相続人全員が相続放棄した空き家はどうなる?査定現場で見た“誰のものでもない家”の行方
はじめに
「相続放棄をしたら、
その家はどうなるのでしょうか?」
不動産の査定や買取の仕事をしていると、
時々このような質問を受けます。
多くの方は、
「相続放棄したら終わり」
「誰も相続しなければ国のものになる」
と思われているかもしれません。
しかし実際の現場はもっと複雑です。
今回ご紹介するのは、
大阪市内で実際に査定した空き家の話です。
建物は長年放置され、老朽化が進んでいました。
所有者は既に亡くなっています。
そして相続人は全員相続放棄していました。
誰も住んでいない。
誰も相続しない。
誰も管理していない。
それでも建物だけは静かに残り続けています。
この空き家を見た時、私は
査定価格より先に別のことを考えました。
「この家は、これからどうなっていくのだろう」
今回は実際の査定現場で見たこと、
感じたことを交えながら、相続放棄された
空き家の行方についてお話しします。
査定依頼の始まり
ある日、関係者の方から相談を受けました。
「相続人全員が相続放棄した
空き家があるので見てもらえませんか」
不動産業界にいると相続案件は珍しくありません。
しかし相続人全員が放棄している
案件は決して多くありません。
資料を確認した時点で、
簡単な案件ではないことは分かりました。
一般的には、
・子どもが相続する
・兄弟姉妹が相続する
・甥や姪が相続する
という流れになります。
しかし今回は違いました。
結果的に誰も引き継がなかったのです。
現地へ向かう
査定当日。
大阪市内の住宅地へ向かいました。
最寄駅から歩いて現地へ向かう途中は、
ごく普通の街並みです。
学校帰りの子どもたち。
買い物帰りのご夫婦。
自転車で走る学生。
普段の大阪の風景です。
しかし目的地へ近づくにつれて空気が変わりました。
遠くからでも分かるほど、
人の気配がありません。
建物は長い時間を
そのまま閉じ込めたような雰囲気でした。
玄関が開かない
査定を始めようとして
最初に困ったのは建物の状態ではありません。
玄関が開かないのです。
鍵が見当たりません。
関係者の方も探したそうですが
発見できなかったとのことでした。
空き家では珍しくありません。
所有者が亡くなり、管理する人がいなくなると、
「そもそも鍵がどこにあるのか分からない」
という事態が起きます。
結局、関係者立会いのもとで
別の方法から建物へ入ることになりました。
不動産査定というと価格を付ける仕事だと
思われがちですが、実際には建物へ入るまでに
苦労することもあります。

建物より気になったもの
建物内部は長期間放置された空き家特有の空気でした。
静かです。
人の生活が止まってから
長い時間が経っていることが分かります。
しかし私が気になったのは
建物の状態ではありませんでした。
この家にも、かつては人の暮らしがあったはずです。
家族がいた。
食卓があった。
笑い声もあったでしょう。
それが今では誰もいません。
不動産査定をしていると、時々建物ではなく
人生を見ているような気持ちになります。
実は相続登記を進めようとしていた人がいた
今回の話で印象的だったのはここです。
関係者から聞いた話によると、
過去には親族の一人が相続登記を
進めようとしていたそうです。
つまり最初から放置する
つもりだったわけではありません。
何とかしようとしていた人がいたのです。
しかし相続は人が多くなるほど難しくなります。
一人が頑張っても進まないことがあります。
相続人全員の協力が必要になる場面もあります。
その過程で意見がまとまらなかったのかもしれません。
手続きが進まなかったのかもしれません。
詳細は分かりません。
しかし結果として相続登記は完了せず、
最終的に相続放棄という結論になったそうです。
私はその話を聞いて少し切なくなりました。
頑張った人がいた。
それでも解決できなかった。
相続の現場では珍しくない話です。
相続放棄とは何か
相続放棄とは、亡くなった方の
財産も借金も引き継がない手続きです。
家庭裁判所へ申述し認められることで成立します。
一般的には、
・借金が多い
・遠方で管理できない
・建物が老朽化している
・固定資産税負担が大きい
などの理由があります。
今回の物件も管理や維持の負担が
大きかったのかもしれません。
相続放棄したら家は消えるのか
答えは違います。
建物は残ります。
ここが多くの方の誤解です。
人は亡くなります。
相続人も放棄します。
しかし家は残ります。
だから空き家問題は難しいのです。
近隣住民の本音
現地調査中、近隣の方とも話しました。
長年放置された空き家です。
当然ながら様々な意見がありました。
不安もあるでしょう。
不満もあるでしょう。
近隣から見れば、
「なぜ放置するのか」
と思うのも自然です。
一方で相続人側にも事情があります。
遠方に住んでいる。
高齢で動けない。
手続きが複雑。
費用負担が大きい。
外から見れば放置に見えても、その裏には
解決できなかった事情があることも少なくありません。
空き家は時間とともに価値を失う
人が住まなくなった家は驚くほど早く傷みます。
換気されない。
掃除されない。
修理されない。
その結果、
雨漏り・シロアリ・腐食・害虫・雑草
といった問題が発生します。
査定現場では、
「10年前なら何とかなったかもしれない」
と思うことがあります。
しかし放置期間が長くなるほど選択肢は減っていきます。
誰も買わない空き家は存在する
不動産会社だから何でも買うわけではありません。
正直に言えば、
「これは難しい」
と判断する物件もあります。
再建築不可。
接道問題。
権利関係。
老朽化。
様々な要因があります。
世の中には本当に誰も欲しがらない
不動産が存在します。
では誰も買わなかったらどうなるのか
これが本題です。
相続人がいない。
買い手もいない。
建物だけが残る。
その場合、家庭裁判所で
相続財産清算人が選任されることがあります。
弁護士などが財産を整理し売却活動を行います。
しかし売却できるとは限りません。
価格を下げても難しいことがあります。
それが空き家問題の現実です。
行政も簡単には動けない
「危険だから解体すればいい」
そう思うかもしれません。
しかし所有権がある以上、簡単にはいきません。
行政も法律に従って動かなければなりません。
だからこそ時間がかかります。
今後増えていく問題
単身高齢者は増えています。
子どもがいない世帯も増えています。
親族との付き合いが少ない人も増えています。
つまり今回のような案件は
今後さらに増える可能性があります。
決して特殊な話ではありません。
査定現場で感じたこと
私はこの家を見ながら考えていました。
この家を建てた人がいた。
ここで暮らした人がいた。
家族の時間があった。
しかし今は誰もいない。
建物だけが残っている。
不動産は単なる資産ではありません。
人の人生そのものです。
だからこそ、生きているうちに
考えることが大切なのだと思います。
まとめ
相続人全員が相続放棄した空き家は、
すぐに国のものになるわけではありません。
様々な手続きを経て整理されることになります。
しかし、その過程は決して簡単ではありません。
今回の査定で見た空き家も、多くの人が関わり、
多くの事情が積み重なった結果として残されていました。
空き家問題は建物の問題ではありません。
人の人生の問題です。
そしてその問題は、亡くなった後ではなく、
生きているうちから始まっています。
不動産売買等でのよくある質問
相続人全員が相続放棄したら家はどうなりますか?
家庭裁判所で相続財産清算人が選任される場合があります。
相続放棄したら子どもへ相続権は移りますか?
ケースによります。
相続放棄と代襲相続は別の制度のため個別確認が必要です。
誰も買わない空き家はありますか?
あります。
立地や権利関係によって
売却が非常に難しいケースも存在します。
老朽化した空き家でも売却できますか?
可能な場合があります。
まずは現状を把握することが大切です。
空き家を放置するとどうなりますか?
老朽化や近隣トラブルの原因に
なるため早めの対応がおすすめです。
- 不動産キャリア29年
- 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
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