不動産は縁のもの。そう実感した、一軒の長屋買取の話
不動産の仕事をしていると、
「これは縁やなぁ」と思う出来事に出会うことがあります。
家は同じものが二つとありません。
そこに住んできた人の人生も、
家族の歴史も、それぞれ違います。
だからこそ、不動産は単なる「物」の売買ではなく、
「人」と「人」とのご縁なのだと感じることがあります。
今回お話しするのは、そんな一軒の長屋との出会いです。
一本の電話から始まったご相談
最初にお電話をくださったのは、
ご高齢の女性でした。
「私は今、施設に入っているんです。」
「家が空き家になっていて心配なんです。」
「息子に相談しても、なかなか動いてくれなくて……。」
そんなお話から始まりました。
「そちらは買い取ってくれるんですか?」
「だいたい、いくらくらいになりますか?」
ただ、その時は住所も分かりません。
長屋なのか、一戸建てなのかも分からない。
もちろん価格をお伝えできる状況ではありませんでした。
「一度、物件を拝見できれば査定できますよ。」
そうお伝えして、その日の電話は終わりました。
それだけのやり取りでしたが、「家を何とかしたい」という
お気持ちだけは十分に伝わってきました。
「他の不動産会社は、ええ加減やわ」
数日後、その女性から再びお電話がありました。
今度は査定の話ではありません。
「何社か相談したけど、ええ加減やわ。」
そんな愚痴から始まった電話でした。
詳しい内容は書きませんが、
思うような対応をしてもらえなかったのでしょう。
私はただ、お話を聞いていました。
価格ももちろん大切です。
でも、それ以上に「ちゃんと話を聞いてくれる人」を
探しておられるように感じました。
娘婿さんとの出会い
その後、一人の男性から連絡がありました。
女性の娘婿さんでした。
ようやく物件の場所が分かり、現地へ向かいました。
弊社からも近い守口市の長屋でした。
建物を確認し、その場で買取価格をご提示しました。
「他にも何社か聞いてから返事します。」
不動産では、ごく自然なお返事です。
大切な財産ですから、
一社だけで決める必要はありません。
私も「じっくりご検討ください」とお伝えしました。
「この金額ならお願いしたい」
約二週間後、娘婿さんから再び電話がありました。
「〇〇〇万円なら、御社へお願いしたいと思っています。」
私が提示した価格より80万円高い金額でした。
少し考えました。
ですが、この物件は弊社から近く、
購入後の管理もしやすい立地です。
「それでしたら、120万円上げます。」
そうお伝えしました。
娘婿さんは驚かれていました。
「もう一度、家族で相談します。」
その後も他社へ相談されたそうですが、
最終的には弊社が一番高い評価となり、
ご縁をいただくことになりました。
もちろん価格だけではなく、安心して任せられる会社か
どうかも、ご家族の判断材料になったのだと思います。
契約の日に分かった、思いがけないご縁
契約の日。
雑談の中で、お母様が何気なく話されました。
「息子は不動産会社で働いているんです。」
その苗字を聞いた瞬間、
どこかで聞き覚えがありました。
「もしかして、以前〇〇会社に勤めていた○○君ですか?」
そうお聞きすると、
「そうです。」
思わず笑ってしまいました。
年齢も、住んでいた場所も一致します。
間違いありません。
その息子さんは、私が仲介会社に勤めていた頃、
一緒に働いていた元同僚だったのです。
まさか、元同僚の実家を、
独立した私の会社が買い取ることになるとは。
人生とは本当に不思議なものです。
「やっぱり親子やな」
所有権移転登記も無事に終わりました。
すると、お母様から一本のお電話がありました。
「登記が終わいたら、謄本を見せてもらえませんか?」
もちろんです。
後日、登記事項証明書のコピーをお届けしました。
「ちゃんと名義が変わってる。」
そう確認されると、
とても安心された表情をされていました。
本当に細かいところまで気を配られる、
しっかりした方でした。
でも、その姿を見ていて思ったのです。
「この慎重さ、誰かに似てるな……。」
元同僚の○○君でした。
仕事でも確認を怠らず、
細かなところまで気を配る性格。
その姿が、お母様と重なったのです。
「やっぱり親子やな。」
そんなことを思いながら帰ったのを、
今でも覚えています。
不動産は、縁のもの
この仕事をしていると、
不動産は「物」を扱う仕事だと思われがちです。
もちろん土地や建物を売買する仕事です。
でも、本当に向き合っているのは、
その家で暮らしてきた人、その家族、
そしてその想いなのだと感じます。
施設に入られたお母様。
忙しい中でも家族のために動かれた娘婿さん。
そして、思いもよらない形で再会した元同僚。
一軒の長屋を買い取っただけなのに、
そこにはたくさんの人の人生がありました。
価格だけを見れば、80万円上げて、
さらに120万円上乗せしたという
商談だったのかもしれません。
でも、私の記憶に残っているのは金額ではありません。
「○○君のお母さんやったんや。」
その驚きと、「親子って似るもんやな」
という何とも言えない温かい気持ちです。
長年この仕事をしていると、
思いがけないご縁に出会います。
だから私は今でも思います。
不動産は、縁のもの。
この一軒の長屋が、そのことを改めて教えてくれました。
ちなみにお母さんは息子の○○君のことを
『あかん息子や!』と
ボロカスに言われていましたけれど・・
よくある質問(Q&A)
Q. 長屋でも不動産会社に買い取ってもらえるのでしょうか?
はい。
長屋や連棟住宅でも買取を行う不動産会社はあります。
ただし、建物の状態や立地、権利関係などによって
査定額や対応は異なるため、複数社に相談して
比較することをおすすめします。
Q. 空き家になっていても売却できますか?
もちろん可能です。
むしろ空き家は放置期間が長くなるほど
管理面や維持費の負担が増えることもあるため、
早めに相談することで選択肢が広がる場合があります。
Q. 家族の意見がまとまっていなくても相談できますか?
はい。
今回のように、ご本人、ご家族、娘婿様など、
それぞれ立場が異なるケースは珍しくありません。
まずは現状を整理するためにも、
気軽に相談してみることが大切です。
Q. 買取価格は交渉できますか?
ケースによります。
立地や建物の状況、その会社の販売計画などによって
再検討できる場合もありますので、遠慮せず
相談してみるとよいでしょう。
※この記事は、実際に私が経験した出来事を
もとに、個人が特定されないよう一部内容を
変更してご紹介しています。
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
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