今年の猛暑を物語る「日が上がっている間は動けません!」というお問い合わせ
今年の夏も暑かった。
9月から暑さもようやくマシになってきましたが
ここ数日の日中はまた暑い・・。
いやいや、「暑かった」の一言では
済まんくらい6~8月は暑かったですね。
そんな今年の猛暑を象徴するような、
ちょっと珍しい不動産売却のお問い合わせが、
8月末にある不動産会社へ入ったそうです。
今回はそのお話です。
「日が上がっている間は動けないんです」
お問い合わせをされたのは、年配の女性。
大阪市内某所にある空き家になった
ご実家を買い取ってほしいというご相談でした。
空き家になってからは、もう5年ほど。
女性としては仲介で、「売家!」と看板を出したり、
何組もの購入希望者に家の中を見せたりするのは、
どうも気が進まない。
多少価格が下がってもいいので、
「手っ取り早く買い取ってもらいたい」
というご希望だったそうです。
ここまでは、不動産会社にはよくある相談です。
ところが査定の話になったところで、
女性からこんな言葉が出ました。
「私、日が上がっている間は動けないんです」
ん?
どういうこと?
仕事をしているから?
昼間に介護か何かの予定があるから?
違います。
暑いからです。
そして女性から提案された時間が、
「朝6時とか、夜7時とかでもいいですか?」
朝6時!なかなか早い。
不動産会社への査定依頼で
「夜7時」はそれほど珍しくありません。
「仕事が18時までなので、そのあとでお願いします」
これはよくあります。
しかし、「日が沈んでからお願いします」
という理由で夜7時を指定されるのは、なかなか珍しい。
今年の暑さを物語るようなお問い合わせです。
朝6時は……ワンちゃんの散歩なんです
さて、困ったのが不動産会社の社長さん。
会社の営業時間は朝から夕方まで。
さすがに朝6時は早い。
そこで正直に、「申し訳ないんですが、
朝6時はワンちゃんの散歩がありまして……」
とお断りしたそうです。
すると女性。
「そうですか。じゃあ夜7時でもいいですよ」
社長さん、
「夜7時もワンちゃんの散歩が……」
……と言いかけて、やめました。
そらそうです。朝も犬。夜も犬。
2回連続で犬を理由に断ったら、
「この会社、犬と私どっちが大事やねん?」
となりかねません。
どうやらこの会社の社長さん、
かなりのワンちゃん第一主義のようです。
そこで「まず外から見てきます」
とはいえ、真夏の査定のために
年配の女性へ無理をしてもらう必要もありません。
そこで社長さん、
「では、まずこちらだけで現地へ行って、
外観を確認します。それから登記関係も調べて、
概算の買取価格を出してみましょう」
ということにしました。
これなら女性は立ち会わなくてもいい。
もちろん、正式な買取価格を決めるには
最終的に室内確認が必要です。
雨漏りしているかもしれません。
床が傷んでいるかもしれません。
設備の状態も分かりません。
空き家歴は約5年。
外から見ただけで、
「はい、○○○○万円で買います!」
というわけにはいきません。
ただ、最初の概算査定なら、土地面積、前面道路、
間口、立地、建物の外観、登記内容などから、
ある程度の目安を出すことはできます。
そこで現地へ。
すると――。
あれ?これ一戸建て……ちゃうやん
女性からは「実家の一戸建て」と聞いていました。
ところが外から建物をよ~く見ると、
1階部分がお隣と引っ付いている。
でも2階部分はそれぞれ分かれている。
一見すると、それぞれ独立した一戸建てにも見えます。
大阪の古い住宅地では、こういう建物を見ることがあります。
「これ……長屋ちゃうか?」登記を確認してみると――
きっちり長屋でした。
女性自身も、ご実家を
一戸建てだと思っていたそうです。
これも実は、不動産の仕事をしていると時々あります。
見た目が一戸建てっぽいから、
「うちは普通の一戸建てですよ」と思っていた。
ところが登記や建物の構造を確認すると
連棟になっていたというケースです。
特に今回のように、
1階だけが隣家とつながっているように見える建物なら、
一般の方が一戸建てだと思っていても不思議ではありません。
だからこそ、不動産の査定は現地だけではなく
登記の確認も大事なんですね。
それにしても今年の夏は暑かった!
この女性の、「日が上がっている間は動けません」
という言葉。
最初に聞くと、
ちょっと大げさに感じる人もいるかもしれません。
ところが今年の大阪の数字を見ると、笑えません。
2026年8月3日の大阪市では
**最高気温38.6℃**を記録しています。
8月29日になっても大阪市の最高気温は33.0℃、
堺では35.0℃でした。(気象庁データ)
8月末でも、まだ十分暑かったわけです。
ましてや年配の方。
無理して昼間に空き家まで来てもらって、
体調を崩してしまっては何をしているのか分かりません。
「日が上がっている間は動かない」
今年に限っては、
むしろ賢明な判断だったのかもしれません。
真夏の空き家査定って、けっこう大変なんです
そして、もう一つ。
真夏の空き家は
査定する側にとってもなかなか強烈です。
長期間閉め切っている。
電気を止めている。
当然エアコンも使えない。
窓を開けようと思ったら固くて開かない。
ようやく開いたと思ったら網戸がない。
築年数の古い家で2階へ上がると、
「ここサウナやったっけ?」
というくらい暑いこともあります。
そんな中で床下を見たり、天井を見上げたり、
雨漏り跡を探したりするわけです。
不動産査定もなかなか体力勝負です。
だから今回のように、
まず外観から概算査定をする。
それで価格帯に納得していただいてから、
涼しくなったところで室内を確認する。
そんな進め方があってもいいと思います。
「看板を出したくないから買取で」も立派な売却理由
もう一つ、この女性が
買取を希望した理由も興味深いところです。
「できるだけ高く売りたい!」ではありません。
「看板を出して長いこと売りたくない。
手っ取り早く売りたい」なんです。
不動産売却というと、とにかく
1円でも高く売るのが正解のように思われがちです。
でも人によって優先順位は違います。
近所に知られたくない。
何度も内覧に立ち会いたくない。
空き家の管理をもう終わらせたい。
多少安くなっても早く現金化したい。
こういう方なら、仲介より
不動産会社による買取の方が合う場合があります。
逆に時間がかかっても高値を狙いたいなら、
仲介を検討すればいい。
どちらが正解というより、
「自分は何を優先したいのか」ですね。
で、この長屋どうなったん?
実はこの記事を書いている時点では――
まだ概算査定の段階です。
これから外観や登記内容などをもとに、
おおよその買取価格を提示することになります。
その金額を女性が聞いて、
「それくらいならお願いします」
となれば、次はいよいよ室内確認です。
しかし、ここで一つ問題があります。
あの女性の言葉を思い出してください。
「日が上がっている間は動けません!」
10月に入り、ようやく暑さも落ち着いてきました。
「そろそろ中を見ましょうか」となればいいんですが……。
最近の大阪って、夏が終わったと思ったら、
秋が一瞬で終わりません?
「涼しくなりましたね~」なんて言っているうちに、
「寒なりましたね~」になっている。
果たしてこの長屋。
室内査定までたどり着くのはいつになるのでしょう。
私の予想では――冬です(笑)。
今回のQ&A
Q.空き家の買取査定は、最初から室内を見てもらわないとダメ?
必ずしも最初から必要とは限りません。
所在地や土地・建物の情報、外観、道路状況、
登記内容などから概算価格を出せる場合があります。
ただし正式な買取価格を決める段階では、
室内の状態確認が必要になるのが一般的です。
Q.一戸建てだと思っていたら長屋だった、なんてことある?
あります。
特に古い住宅では、
外観だけでは分かりにくいケースがあります。
今回のように一部が隣家とつながっている建物もあるため、
登記内容などを確認することが大切です。
Q.近所に看板を出さずに売却できる?
できます。
不動産会社による直接買取なら、一般向けに
大々的な販売活動をせず進められる場合があります。
ただし、一般的には仲介で市場に出す場合と
価格差が生じる可能性があります。
筆者の独り言
今年の夏は、不動産屋にもなかなか厳しい夏でした。
でも、「日が上がっている間は動けません」
という言葉は初めて聞きました。
これから高齢者が所有する空き家が増えていけば、
真夏の査定では「何時に来てもらうか」まで
考える時代になるのかもしれませんね。
無理して昼間に来てもらわなくても、
まず外から見られることもあります。
査定は逃げません。
家も逃げません。
暑い日は無理せず、できるところから進めましょう。
そして例の社長さん。
今日も朝と夜には
ワンちゃんの散歩へ行っていることでしょう。
この会社だけは、
どうやら犬の予定が最優先のようです(笑)。
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
- 宅地建物取引士
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