人生100年時代!終の棲家は持ち家と賃貸どっちがいい?80歳になってから考えたら遅いかもしれません

「人生100年時代」と言われるようになりました。
100歳まで生きる。
昔なら「そんな長生きする人、そうそうおらんやろ」と
思っていたかもしれませんが、今では長い老後を前提に、
住まいについて考えなければならない時代になりました。
そこで不動産屋として気になるのが、
「最後はどこに住むんや?」という問題です。
持ち家なのか。
賃貸なのか。
それとも老人ホームなどの施設なのか。
今回は、ある75歳のお婆さんを主人公にして
考えてみたいと思います。
75歳のお婆さんと17歳のワンちゃん
お婆さんは、ご主人を亡くして現在一人暮らし。
住んでいるのは築40年ほどの一戸建てです。
子どもたちはすでに独立し、それぞれ家庭を持っています。
そして今、一緒に暮らしている家族がもう一人。
いや、一匹。
17歳になる小型犬です。
昔は元気いっぱい。
散歩に連れて行けば、
「ちょっと待って!そんな走られへんて!」
と、お婆さんの方が引っ張られていました。
ところが今は反対です。
ワンちゃんも高齢になり、
長い距離を歩けなくなりました。
最近ではペットカートに乗せて散歩しています。
お婆さんがカートを押して、ワンちゃんが外を眺める。
ゆっくり、ゆっくり。
昔とは散歩の形も変わりました。
でもお婆さんにとって、それが毎日の楽しみです。
そして、このお婆さんには
一つ決めていることがあります。
「私は最後までこの家に住む」
「お母さん、最後は施設に入ってや」

ところが、子どもたちの考えは違います。
「お母さん、元気なうちはええよ」
「でも一人で生活するのが難しくなったら施設に入ってな」
お婆さんは面白くありません。
「なんでやの。私はこの家がええねん」
そらそうでしょう。
40年近く暮らしてきた家です。
ご主人との思い出もある。
子どもたちを育てた家でもある。
近所には知っている人がいる。
スーパーも病院も勝手が分かっている。
そして何より、
ワンちゃんがおる。
「この子置いて、どこ行くねんな」
お婆さんからすれば当然です。
しかし、子どもたちの気持ちも分かります。
転倒したら?
急に体調が悪くなったら?
火の消し忘れがあったら?
認知症になったら?
「昨日から電話してるのに出えへん……」
離れて暮らす子どもなら、心配で仕方ありません。
つまり、
本人は「住み慣れた家から離れたくない」。
子どもは「安全なところで暮らしてほしい」。
どちらが間違っているわけでもないんです。
持ち家なら老後は安心?

「老後を考えたら、やっぱり持ち家やろ」
これはよく聞く話です。
確かに住宅ローンを完済していれば、
毎月の家賃負担はありません。
年金生活になってから毎月7万円、8万円の家賃を
払い続けることを考えれば、住宅ローンのない
持ち家は大きな安心材料になります。
ただし――。
持ち家なら住居費がゼロになるわけではありません。
固定資産税はかかります。
屋根が傷めば修理。
給湯器が壊れれば交換。
外壁も、お風呂も、トイレも、
エアコンも永久には使えません。
75歳のお婆さん。
築40年の一戸建て。
もし95歳までここで暮らしたら、
お婆さん95歳。
家は築60年。
「私もだいぶガタきたけど、あんたもなかなかやな」
家と会話したくなります。
二階建てなら、
「もう階段しんどいわ」
となって、二階は何年も使っていない。
実質、巨大な平屋です。
庭があれば草むしりもあります。
家も人間と同じ。
一緒に歳を取るんです。
それなら持ち家を売って賃貸へ?

そこで出てくるのが、
「元気なうちに家を売って、
便利な賃貸マンションへ引っ越したらええやん」
という考え方です。
階段がない。
スーパーが近い。
病院も近い。
駅も近い。
庭の草むしりもしなくていい。
これは確かに魅力です。
しかし、高齢になってからの賃貸探しでは、
年齢や保証会社、緊急連絡先など物件ごとの
入居条件も確認しなければなりません。
さらに今回のお婆さんには、
17歳のワンちゃんがいます。
高齢者でも入居できる。
ペット可。
病院が近い。
スーパーも近い。
家賃も予算内。
全部そろった物件を探すとなれば、
選択肢は当然少なくなります。
そしてもう一つ。
75歳で持ち家を売って賃貸へ。
85歳で介護が必要になって施設へ。
また引っ越しです。
「このタンス持って行く?」
「いらん」
「この食器は?」
「それはいる」
「このアルバムは?」
「それは絶対いる!」
……荷物、全然減らへんがな。
若い人でも引っ越しは大変です。
80歳を超えてからなら、なおさらでしょう。
では「施設」が本当の終の棲家なのか?

子どもたちが希望しているのは、
「元気なうちは自宅。でも最後は施設に入ってほしい」
という形です。
私はこれ、かなり現実的な考え方だと思います。
何でも自分でできる間は、
住み慣れた自宅で暮らす。
しかし、食事、入浴、服薬、通院など、一人での
生活が難しくなってきたら施設という選択肢を考える。
ただし、
「その時になったら考えたらええわ」
では少し怖い。
その時になって本人が不動産売却について
自分で判断できる状態とは限らないからです。
認知症などによって意思能力に問題が生じれば、
「娘やから代わりに売っときますわ」とはいきません。
本人名義の不動産です。
場合によっては成年後見制度などを
検討する必要も出てきます。
だから、「何歳になったら施設へ入る」
と決めるより、
「こういう状態になったら次の住まいを考えよう」
と家族で話しておく方が現実的だと思います。
「終の棲家=死ぬまで住む家」じゃなくてもいい

そもそも私は、「終の棲家」という言葉が
少し重すぎるようにも感じます。
最後まで絶対ここ!
と決めなくてもいいんじゃないでしょうか。
60代は持ち家。
70代も元気なら持ち家。
80代になって生活が大変になれば施設へ。
人によっては、その途中で
便利なマンションへ住み替えてもいい。
つまり、
人生の最後に住む場所は、一回で決めなくてもいい。
大切なのは、
「今の家に住めなくなったら、その次はどうする?」
を元気なうちに考えておくことです。
不動産屋としては「家の出口」を決めておいてほしい

施設へ入ることになった時、
持ち家をどうするのでしょう。
売る。
貸す。
空き家のまま置いておく。
子どもに譲る。
選択肢はいろいろあります。
ただ、一番困るのは、
何も決めないまま本人の判断能力が低下してしまうこと。
「この家を売ったお金で施設代を払おう」
と思っていたのに、その肝心の家を簡単に売れない。
これは避けたいところです。
だから私は、
「今すぐ家を売りましょう」ではなく、
「元気なうちに家の出口だけは考えておきましょう」
と言いたいんです。
売るのは5年後でも10年後でもいい。
結局、売らなくてもいい。
でも、
「一人暮らしができなくなったら売る」
「売却代金を施設費用に充てる」
「子どもには家ではなく現金を残す」
そんなところまで話してあれば、
いざという時の家族の負担は大きく違ってきます。
持ち家VS賃貸、本当の答えは?

結局、
持ち家と賃貸、どちらが老後に向いているのか?
私は一概には決められないと思います。
住宅ローンを完済した持ち家があり、
生活にも便利で、自分で家を管理できる。
それなら無理に手放す必要はありません。
逆に広すぎる一戸建てを持て余し、
階段や庭の管理が負担になっているなら、
元気なうちの住み替えも選択肢でしょう。
そして一人で暮らすこと自体が難しくなれば、
施設という第三の選択肢もある。
だから本当に考えるべきなのは、
「持ち家か賃貸か?」だけではありません。
「自分はどこまで一人で暮らしたいのか?」
そして、
「一人で暮らせなくなったら、どうするのか?」
そこまで考えて初めて、自分なりの
「終の棲家」が見えてくるのではないでしょうか。
そして今日も、お婆さんは散歩に出ます
夕方。
少し涼しくなってきました。
お婆さんは17歳のワンちゃんをペットカートに乗せます。
昔みたいに走ることはできません。
それでも外へ出ると、ワンちゃんは
鼻をクンクンさせながら辺りを眺めます。
お婆さんもゆっくり歩きます。
犬も歳を取りました。
お婆さんも歳を取りました。
そして家も歳を取りました。
みんな一緒です。
子どもたちは言います。
「お母さん、最後は施設に入ってな」
お婆さんはまだ納得していません。
できれば、この家で最後まで暮らしたい。
でも最近、カートの中の
老犬を見ながら少しだけ思います。
昔あれだけ走り回っていたこの子にも、
こんな日が来た。
だったら自分にも、いつか今まで通り
暮らせなくなる日は来るのかもしれない。
お婆さんはワンちゃんの頭を撫でながら言います。
「あんたの終の棲家はここで決まりやな」
そして少し間を置いて――。
「……私は、もうちょっと考えるわ」
人生100年時代。
それくらいで、ええんじゃないでしょうか。
ただし、
考えるのは元気なうちに。
これだけは忘れないでください。
よくある質問 Q&A

Q.70代で持ち家を売るのは早いですか?
年齢だけで判断する必要はありません。
家の広さ、階段、立地、維持管理の負担、
家族との距離などを考えて判断します。
むしろ元気なうちなら、自分で次の住まいを
選べるというメリットがあります。
Q.80歳でも賃貸住宅は借りられますか?
借りられる物件はあります。
ただし物件ごとに入居条件は異なります。
高齢になってから慌てて探すより、
賃貸への住み替えを考えているなら
早めに情報収集しておく方がいいでしょう。
Q.持ち家を残したまま施設へ入ってもいい?
もちろん可能です。
ただし固定資産税、建物管理、防犯、庭木、
火災保険、空き家の老朽化などは続きます。
「とりあえず置いておく」が何年も続かないよう、
その後どうするかは考えておきたいところです。
Q.結局、老後は持ち家と賃貸どちらがおすすめ?
住宅ローンを完済した持ち家で安全に
生活できるなら、持ち家は心強い存在です。
一方で家の維持管理が負担なら、
住み替えにもメリットがあります。
ただ、本当に重要なのは、
「持ち家か賃貸か」より、その先まで考えておくこと。
Q.いつから終の棲家について考えればいい?
私は、「まだそんなこと考えんでもええわ」と
思っている時こそ、一度考えてみる時期だと思います。
本当に困ってからでは、
選べる道が少なくなることがあります。
元気だからこそ、自分で選べる。
終の棲家を考えるとは、
人生の終わりを考えることではありません。
これから先も、自分らしく暮らすための準備です。

- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
- 宅地建物取引士
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