見えない敵と戦う不動産仲介営業!3ヶ月契約0の社員が挑む満額(値下げなし)への道!【前編】 ~なぜ3,000万円の買付話がまとまらなかったのか?~

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不動産仲介営業とは、売主さんと買主さんの間に入り、

双方の希望を調整して契約へ導く仕事です。

 

買主さんから価格交渉が入れば売主さんへ相談し、

売主さんが難色を示せば、今度は買主さんに

もう少し頑張ってもらえないかお願いする。

 

条件を少しずつ近づけ、最後に売買契約へたどり着く。

 

言葉にすると簡単ですが、実際にはなかなか大変です。

 

今回登場する営業マンも、

売主さんと買主さんの間を何度も往復しました。

 

しかも、彼が戦う相手は、

目の前にいる売主さんだけではありません。

 

営業マン自身も気づいていないことが・・。

 

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3ヶ月契約ゼロの崖っぷち営業マン

 

今回の舞台は、

売出価格3,280万円の中古マンションです。

 

売主さんは60歳の女性。ご主人との二人暮らしで、

二人の子どもはすでに結婚し、孫も二人います。

 

以前は家族でこのマンションに住んでいましたが、

その後、一戸建てを購入。

マンションは賃貸に出していました。

 

賃借人が退去して空き家になったことをきっかけに、

売却することになったのです。

 

この売却を任された営業マンには、

できれば知られたくない悩みがありました。

 

ここ3ヶ月間、契約ゼロ。

 

不動産営業の世界でいう「坊主」です。

 

内覧や商談はあるのに、最後の最後で契約まで進まない。

会社へ戻ると、課長が待っています。

 

「今月、契約の見込みはあるんか?」

「はい。何件か追客しています」

 

「その何件かは、いつ決まるんや?」

「引き続き頑張ります……」

 

営業マンにとって、

「引き続き頑張ります」は便利な言葉です。

 

具体的なことは何も言っていませんが、

ひとまず会話を終わらせることができます。

 

ただし、毎日使っていると課長にも効きません。

 

「その言葉、昨日も聞いたぞ!」

 

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怒りたいけど、怒り切れない課長

 

課長も、昔から不動産営業の世界で生きてきた人です。

 

昔なら、

 

「契約取れるまで帰ってくるな!」

 

「夜中まで電話して追客せえ!」

 

くらいのことを平気で言われました。

 

課長自身も若い頃、3ヶ月も坊主が続けば、

上司から毎日フルボッコにされていたのでしょう。

 

もちろん、本当に殴られるという意味ではありません。

 

朝から晩まで詰められ、電話をかけ、

訪問し、事務所へ戻ればまた詰められる。

 

そんな時代です。

課長も本音では言いたい。

 

「昔なら、夜中まで追客させられてたぞ!」

 

「ワシなんか3ヶ月坊主やったらフルボッコや!」

 

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しかし、今は言い方を間違えれば、

 

「それ、パワハラですよ」

「人事へ相談します」

 

となりかねません。

 

昔、自分が言われた通りに部下を叱ったら、

翌日は課長のほうが人事に呼ばれるかもしれません。

 

結局、課長から出たのは、

「まあ……もうちょっと頑張ろか」

 

という、ずいぶん丸い言葉でした。

 

営業マンも小さく答えます。

「はい。引き続き頑張ります」

 

「やから、その言葉は昨日も聞いたっちゅうねん!」

 

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3,280万円は少し高い?

 

マンションの売出価格は3,280万円。

 

売主である娘さんは、

売却相談の時から営業マンに話していました。

 

「3,000万円を超えて売るのは、なかなか難しいでしょうね」

営業マンも、周辺相場から考えて同じ意見でした。

 

不動産は、売出価格で必ず売れるわけではありません。

 

少し高めから販売を始め、問い合わせや内覧の反応を見る。

 

買主さんから価格交渉が入れば、

売主さんと相談しながら着地点を探します。

 

営業マンは、

「3,000万円前後でまとまれば、十分ええところやろな」

と考えていました。

 

娘さんも、同じ認識のように見えました。

 

それなら、あとは購入希望者を探すだけです。

 

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ついに3,000万円の買付けが入った!

 

販売を続けていると、一組の購入希望者が現れました。

 

内覧したマンションを気に入り、

買主さんから正式な話が入ります。

 

「3,000万円ちょうどなら購入したいです」

 

売出価格3,280万円に対し、280万円の価格交渉です。

小さな金額ではありません。

 

しかし娘さん自身が、

「3,000万円を超えて売るのは難しい」と話していました。

 

営業マンは、十分まとまる可能性があると考えました。

娘さんへ報告すると、反応も悪くありません。

 

「3,000万円ですか。ええお話ですね」

 

その言葉を聞いた瞬間、営業マンの頭の中では、

すでに契約書の製本が始まりました。

 

3ヶ月間、契約ゼロ。

ようやく坊主から脱出できます。

 

会社へ戻ると、さっそく課長へ報告しました。

 

「3,000万円の買付けが入りました。

売主さんの感触も悪くありません!」

 

課長の顔が少しだけ緩みます。

「そうか。今度こそ、きっちりまとめろよ」

 

「はい!」

 

久しぶりに営業マンの明るい返事が、

事務所中へ響きました。

 

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翌日、話がひっくり返った

 

翌日、娘さんから電話が入りました。

 

営業マンは、3,000万円の価格交渉を

承諾してくれる連絡だと思いました。

 

ところが、返ってきたのは予想外の言葉です。

「主人が反対していますので、今回はお断りします」

 

「えっ?」

 

昨日は「ええお話ですね」と言っていました。

 

娘さん自身も、3,000万円を超えるのは

難しいと分かっていたはずです。

 

それが一晩たっただけで、話がひっくり返りました。

 

営業マンは簡単に諦められません。

 

何より、会社へ戻れば課長が待っています。

 

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買主さんが3,100万円まで頑張った!

 

営業マンは、今度は買主さんへ相談しました。

 

「売主さんが3,000万円では難しいと言われています。

もう少しだけ上げていただけませんか?」

 

100万円は大きな金額です。

 

それでも買主さんは、

このマンションを気に入っていました。

 

家族で話し合い、資金計画を見直し、

3,100万円まで上げてくれることになりました。

 

営業マンは思いました。

「ここまで頑張ってくれたら、今度こそいける!」

 

娘さん夫婦と会い、反対しているという

ご主人にも直接お願いしました。

 

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「買主さんも、かなり頑張ってくれました。

3,100万円で何とかご検討いただけませんか?」

 

ところが、ご主人はなぜか他人事のような顔をしています。

 

「営業さんも大変やなぁ……」

 

いやいや、あなたが反対していることに

なっているんですけど!

 

営業マンは心の中で叫びました。

 

しかし、ご主人は賛成とも反対とも言わず、

娘さんの顔を見ながらお茶を濁すばかりです。

 

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「下げる気なかったら、最初から言うてくれや」

 

後日、娘さん夫婦から出た答えは、

やはり「売らない」でした。

 

買主さんは、3,000万円から3,100万円まで頑張ってくれました。

 

それでも売主側が応じないのであれば、

これ以上の交渉はできません。

 

せっかく現れた買主さんも、ついに諦めてしまいました。

 

3,000万円でも駄目。

 

3,100万円まで上がっても駄目。

 

娘さんは最初、「ええお話ですね」と言っていた。

それなのに、翌日にはご主人が反対しているという。

 

営業マンは、訳が分からなくなりました。

 

「下げる気なかったら、最初から言うてくれや……」

 

もちろん、売主さんに直接そんなことは言えません。

 

「承知しました。また引き続き頑張ります」

電話では、明るく元気に答えました。

 

しかし電話を切った瞬間、机に突っ伏しました。

 

 

そこへ課長の声が飛んできます。

「で、あのマンションはどうなった?」

 

「……駄目でした」

 

課長は一度、天井を見上げました。

本当なら、言いたいことは山ほどあります。

 

「3ヶ月も何しとんねん!」

 

「昔なら夜中まで追客させられてたぞ!」

「ワシの若い頃ならフルボッコや!」

 

しかし、全部言えば、

明日は課長のほうが人事に呼ばれるかもしれません。

 

課長は怒りを腹の中へ押し込み、

できるだけ優しい声で言いました。

 

「……今月、どうしようか?」

 

それはこっちが聞きたい。

 

営業マンは、まだ知りませんでした。

 

娘さん夫婦のさらに後ろに、売出価格3,280万円を

一円たりとも下げたくない人物がいることを。

 

見えない敵との戦いは、

まだ始まったばかりだったのです。

 

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次回予告

 

3,100万円の購入希望を逃し、

再び振り出しに戻った営業マン。

 

売主さんは、3,000万円以上では難しいと分かっている。

 

反対しているというご主人は、なぜか他人事。

 

それでは、いったい誰の意思で

価格交渉が拒否されたのでしょうか。

 

後日、売主さんを訪ねた営業マンは、

そこで初めて“ある存在”に気づきます。

 

次回、見えない敵の正体と、崖っぷち営業マンはいかに・・。

筆者松本 親幸
  • 不動産キャリア29年
  • 株式会社フォローウィンドコーポレーション代表取締役
  • 宅地建物取引士
個人的には今までの不動産業経歴において1,500件超のお取引に関わっております。
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若い時にはリフォームの仕事も経験済。
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