売却したので、この時点ですでに140万円の赤字。
そこへ登記費用、不動産取得税、約2年間の固定資産税、
火災保険、販売経費などが加わります。
340万円儲かったのではありません。
少なくとも140万円以上損したのです。
安く買ったから儲かるとは限りません。
たとえ10万円でも、売れなければ高い買い物です。
再建築不可の物件は、建物をきれいにすれば
必ず売れるわけでもありません。
地域に需要がなければ、どれだけリフォームしても
購入希望者は現れないのです。
不動産買取で大切なのは、
入口の安さだけではありません。
最後に誰が、いくらで、どのような条件なら買ってくれるのか。
出口を間違えれば、タダ同然の物件が
一番高い買い物になることもあります。
不動産買取に関するQ&A
Q.10万円の不動産なら、買って損することはないですよね?
大いにあります。
家財撤去、解体、リフォーム、測量、税金、登記、維持管理など、
購入後に必要な費用は物件価格とは別です。
10万円で買っても、数百万円の費用がかかることがあります。
Q.リフォームすれば再建築不可物件でも売れますか?
売れる可能性はありますが、地域の需要や価格設定が重要です。
再建築不可物件は住宅ローンを利用しにくい場合もあり、
購入できる人が限られます。
Q.不動産買取業者でも査定に失敗しますか?
します。建物の状態、工事費、販売期間、近隣の競合物件、
地域の需要など、想定外のことはいくらでも起こります。
プロでも未来を完全に読むことはできません。
今回の物件で、私は身をもって学びました。
タダほど怖いものはなし。
10万円で買ったときは、
安く仕入れられたと思っていました。
2年後、350万円で購入したいというお客さまが
現れたときは、利益の計算など完全に忘れていました。
ただ一つ、心の中で願っていたのは――
「お願いです。もう私をこの物件から解放してください……」
買っていただいたお客さま、
本当にありがとうございました。
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
どんな物件買取もお任せ下さい!
若い時にはリフォームの仕事も経験済。
売主様には査定時に買取価格を算出します!
家の買取や売却のご依頼・ご相談は
ワンちゃんと古い家が大好きな白髪交じりの私・松本が全てご対応いたします!
