長屋の“隣家トラブル”の裏側 ――役所担当者が語る、放置空き家の現実と売却の最終手段
【最初に】
本記事では、大阪市内の長屋・連棟住宅における空き家放置の典型的なトラブルについて、役所(空き家対策担当)職員の視点から解説します。
老朽化、雨漏り、隣家クレーム、行政への通報、改善指導。
これらは決して “特殊なケース” ではありません。
むしろ、近年の大阪市では 「長屋×相続×放置」
の三点セットが急増しています。
本記事を読むことで、
・長屋を放置すると何が起こるか
・行政がどのタイミングで動くのか
・所有者が背負うことになるリスク
・最終的にどう解決すべきなのか
を、現場の実態として理解できます。

【役所目線】大阪市で最も多い“空き家トラブル”は「長屋の雨漏り」
長屋・連棟住宅は大阪に多く残る伝統的な住宅形態ですが、
空き家になると 隣家への影響が非常に大きい のが特徴です。
■ 長屋は「1軒の老朽化」=「周囲の老朽化」
役所職員として現場を回っていると、長屋の構造上、
以下のような問題が頻繁に発生します。
- 壁を共有している(※共同壁)ため雨漏りが伝播する
- 老朽化が隣家にも“同時進行”する
- 修繕工事が困難で、そもそも業者が入りにくい
- 屋根の傾きが両方に影響
- 雨樋の破損が隣家側の浸水につながる
行政としても、長屋の空き家連絡が入ると「これは
早めに対応しないと広がる」と緊張感を持ちます。

【ケースの流れ】最も多い通報のパターン(役所の体感)
実際に市民から寄せられる通報は、
次のような順番で起きることが多いです。
① まず“隣家”から通報が入る
例:
「隣の長屋が雨漏りして、うちの壁が濡れている」
「カビが出てきた。持ち主に連絡がつかない」
「古い木材が落ちてきて危ない」
役所としては“隣家の生活に被害が出ている” と
判断した段階で現地調査を行います。

② 現場確認すると“明らかに放置状態”
典型的には、次のような状態が見られます。
- 雨樋が外れている
- 壁がにじむレベルの雨漏り
- 屋根瓦のズレ
- 郵便物・チラシの大量堆積
- 玄関ドアの錆、破損
- 庭の雑草が1m以上
職員としても「このままでは危険」
と判断せざるを得ません。
③ 所有者に連絡するが“つかない” or “相続してから触れない”
所有者へ連絡すると、多くはこう返ってきます。
- 「相続して3年触っていません」
- 「荷物がそのままで誰も住めません」
- 「どうしたらいいのか分からなくて…」
- 「修繕費が払えません」
- 「家の中を見るのがつらくて」
行政としては責めませんが、
そこから事務的な説明が必要になります。

④ 隣家への苦情が続き、行政指導へ進行
役所が行うのは、次のような段階的な対応です。
- 現地調査
- 所有者へ状況説明
- 改善のお願い(任意の協力依頼)
- 放置の場合、改善指導
- 危険性が高い場合、法的措置の検討
ただし行政は “修繕費を払ってくれる”
“代わりに工事する” ことはできません。
最終的には 所有者自身が動く必要があります。

【典型例】相続長屋を3年放置 → 雨漏り → 隣家クレーム → 行政連絡
ここで、役所担当者の視点で実際に非常に多い
「典型パターン」 を紹介します。
(仮)坂下職員の現場メモのような形式で解説します。
■ ケース:雨森さん(仮名・64歳)
状況
- 大阪市内の長屋を相続
- 気持ちが追いつかず3年放置
- 荷物はそのまま
- 屋根の劣化が進行
- 豪雨の日を境に雨漏りが悪化
- 隣家がシミに気付き通報
- 市役所空き家担当に連絡が入る
職員視点
「これは典型的。長屋×放置×雨漏りは、
他の家にも連鎖しやすい。
放置期間3年以上は、老朽化が急に加速していることが多い。」

【行政の実務】所有者の心理は“怠慢ではなく、整理が追いつかないだけ”
空き家担当をしていると、所有者が
悪いわけではないことを痛感します。
多い理由はこうです。
① 相続直後は精神的に動けない
- 親の荷物を見るのがつらい
- 相続手続きで疲弊している
- 建物を触る気持ちになれない
行政はこの心情を理解しています。
② 長屋の構造が分からない「どうしていいか分からない」
実際、長屋の雨漏り・共有壁は専門知識が必要。
一般の方では判断が困難です。

③ 修繕費が高く、踏み出せない
雨漏り修繕は数十万円〜数百万円。
高齢者単身では負担が重い。
④ コミュニケーション疲れで“後回し”に
- 隣家に説明できない
- 家族と話がまとまらない
- 気まずさから放置
結果として「動けない」状態になる人が多いです。

【行政の限界】役所は“できること”と“できないこと”が明確にある
市民の方が誤解しやすいポイントなので
役所視点で正確に説明します。
■ 役所ができること
- 空き家の状態確認
- 所有者への連絡
- 隣家トラブルの情報整理
- 改善指導
- 法的措置の手続き(危険性が高い場合)
- 売却・相続の案内(一般論)
■ 役所ができないこと
- 修繕費の負担
- 所有者の代わりに修繕する
- 売却代行
- 近隣とのトラブル解決の “仲裁人”
- 特定の不動産会社の紹介(中立性のため)
行政としては「所有者が動けるように
案内すること」が役割です。

【現場の本音】最終的には“売却”が最も現実的な解決策になる
役所の空き家担当として現場を見ていると、雨漏り・長屋・老朽化という条件が揃うと、最終的には売却が最も負担が少ない と感じるケースが多くあります。
理由①:修繕費が高額で、効果が限定的
老朽化した長屋は修繕しても他の部分が次に壊れます。
理由②:隣家トラブルが早期に収束する
所有者が変わると、役所の改善指導が新所有者に
引き継がれ、問題解決が加速します。
理由③:荷物そのまま・現状のまま取引できる場合もある
高齢者の方に多い負担(片付け・修繕)を
避けることが可能です。
理由④:行政としても「リスクの連鎖」を止められる
長屋は構造上、1軒の劣化が隣家 → その隣 →
さらにその隣と domino的に広がります。
所有者が売却し、プロの管理に移ることで
地域の安全性が向上します。

【所有者へ】空き家トラブルを避けるための“役所職員からのアドバイス”
行政の立場から、空き家放置によるトラブルを
避けるための最も効果的なポイントをまとめます。
① 早期に相談する(相続後1年以内が理想)
放置期間が短いほど、修繕費も被害も少ないです。
② 雨漏りは“即対応”が鉄則
長屋では雨漏りは隣家被害に直結します。
③ 売却と修繕は「比較して判断」
- 修繕費
- 売却価格
- 放置リスクを総合的に判断する必要があります。
④ 役所の案内を怖がらない
改善指導の連絡を「怒られている」と誤解する方が
多いですが、行政の目的は “解決のための情報提供” です。

まとめ:長屋の放置は、早期の判断が“あなたと隣家”を守る
役所の現場から見える現実は、次の一言に尽きます。
長屋は、1軒を放置すると、必ず周囲を巻き込む。
そして、雨漏り・老朽化・隣家クレーム・役所連絡と
いう流れは大阪市内で非常に多い典型パターンです。
しかし、所有者が動き出せば解決は必ず前に進みます。
- 修繕
- 売却
- 手続き
- 相談
どれも、最初の一歩さえ踏み出せば
負担は大きく減っていきます。

不動産売買等でのよくある質問
■ 空き家の相談や現地確認は無料ですか?
一般的に、相談や現地確認は無料のケースが多いです。
ただし業者によって費用が発生する場合がありますので、
事前に確認することを推奨します。
■ 長屋・連棟住宅でも売れますか?
売却は可能です。
ただし長屋は構造上の制約が多く、
仲介よりも買取に向くケースが多いです。
評価は企業ごとに大きく異なります。
■ 雨漏りや老朽化があっても売れますか?
売却は可能です。
雨漏り・破損・荷物残しの状態でも取扱う会社があります。
■ 役所から連絡が来たらどうすべき?
連絡を無視しないことが最重要です。
対応が遅れると被害や行政指導が進むため、
早めの相談・現地確認を推奨します。
■ 相続登記が完了していなくても相談できますか?
相談自体は可能です。
ただし売却には相続登記が必要となるため、
早期の手続き開始を推奨します。

