🏠空き家手数料の増加で“不動産業者が仲介を推す”ワケとは? ― 長屋・低廉物件のリスクヘッジと、売主が損しないための判断軸 ―
はじめに:なぜ最近「仲介ばかり勧められる」のか?
2025年現在、空き家を売りたい人の
多くが感じていることがあります。
それは――どの不動産会社に相談しても
「買取より仲介のほうがいいですよ」と勧められる点。
特に長屋・連棟住宅・老朽化した
低廉な空き家では、その傾向が顕著です。
「現金買取してくれる業者が見つからない」
「仲介で売るしかないと言われた」
――そんな声も増えています。
では、なぜ不動産会社は“買取”を避け
“仲介”を推すのでしょうか?
そこには、手数料制度の変化と
リスクヘッジの論理が隠れています。
本記事では、
- 不動産会社が買取を避ける3つの理由
- 長屋・低廉物件が「リスク」とみなされる構造
- 仲介を選ぶ際の注意点と、売主が損しないための戦略
を、最新の制度と市場動向に基づいて解説します。

第1章:不動産会社が“仲介”を好む3つの現実理由
1-1. 手数料上限33万円(片手)制度が「利益を保証」する構造に
2024年に国土交通省が改定したガイドラインにより、**低廉な空き家(売買価格400万円以下)**に対しては、仲介手数料の上限が明確に「33万円(税込)」まで認められるようになりました。
つまり、
- 売主から最大33万円
- 買主から最大33万円
- → 合計66万円(両手取引)
という構造で、不動産会社にとっては
「確実に手数料が入る仕組み」が整ったのです。
かつては、300万円の長屋を売っても「手数料10万円ほど」しか取れず、採算が合わないため敬遠されていました。
しかし今は、33万円+33万円=66万円の手数料収入が見込めるため、わざわざリスクを負って買取をするより、
「仲介で両手を狙った方が確実で安全」という経営判断になるのです。

1-2. 両手仲介(売主・買主の双方から報酬)
という“リスクゼロのビジネスモデル”
不動産会社にとって最も理想的なのは、
**両手仲介(=自社で買主も見つける)**です。
この場合、1件の売買で2方向から手数料が入るため、
再販リスク・在庫コスト・税金の負担が一切ありません。
たとえば、
大阪市内の築古長屋を300万円で売却する場合――
| 区分 | 手数料上限 | 合計 |
|---|---|---|
| 売主から | 33万円 | |
| 買主から | 33万円 | |
| 合計 | 66万円 |
たとえ300万円の物件でも、仕入れリスクなし・持ち出しなし・在庫負担ゼロで66万円の利益が生まれます。
買取を行えば、修繕費・登記費・税金・広告費がかかる一方で、仲介なら何も抱えず「契約成立=利益確定」。
この構造こそ、仲介を勧める最大の理由です。

1-3. “在庫を持たない”ことがリスクヘッジ
2025年現在、不動産市場は物価高・金利上昇・建材高騰など、コストリスクが高止まりしています。
この中で、**低廉な空き家や長屋は
「再販しても儲からない」**ケースが増加。
さらに、老朽化や接道問題を抱えた物件は、
再建築不可で資産価値も限定的。
つまり、不動産会社から見ると――
「安く買っても、売れなければ赤字」
「それなら仲介で確実に手数料を取ったほうがマシ」
という合理的な選択になるのです。

第2章:長屋・低廉な空き家が“買取対象外”になる理由
2-1. 再建築不可・狭小地という法的ハードル
長屋や連棟住宅は、多くが
**建築基準法の接道義務(2m以上)**を満たしていません。
このため、「再建築不可物件」として扱われ、
住宅ローンの対象外にもなりやすいのです。
再販できる買い手が限られるため、買取業者にとっては**“出口戦略がない=リスク物件”**と判断されます。
2-2. 共有壁・解体コストの高さ
長屋の特徴である「隣家と壁を共有する構造」は、
解体時のコストを大きく押し上げます。
隣家との協議や補修工事が必要なため、
解体費200〜300万円に達することも。
安く仕入れても、その後の支出が読めない――
これも買取を避ける理由のひとつです。
2-3. 瑕疵リスク(火災跡・雨漏り・地盤沈下など)
老朽化した空き家は、
売買後に不具合(瑕疵)が発覚することがあります。
買取業者は瑕疵担保(不具合責任)を負うリスクを回避するため、最初から「買取不可」と判断することが多いのです。

第3章:仲介を選ぶ際に知っておくべき注意点
3-1. 売却まで時間がかかる
仲介は「買い手が見つかるまで」が勝負。
長屋や低廉物件は需要が限られるため、
3ヶ月〜1年以上かかることもあります。
3-2. 両手狙いによる「囲い込み」リスク
一部の業者は、自社で買主を見つけて両手取引を狙うため、他社からの買い手情報を**意図的にブロック(囲い込み)**することがあります。
売主が知らないうちに「売れるチャンスを逃している」可能性もあるため、複数の会社に査定を依頼し、情報の透明性を確保しましょう。
3-3. 仲介手数料の支払いタイミング
仲介手数料は「契約成立時」に発生します。
売却が決まらなければ、費用は原則ゼロですが、
一方で時間的ロスや管理コストは売主側に残ります。

第4章:買取の利点と注意点
4-1. 最大のメリットは「即現金化」
買取は、スピードと確実性が最大の強みです。
査定から最短数日で契約・現金化が可能で、
相続や後見人の案件など「時間優先」のケースに最適。
4-2. 買取価格が安く見える理由
買取業者は、
再販リスク・修繕費・税金をすべて織り込みます。
そのため「仲介より安くなる」のは自然な構造で“買い叩き”ではなくリスクを価格に反映しているのです。
4-3. 売主に向くのはどんなケース?
- 相続した空き家を早く整理したい
- 遠方で管理ができない
- 解体・清掃の費用をかけたくない
こうした場合は、確実に現金化できる買取が合理的。

第5章:売主が損を防ぐ3つのリスクヘッジ
5-1. 「なぜ買取ではなく仲介なのか」を質問する
業者が仲介を勧めたら、必ず理由を聞きましょう。
リスク説明が曖昧な場合、その業者は
**“自社都合で動いている”**可能性があります。
5-2. 長屋・低廉物件専門の業者を比較する
一般的な仲介会社では扱いが難しくても、
「再建築不可・長屋専門」の買取業者は存在します。
査定依頼を2〜3社比較し、価格差だけでなく
説明内容の透明性を確認しましょう。
5-3. 価格だけでなく「条件」で判断する
- 解体不要
- 現状渡し可
- 税金・測量サポート付き
こうした条件を含めて総合判断すれば、
単純な金額差以上にメリットが見えることがあります。

第6章:まとめ ― 両手33万円×2の構造を理解しておこう
不動産会社にとって「仲介で両手取引(売主33万円+買主33万円=合計66万円)」は、リスクなし・在庫なし・即利益確定という理想的な構造です。
だからこそ、買取を避けて
仲介を推す業者が増えているのです。
一方で、売主側にとって重要なのは、「時間を優先するのか」「価格を優先するのか」「確実性を優先するのか」。
目的を整理すれば、
- 早く手放したい → 買取
- 時間をかけても高く売りたい → 仲介
と、自分に合った選択が見えてきます。
不動産売却・空き家に関するよくある質問
査定や相談は無料ですか?
多くの業者は無料ですが、測量や解体見積もりが
必要な場合は別途費用がかかることもあります。
古い長屋や連棟住宅でも売れますか?
再建築不可でも売却可能です。
専門業者や投資目的の買主をターゲットにすることで
成立するケースが多いです。
火災跡や事故のあった家は買い取ってもらえますか?
「訳あり物件専門」の買取業者なら対応可能です。
通常の仲介では敬遠されがちです。
仲介手数料の上限は?
400万円以下の低廉な空き家の場合、
売主・買主それぞれ上限33万円(税込)です。
両手取引なら最大66万円となります。
仲介と買取、どちらが得?
「早く現金化したい」「手間をかけたくない」なら買取、
「時間をかけても高く売りたい」なら仲介です。

