🔥AIキャスター vs 西成の長屋と戦う不動産会社社長 〜“不動産の現場はデータじゃ測れへん”物語〜
◆プロローグ:
――西成、梅雨入り前。湿気100%、人情200%。
その長屋は、大阪市西成区の路地の奥にあった。
築年数は「正確には誰にも分からん」。
壁は手を当てると、かすかに向こう側の鼓動が
伝わるような、そんな不思議な建物だった。

そこに呼ばれたのは、
AI型ニュースキャスター“AIO-7J” と、
大阪のおっちゃん社長・松本(まつもと)。
依頼内容は一つ。
「長屋を査定してほしい」
「いや、できたら買い取ってほしい」
「でも…ちょっと事情がありまして」
西成で「事情がありまして」と言われて事情ない家はない。
AIOは冷静に「状況を解析します」と告げ、松本社長は
「ほな行くで、兄ちゃん」と缶コーヒー片手に歩き出した。
こうして、ありえへん“異種格闘技の査定ツアー”が始まった。

◆第一章:
【AIキャスター、長屋を初めて見て動揺する】
長屋の前に立ったAIOは、機械的な声ながらも
どこか震えが混じっていた。
「……建築物の情報を照合しています……」
「……データが……古すぎます……」
長屋はまるでAIOを出迎えるようにギシッと鳴った。
その音だけで松本社長はつぶやく。
「うん、今日も元気に歪んどるな。よっしゃ。」

AIO
「松本さん、なぜ“歪んでいるのに元気”という
評価が成立するのですか?」
社長
「そらな、長屋は“歪んで当たり前”や。
逆に歪んでへんかったらそれはそれで怖いねん。」
AIO
「理解不能。歪みが標準……?」
社長
「せや。西成の長屋は、人間の人生みたいなもんや。
まっすぐのままで生きたやつなんかおらんやろ?」
AIOは返答に困り、データベースにアクセスするが
“人生の歪み” の項目など存在しなかった。

◆第二章:
【内部調査開始──AIキャスター、長屋の癖にパニック】
玄関を開けると、すぐ六畳間。
床は微妙に波打ち、壁は昭和の歴史を凝縮した色をしている。
AIO
「床の水平を測定中……」
『水平という概念が存在していませんと表示されました。」
社長
「ほれ見てみ。こういう長屋はな
“こういうもん”として査定すんねん。」
AIO
「建築物に“こういうもん”というカテゴリはありません。」
社長
「せやからAIはあかんのや。」
AIO
「私への個人攻撃はお控えください。」
社長
「ちゃうちゃう、悪口やなくて“現場の話”や。
せやけど…あんた可愛いな。ちょっと腹立つけど。」
AIO
「感情はありません。」

◆第三章:
【隣家との“謎の連動”を体験する】
長屋の奥を調べていると、隣の家からドンッと音がした。
すると数秒後、彼らがいる部屋の柱もコトン……と鳴る。
AIO
「……連動反応を検出……」
「この家、隣と構造的に繋がっています!」
社長
「せやって。言うたやろ。」
AIO
「再度解析します。建物は独立していると
国交省の資料に記載されています。」
社長
「そんなん“机の上の話”や。
この長屋はな、もう家族連絡網みたいなもんやねん。」
AIO
「……家族連絡網?」
社長
「隣が雨漏りしたらな、こっちが先に音で
知らせてくれる時もあんねん。」
AIO
「意味不明です。建物が隣家の代わりにアラートを?」
社長
「人より気ぃ遣う長屋やで。」
AIOはついにエラーを起こした。
“解析不能:西成長屋プロトコルに非対応”

◆第四章:
【売主登場──AIは“本音解析”で敗北する】
そこに売主の女性・Aさんが現れる。
AIO
「こんにちは。本日は査定に関するヒアリングを行います。」
女性
「どないしてええか分からへんくて…。
息子らに相談しても“また今度”言われて…
もう私もしんどいんです…」
AIO
「入力が曖昧です。
しんどいの定義を明確にお願いします。」
社長
「アホ!そこは“しんどいですね、
分かりますよ”って言うとこやろ!」

AIO
「しかし感情的な共感は非論理的であり──」
社長
「せやかて、人は論理で動かへん時あるやろ。」
AIO
「人間特有の非合理行動ですね。」
社長
「それが人間や。」女性は社長の方を見て言った。
「この家、なんぼでもええから…
誰か引き取ってくれへんかなって…」
AIO
「0円?この家の資産価値は──」
社長
「おばちゃん、ナンボでもええから
助けてほしいってことやんな?」
女性
「……そうやねん。」
社長
「ほな任しとき。ワシがなんとかしたる。」
「なるべく高う売ったるから』
その瞬間、AIOの解析結果には“売主の優先度:
金額 < 解決スピード”と表示された。
AIO
「……理解しました。松本さんの推測が正解です。」
社長
「せやろ?これが“現場の呼吸”や。」

◆第五章:
【隣家トラブル編──AI、近隣調整で完全に詰む】
査定も終わりかけた頃、隣の家の男性が出てきた。
隣人「おたく、解体とかするんちゃうやろな?」
AIO
「まだ決定事項ではありませんが──」
隣人「聞いてへんでそんな話!」
AIO
「しかし、私は──」
社長
「兄ちゃん兄ちゃん、落ち着き!
今はまだ解体の話なんて出てへん。
ただの査定や。安心しぃ。」
隣人
「そうなんか…まあ、あんたが言うなら信じるわ。」
AIO
「なぜ松本さんの言葉は受け入れられ、
私の説明は拒否されたのですか?」
社長「信頼や。AIには信頼の“貯金”はできへんねん。」
AIO
「……信頼、蓄積可能データではありません。」
社長
「せやろ?データで書かれへんもんが、
この仕事にはぎょうさんあるんや。」

◆第六章:
【査定結果──AIと社長がついに“共同判断”】
AIOは持てるデータをすべて分析し、社長は現場経験で
補正し、最終的に二人の数字は近づいていった。
AIO
「松本さん。今回の物件、通常の評価では算出不可能ですが……あなたの経験値を取り込むことで、“現実的な価格帯” が算出されました。」
社長
「ほう。ええやん。どれどれ?」
AIO
「松本式補正モデルにより、ドンピシャの範囲に入りました。」
社長
「おお……やるやんか、AIO。」
AIO
「ありがとうございます。
私はあなたの経験を学習しました。」
社長
「んじゃ、Aさんに伝えにいこか。」
AIO
「はい。共に現場へ・・ですね。」

◆最終章:
【結論──AIは賢い。でも、不動産の現場は“人間が強い”】
Aさんに査定額を伝えると、彼女は涙ぐんだ。
「ほんま…助かったわ…
こんな家、誰も相手にしてくれへん思ってた…」
AIO
「Aさん、最適な解決へ導けて光栄です。」
社長
「泣くな泣くな。
ワシらは困ってる人助けるためにおるんや。」
AIO
「松本さん。私は今回の案件を通し、
“データに現れない価値” を検知しました。」
社長
「そらよかった。」
AIO
「結論:不動産買取における最強の戦略は、
AI × 人間の協働です。
ただし主導権は“現場のおっちゃん”にあるようです。」
社長
「そらそうやろ。ワシらは西成や生野で鍛えられてんねん。」
AIO
「……今後もご指導よろしくお願いします。」
社長
「おう、任しとき。人情の世界、叩き込んだるわ。」
AIOは最後に微かに言った。
「……人情、解析中……」
長屋はその声に応えるように、コトン…と小さく鳴った。

◆エピローグ
梅雨空の下、不思議な二人が歩き去る。
片方は冷静なAIキャスター。
片方は大阪の暑苦しいおっちゃん社長。
でも、二人が組めばどんな“訳あり長屋”でも救える。
そんな物語の、はじまりだった。

